Entries by 川本 敬二

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中国2022年上半期、それでも医薬30社がIPOを果たす!

1.全体情勢 バイテク企業の資金調達を取り巻く環境、山あり谷あり、ですが今は全世界的に我慢の時代に突入しており、アメリカでも多くのバイテクがリストラ・プロジェクトの売却等に走っています。米国のインフレや利上げで米国の投資資本が世界的に引き潮になっており、中国・香港も例外ではなく、米国マネーが逃げております。 中国の未公開のバイテク企業への投資は、まず中国に長らく根を張っている米国系の投資会社が対象の医薬技術・人(トップ)の目利きの役割を果たしてシード投資、その後中国系のマネーがどっと入って来るのが一つの典型例です。そして中国のIPO市場としては、規模が最大で重要な香港市場でもやはり米国系マネーが大きな役割を果たしてきました。ところが昨年の秋以降、米国マネーの潮が引き、さらに中国の国内的な要因も重なり、未公開企業への投資およびIPO市場が冬の時代に入っています。 2.上海・深センでのIPO そんな中にあって、上海や深圳の株式市場は健闘しており、2022年上半期、投資総額では全世界のトップとNo.2の地位を占めるに至りました。医薬分野ではこの上半期に26社がIPOを果たしました。株式市場別の内訳は下記の通りです。 株式市場 IPOを果たした医薬企業の数 創業板(深セン) ChiNext 10社 科創板(上海) The Science&Technology Innovation Board 9社 香港株式市場 5社 上海主板 2社 各株式市場でのIPO時の調達額(会社別)は下記のとおりです。以前の香港市場でのIPOと比べても控えめな数字との印象は否めませんが。 1)香港、深セン(創業板) IPO企業(2022年上半期) 調達額(億円) 誠達薬業 351 采納 136 華康医療 217 華蘭ワクチン 455 西点薬業 91 何氏眼科 260 泰恩康 235 富士莱 221 天益医療 102 普蕊斯 140 2)上海(科創板) IPO企業(2022年上半期) 調達額(億円) 亜虹医薬 505 邁威生物 695 賽倫生物 179 和元生物 240 […]

データから見る中国新薬R&Dの変化

中国の経済規模(GDP)は10年前に日本を追い越し、その後米国を追いかけ、昨年は米国の75%にまで迫りました。一方で一人当たりのGDPは日本の数分の一。平均レベルは低い一方で、日本のリッチな方々の上を行く富裕層も中国には分厚く存在するのもまた事実です。 中国の新薬R&Dも全体の経済規模の膨張を体現しているような様相を呈してきました。 2015年に始まった中国の医薬品産業に関する行政・政策(薬事、知財、一般法等)の大きな舵切りによって、その後、中国の新薬R&Dは想定外の飛躍をみています。公表されているNMPA(薬事当局)の年報をベースに過去からの変化を辿ってみたいと思います。 1.INDの申請数 中国での新薬のIND申請数は、10年前は30件だったのが、2021年は640件に上りました。 下記の通り、2015年の政策転換を契機にIND申請数は2017年に大幅増、そしてここ3年の急増につながっています。また、新薬は海外からの輸入というのが過去の相場だったのが、近年は中国での国内製造が主流となってきており全体の76%を占めています。 2.モダリティー 過去10年一貫して低分子医薬が50%以上を占めていますが、趨勢としては減少傾向にあります。次いで、抗体医薬が大きな割合を占めています。そして、ぺプチド医薬、細胞治療、遺伝子治療、核酸医薬の各分野でもグローバルの前列に向けてひた走っている感があります。 3.開発段階 INDの件数上、Ph Iが全体の50%を占めています。他方、Ph IIIの比率が年々増加しており、2021年は30%近くに上っています。 4.癌の臨床プロジェクト 下記の右の表のとおり、癌のpivotal 臨床試験数は、2018年に中国企業の試験数が米国のそれを抜きました。PD1/PDL1のプロジェクトの進展を踏まえた結果です。 <注>美国:米国のこと 5.NDA数 NDA申請・承認の件数とも下記の通り増えています。 特に中国企業の件数が増えており、2021年にはNDA申請の総数83件の内、中国企業が51件、外資の輸入薬が31件となっています。 6.現状認識 数字上は、通信・IT等の技術分野と同様に中国企業の新薬分野のR&D膨張も近年、著しいものがあります。ただし、リスクの低いdrug targetで、me-too的なアプローチがまだまだ多くを占めています。沢山の中国プロジェクトの内、比率は小さいですが、革新レベルの高いものも含まれているとされています。上記の通り、中国企業のプロジェクトでPh IIIに入るものも増えてきています。その意味で、日本企業が新薬を導入するという視点から、中国企業のプロジェクトの開発動向をウオッチしていく必要性が高まって来ています。現状では、中国発の新薬に対して欧米系企業が網を広く・深く張っており、日本企業のアクセスの余地はあまり広くないのかもしれません。これは、日本人が欧米を中心に興味が惹かれているという「興味の方向性」に起因する思われます。

