中国の新薬ビジネスはどこへ向かう?/新五か年計画 (上)


最終更新日: 2022/03/17

1.中国の国家計画及びその医薬分野の五か年計画

中国は5年周期で国の五か年計画を策定しています。今期の計画は、昨年2021年~2025年を対象とした14次5ヵ年計画です。アメリカとの経済関係の複雑化を反映して、新たな輸出市場の開拓に加えて、中国の内需を拡大し(「双循環」)、かつ「イノベーション」を通じた産業の高度化を進めることにより成長を達成するとしています。同時に、中国建国100年にあたる2035年に向けた長期目標が公表されていて、一人当たりのGDPを中位の先進国レベルに達することと展望しています。

この国家計画に従って、各産業分野の五か年計画が国務院の関連部署によって作成・公表されます。医薬産業分野については、春節前に「第14次/医薬産業発展の長期計画」(「14次医薬産業五カ年計画」)が公表されています。

中国の経済成長は、ポジティブにもネガティブな意味でも国家主導の色合いが濃いと言えます。それは、丁度、日本の高度成長期の通産省等の政府主導の経済運営による企業の発展、そういった時代の日本の成長に重なって見えます。中国の国家計画とそれに基づく、各業界の五か年計画は、そこに書かれているシナリオに従って国が資金を流し、政府が各企業に対して諸々のサポートをして行くという意味で