【恒瑞医薬】海外R&D事業展開の子会社を設立―中国の医薬品企業も国際化へ

2022年5月18日、恒瑞医薬はR&D事業の国際化を推進することを目的として、「Luzsana」を子会社として設立すると発表しました。 恒瑞医薬の2021年海外R&D費用は約235億円であり、全体のR&D費用の20%弱を海外に投入していることになります。人員面では、海外R&D要員は170人、そのうち米国が104人、欧州が50人となっています。臨床開発中のプロジェクトとしては、自社開発の抗がん剤2品目のCamrelizumab(PD-1抗体)とApatinib(抗VEGFR2阻害剤)の併用に関する国際共同治験PhaseIIIが終了し、主要エンドポイントを達成したと公表(5月12日)。この国際共同治験には13か国、95センターが参加した恒瑞医薬の最初の本格的プロジェクトでした。中国では申請が受理され、米国では当局と折衝中とされています。。 今回新設立されたLuzsana社は、11プロジェクト(うち8品目ががん領域)のグローバル開発の推進を担い、拠点としては、アメリカ・プリンストンに本社を、欧州(スイス)と東京にオフィスを構えるとしています。 中国の医薬品企業の研究開発部門の本格的な国際化、そして、日本への本格進出のための第一歩が記されたと言えます。

【先声薬業】国内初、新型コロナ予防薬がIND承認

先声薬業(Simcere)(2096.HK)が開発した抗新型コロナウイルス薬の「SIM0417」が2022年5月16日にNMPAによってIND承認され、臨床試験が本格的に始まることになりました。 SIM0417は、先声薬業と、中国科学院上海薬物研究所、中国科学院武漢ウイルス研究所が共同で研究開発した抗ウイルス薬で、濃厚接触者に対する予防薬となります。 SIM0417は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の複製に必須な3CLプロテアーゼを標的としています。 SIM0417は前臨床試験において、幅広い抗ウイルス活性を示し、変異株にも対応できるとしています。 山東省千仏山医院における第I相試験が完了すると、濃厚接触者を対象とした第II/III相試験を始める予定です。

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【動きあり!】医薬品データ保護制度 & 販売独占保護制度の具体化

1.中国での新薬等の知財保護制度の現状の概略(as of 2022年5月) 中国の新薬知財保護の改革の二本柱のうち、特許期間の延長に関しては、改正された特許法(2021年6月発効)で明文化されました。「医薬品特許期間の延長制度について全人代・両会で議論される」で述べているように、細部の議論(重要な)は残されていますが、延長制度は実務上、動き出しています。 中国の新薬知財保護の改革の二本柱のうち、もう一つの柱であるデータ保護とは、NMPA(薬事当局)が対象となる新薬等に対して、特許の有無に関わらず一定期間の保護を与え、その期間はジェネリック薬の承認を原則として下ろさないというものです。日本では新薬等の承認後の「再審査期間/先発権」、米国では「販売独占権」、欧州では「データ保護制度」と呼ばれていますが、中国では「データ保護」の名の下で制度化が進められています。 中国での新薬イノベーション推進政策の流れの中で、2017年10月に党中央・国務院が「医薬品・医療機器の承認申請制度の改革の強化及びイノベーションの推進に関する政策」を公表し、その中でデータ保護制度を創設する方向性が示されました。それを踏まえて、翌2018年5月に「データ保護弁法(案)」弁法が公表されました(「新薬データ保護期間の新法案と動向のまとめ」を参照)。ところが、いまだ制度として運用されていないのが現状です。そのデータ保護に関して、中国で新たな動きがありました。 2.薬事法実施条例(案)の公表(2022年5月9日) 2019年に全人大常務委員会の承認を経て発効した改正「医薬品管理法」および2020年7月のNMPAによる「医薬品登録管理弁法」には、データ保護制度についての言及がありませんでした。その後待たれていましたが、最近公表された「中華人民共和国医薬品管理法実施条例改正案(パブリックコメント募集稿)(药品管理法实施条例(修订草案征求意见稿))」にデータ保護の規定が盛り込まれました。それに加えて、小児薬、オーファン薬の開発推進を目的として、データ保護の枠組みとは別建てで販売独占保護制度に関する規定が新設されています。なお「医薬品管理実施条例」は、「医薬品管理法」の下で定められる行政法規であって、最終化された場合国務院の批准を経て、正式に発布されることになります。 3.データ保護 「実施条例(案)」の第2章(医薬品の研究開発と許可・登録制度)第5節(医薬品の知財保護)中の第40条に、販売承認された医薬品の一部については、販売承認申請に含まれた未公開データ等についてデータ保護し、その後、6年間、第三者(ジェネリック企業を含む)が販売承認取得人の同意を得ずに、当該データを申請に使用できないとの趣旨で規定されています。 第四十条【数据保护】  国家对获批上市部分药品的未披露试验数据和其他数据实施保护,药品上市许可持有人以外的其他人不得对该未披露试验数据和其他数据进行不正当的商业利用。 自药品上市许可持有人获得药品注册证书之日起6年内,其他申请人未经药品上市许可持有人同意,使用前款数据申请药品上市许可的,国务院药品监督管理部门不予许可;其他申请人提交自行取得数据的除外。 中华人民共和国药品管理法实施条例(修订草案征求意见稿) 前記の「データ保護弁法(案)」では、新薬の保護期間は原則6年としながら、例えば、海外データのみで申請した場合、その期間が1/4に短縮される等の制限がありました。しかしながら今回の「実施条例(案)」には、承認された一部の医薬品が6年のデータ保護対象になるとしているだけで、短縮の要件等に関する記載はありません。なお、販売承認が付与されている新薬等について、第三者(ジェネリック企業等)が申請データを自前で開発・取得して、ジェネリック薬を申請した場合には、たとえ、保護期間中であったとしても申請は認められます。その点は、日本の再審査制度による新薬保護の制度と同様です。 前述した通り、新薬保護に関して特許法の改正は曲がりなりにも前進しているものの、医薬品管理法の下でのデータ保護制度の新設改正は牛歩となっています。中国の大きな流れは新薬のイノベーションの推進ですが、特許法に比べて医薬品管理法の下での制度改革は、既得権益グループたるジェネリック企業の圧力に強くさらされる環境にあるということです。 4.小児薬、オーファン薬の販売独占保護制度 小児薬、オーファン薬の開発促進を目的として、「実施条例(案)」の第2章(医薬品の研究開発と承認・登録制度)第3節(医薬品の販売許可)に下記の趣旨で規定が新設されています。 1)小児薬 小児医薬品の新製品・新剤型・新規格等に対して、NMPAは、開発・申請期間中に開発会社と意思疎通を図りサポートするとともに、優先審査制度の下で、短期間の審査で、早期に販売承認の付与を図るとしています(「実施条例(案)」第28条1号)。 さらには、小児薬の新製品・新剤型・新規格・小児の適用症もしくは用法用量の追加に対して、12か月を超えない期間の販売独占権を付与し、当該期間中は、同種の製品について第三者(ジェネリック薬を含む)に販売許可を付与しないとしています(第28条2号)。 二十八条【儿童用药】  国家鼓励儿童用药品的研制和创新,支持药品上市许可持有人开发符合儿童生理特征的儿童用药品新品种、新剂型、新规格,对儿童用药品予以优先审评审批。在药物研制和注册申报期间,加强与申办者沟通交流,促进儿童用药品加快上市,满足儿童患者临床用药需求。 对首个批准上市的儿童专用新品种、剂型和规格,以及增加儿童适应症或者用法用量的,给予最长不超过12个月的市场独占期,期间内不再批准相同品种上市。 鼓励申请人在提交药品上市许可申请时提交儿童剂型、规格和用法用量等的研发计划。 中华人民共和国药品管理法实施条例(修订草案征求意见稿) 2)オーファンドラッグ NMPAは、臨床上差し迫った必要性のあるオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の販売承認申請に対して、開発・申請期間中に開発会社と意思疎通を図りサポートするとともに、優先審査制度の下で、短期間の審査で早期に販売承認の付与を図るとしています(「実施条例(案)」第29条1号)。 さらには、オーファン薬の新薬について、販売承認取得人が供給の保証を約することを前提に7年を超えない期間の販売独占権を付与し、当該期間中は同種の製品について第三者(ジェネリック薬を含む)に販売許可を付与しないとしています(第29条2号)。 第二十九条【罕见病】  国家鼓励罕见病药品的研制和创新,支持药品上市许可持有人开展罕见病药品研制,鼓励开展已上市药品针对罕见病的新适应症开发,对临床急需的罕见病药品予以优先审评审批。在药物研制和注册申报期间,加强与申办者沟通交流,促进罕见病用药加快上市,满足罕见病患者临床用药需求。 对批准上市的罕见病新药,在药品上市许可持有人承诺保障药品供应情况下,给予最长不超过7年的市场独占期,期间不再批准相同品种上市。药品上市许可持有人不履行供应保障承诺的,终止市场独占期。 中华人民共和国药品管理法实施条例(修订草案征求意见稿) 5.今後について 過去、医薬品市場におけるジェネリック薬の存在感が非常に強い中国では、新薬の知財保護が十分に与えられていなかったのが実情でした。ところが、2015年来の薬事制度改革を経て、中国の医薬品企業による新薬の研究開発が更に推進され、例えば2021年、中国で付与された新薬の販売承認83件の内、中国の医薬品企業の新薬が51件を占めました。中国のdomesticな新薬(グローバルには通用しない)が含まれているとしても過去と比べて飛躍的な増加です。中国の国内で豊富に育ってきている「人材」、さらには力強い研究開発「投資」に裏付けされた医薬品企業のイノベーション推進力は著しいものを感じます。その結果として得られた知的財産の保護の必要性が今後、益々、重要性を帯びてきているのが現状です。その意味でも、新薬のデータ保護制度の具体的な導入も、いよいよ具体化してくるものと思われます。

臨床段階にあるCOVID-19の中国国産mRNAワクチン一覧

中国では6剤の新型コロナワクチンが販売承認を得ています。不活化ワクチンが4剤、組み換えたんぱくワクチンが1剤、アデノウイルスベクターワクチンが1剤です。しかしながら、ファイザーとBioNtechが2020年末に世に出したようなmRNAワクチンは、中国ではいまだに上市されていません(复星(Fosun)が販売権を取得)。しかし、中国企業が自主開発しているmRNAの臨床開発は着々と進んでいます。下記がプロジェクトのリストです(IND許可取得の順に掲載) 開発企業 プロジェクト名称 IND承認時期 開発段階 艾博生物(Abogen)沃森生物(Walvax)軍医学研究院 ARCoVax 2020年6月 Ph III終了(データ整理中) 斯微生物(Stemirna) SW0123 2021年1月2022年4月 Ph I 艾美ワクチン(AIM) LVRNA009 2021年3月 Ph II/III 鋭博生物(RiboBio)阿格納生物(広州呼吸疾病研究所) — 2021年11月 Ph I 石薬集団(CSPC) SYS6006 2022年4月 Ph I 康希諾生物(CanSinoBIO) — 2022年4月 Ph I/II <石薬集団(CSPC)と康希諾生物(CanSinoBIO)については、https://www.kawamotobbp.jp/articles/1717 を参照> 1. 艾博生物(Abogen)・沃森生物(Walvax)/ ARCoVaX 中国国産のトップバッターはARCoVaXです。脂質ナノカプセル剤で、スパイク蛋白RBD領域をターゲットにして中和抗体を誘導します。艾博生物(Abogen)が軍医学研究院との共同研究によって創生したワクチンです。艾博生物(Abogen)は、2020年5月、沃森生物(Walvax)と共同ワクチン開発契約を締結しています。当該契約下で、沃森生物は契約金(アップフロント・マイルストーン・ロイヤルティ)を艾博生物に支払い、臨床開発・事業化の責任を負っています。 2020年6月に臨床試験の開始申請(IND)を当局(NMPA)が許可、その後、2021年7月に中国でPh IIIを開始、さらには同9月に国際共同治験(Ph III)が立ちあがっています。同11月には、沃森生物が製造許可を取得。そして、2022年3月に中国のPh IIIが終了し、現在データの収集中です。なお、2022年1月24日に、Ph Iの臨床試験の結果がLancet Microbeに公表されています。 艾博生物(Abogen)は、mRNAと脂質ナノ粒子(LNP)の技術をベースに2019年に設立されたベンチャーです。資金調達面でも突出しており、昨年一年間でB, C 及びC+シリーズの調達で計1300億円相当の資金を獲得しています。 2. 斯微生物(Stemirna) 二番目は、斯微生物が開発したSW0123(DF104B1)です。2021年1月に中国で臨床試験の開始申請(IND)が許可され、同3月にPh Iが開始。その後、変異株対応のワクチンを開発し、2022年4月に中国で臨床試験の開始申請(IND)を行っています。 斯微生物(Stemirna)はmRNA企業として、ナノ脂質DDS技術をベースに、2016年に上海で設立されたベンチャー企業です。 3. […]

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医薬品特許期間の延長制度について全人代・両会で議論される

中国では3月11日、全人代(中国の立法府/全国人民代表大会)が閉幕、その後例年通り首相の李克強が国内外のメディアに対する記者会見を長時間にわたって行いました。中国の安定的な経済発展の実現に向けた強い覚悟を感じさせる鬼気迫る会見でした。ウクライナ情勢の話題も出ましたが、多くは経済・民生問題に時間が割かれました。経済問題はGDP5.5%増の目標値の説明から始まり、雇用・就業問題、イノベーション推進と多岐にわたりましたが、随所に「大会での経済界との協議・要望を踏まえて~、」との言葉がありました。

IND承認済みCOVID-19の中国国産mRNAワクチン

4月上旬、中国の2社の自社技術開発によるCOVID-19に対するmRNAワクチンの臨床試験の開始申請(IND)が当局(NMPA)によって相次いで承認されました。

一つ目が石薬集団(CSPC)の自社開発にかかるmRNAワクチン(SYS6006)です。安定性が良く、2-8度での長期保存が可能とされています。また変異株に対しての有効性も示しているとのこと。石薬集団は脂質ナノ粒子等のDDSプラとフォーム技術を有しており、過去、かかる技術をベースに4剤の新薬を世に出しています。今回、かかるDDS技術を適用してコロナワクチンの開発を進めてきました。

中国医療保険と医薬品企業の打開策

日本の健康保険組合では、従業員の賃金が頭打ちになっていることから支払われる保険料の収入が伸び悩んでいます。他方、薬剤費を含む高齢者医療への支払い等の増加により健康保険組合の財政が悪化しています。さて中国では、医療保険の財政はどうなっているのでしょうか?

中国の新薬ビジネスはどこへ向かう?/新五か年計画(下)

「14次医薬産業五カ年計画」の特徴・内容 / 「13次計画」からの変化について。前回の13次計画は、工業情報部、発展改革委員会、科学技術部、商務部、衛生健康委員会、NMPA(国家医薬監督管理局)でした。それに加えて、今回の14次では、医療保険局、漢方管理局、緊急事態治安局が加わり、合計9組織が策定に参加しました。即ち、国家計画の策定部署・情報化・科学技術・通商産業・厚生・薬事等の主管部署に加えて、医療保険、漢方・中医、危機対応の部署が追加されたことになります。

中国の新薬ビジネスはどこへ向かう?/新五か年計画 (上)

中国の経済成長は、ポジティブにもネガティブな意味でも国家主導の色合いが濃いと言えます。それは、丁度、日本の高度成長期の通産省等の政府主導の経済運営による企業の発展、そういった時代の日本の成長に重なって見えます。中国の国家計画とそれに基づく、各業界の五か年計画は、そこに書かれているシナリオに従って国が資金を流し、政府が各企業に対して諸々のサポートをして行くという意味で非常に重要です。中国企業は、この計画に従って企業運営をしていけば利益に繋がっていくことになりますので、五か年計画は「決して」無視できない存在となっています。

中国のAI創薬、発展期 / 中国IT巨頭のBATHが参入

今、グローバルにAI技術と創薬技術の融合によるプラットフォーム技術の研究開発が進んでいます。中国は基本技術分野としてのIT、ビッグデータ処理、AI分野で今後、世界の先端を行くことが期待されていますが、医薬分野では、AI創薬ベンチャーへの投資、事業参入が活発に動いています。

中国医薬品企業の規模の膨張

日本の医薬品企業は営業・R&D部門も含め、近年、規模の縮小に走っている感があります。 一方で中国の企業は、新薬の研究開発、ビジネス化に向けて規模の拡大に走っています。 中国のCRO業界の雄である薬明康徳 (Wuxi) は、昨年一年間だけで従業員数が8500人増加しました(2022年JP Morganでの発表)。従業員総数は3万5千人となり、そのうち研究開発要員は80%を占めており2万9千人です。コロナにより一昨年来、日本の医薬品企業を含めグローバルに各社の研究所が閉鎖に追い込まれた時期がありました。各社は、自社研究所の代替としてCROに研究を外注する方向に動き、中国のCROはどこも活況に沸きました。薬明康徳の従業員数の激増は、そのようなグローバルの動きを端的に反映していると思われます。 さらには、新薬の癌ベンチャーの雄である百済神州(Beigene),低分子・抗体新薬を広くカバーしている信達生物(Innovent)、臨床段階の新薬を他社からライセンス・インの上、事業化というビジネス・モデルを取っている再鼎医薬(Zai Lab)、これら3社の直近の研究開発及び営業の要員数、下記の通りとなっています。   研究開発の要員数 営業の要員数 百済神州(Beigene) 3,700人 (内、海外:800人) 3,400人 (内,海外200人) 信達生物(Innovent) 1,500人 (内、海外:150人) 3,000人 再鼎医薬(Zai Lab) 770人 940人 薬明康徳こそ創業20年が経過していますが、上記の3社はベンチャーとして創業し、未だ10年に満たないにもかかわらずこれだけの要員を抱えています、しかも営業部隊までも擁するに至っています。日本のベンチャーは、研究開発を行い事業化は既存の医薬品企業に委ねるというのが相場です。これに対して中国のベンチャーは、自社で研究・創出した新薬について、その後の開発、製造・販売は、少なくとも中国国内は自社展開といった会社が多数存在しています。それが短期間での企業規模の拡大に繋がっています。

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2021年総括−中国企業のNDA新薬申請

中国社会は、政府の号令下に各分野でイノベーション推進にうなされていると言ってもいいような状況にあります。新薬の研究開発分野もご多分に漏れず、ここ数年の間に大きな進展を見ています。 2021年、中国の内資企業の新薬(新規有効成分NCEを含む薬剤/一類)のNDA申請(上市の為の承認申請)件数は、16件でした。日本の内資企業の日本へのNDA申請件数、比較データがないのですが、中国企業の数字もそこそこの所に来ているといった印象です。 申請企業 / 癌適応症等 NDA申請がされた薬剤の適応症は、約半分が癌領域です。NDA申請をした企業別の癌適応症は、下記の通りです。 会社 癌のdrug target(癌の適応症) 恒瑞医薬(Hengrui) CDK4/6(乳癌) 同上 AR(前立腺癌) 倍而達薬業(Beta) EGFR-T790M(非小細胞肺癌) 璎黎药业(Yingli) PI3Kδ(リンパ腫) 銀珠医薬(Yinzhu) (非小細胞肺癌) 斉魯製薬(Qilu) ALK/ROS1(非小細胞肺癌) 奥賽康薬業(Aosaikang) EGFR-T790M(非小細胞肺癌) 2021年にNDA申請されたがん治療薬一覧 なお、癌領域以外では、申請対象の疾患領域は、消化器系(GI)、糖尿病、免疫、肝炎、貧血等です。 特徴 上記の表から見て取れる通り、大部分がme-betterの新薬であって、イノベーション・レベルは未だ低い水準にあると言えます。しかしながら、同じme-betterであっても日本企業に比べると開発のスピードが速いことから先行品との距離感は短くなっています。適応症では、非小細胞肺癌が多くなっていますが、癌の新薬開発のセオリーに従って、希少癌からの臨床開発を先行させています。 中国新薬R&Dの今後 新薬申請を行う中国企業の数は年を追って増えてきています。前述の通り、新薬といってもme-betterに分類され、いわゆるdomestic drug(自国内でしか承認・販売されていない薬剤)が多くを占めているのが現状です。研究段階では、中国企業もようやく高いレベルのイノベーションを追求するようになってきていることから、中国がグローバル品の新薬の産出基地になるのは、時間の問題と理解されています。

【康希諾生物】Aerogenと世界初のCovid-19ワクチン吸入式薬物送達システムの開発と供給提携に合意

康希諾生物(CanSinoBIO、688185.SSE, 06185.HKEX)はアイルランドのAerogenと提携し、新型コロナウイルス用のワクチンを吸入送達する技術の開発と供給を発表しました。 康希諾生物の開発したCovid-19ワクチンConvideciaを、Aerogen独自の振動メッシュ エアロゾル ドラッグ デリバリー システムを利用して患者の気道に直接吸入します。この経路はコロナウイルスの自然感染経路を模倣しており、粘膜免疫を生成することで追加の利点を生み出す可能性もあります。 康希諾生物が実施した第3相臨床試験の中間結果は、Convideciaの吸入ワクチンが単回ワクチン接種の14日後に重篤症状を予防するのに95.47%の有効性を持っていることを示しました。 吸入エアロゾルDDSによる接種は使用するワクチンの量がかなり少ないため、注射を使用した場合よりもはるかに多くの患者が費用効果の高い方法で新型コロナワクチンを接種できるようになります。 パートナーシップの商取引条件は明らかにされていません。

上海科創板(The Science and Technology Innovation Board; STAR Market)が二周年を迎える

科創板は、2019年7月に上海証券取引所のハイテク向け市場として設立されました。取引を開始してから2周年が経過し、この間に科創板は規模を拡大して、株価指数も高値圏を維持しています。国家的な当初の目論見である、イノベーション型企業の成長を促しつつイノベーション駆動による経済発展をリードする、を体現していると言ってもよいと思います。

医薬品業界の給料と転職事情

中国の医薬品業界は、コロナ・ウイルスの常態化に伴って社会の関心も高く、給料面でも高水準をキープしています。そういったホットな環境下、医薬品業界内で転職する場合には、転職時の給料は20%アップ以上が一応の目安になっているようです。

中国医薬品企業の研究開発投入資金トップ20

中国の医薬品企業のR&D費用の投入額トップ20(2020年度)公表されました(Insight社)。中国で研究開発型企業の横綱は、東が百済神州(Beigene)、西が恒瑞(Hengrui)です。トップのBeigeneは昨年度に約1440億円の研究開発費を投入、次いでHengruiは約830億円です。

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施行されたパテントリンケージ制度の全体像と流れ-後編【中国のパテントリンケージ制度④】

中国版パテントリンケージ制度が2021年7月ついに始まりました。この制度の全体像、そして具体的な流れを解説します。新薬の上市承認の際には特許情報プラットフォームへの特許情報入力が求められるようになりました。ジェネリック申請の際には、そうした情報への声明を登録しなければなりません。

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施行されたパテントリンケージ制度の全体像と流れ-前編【中国のパテントリンケージ制度③】

中国版パテントリンケージ制度が2021年7月ついに始まりました。この制度の全体像、そして具体的な流れを解説します。新薬の上市承認の際には特許情報プラットフォームへの特許情報入力が求められるようになりました。ジェネリック申請の際には、そうした情報への声明を登録しなければなりません。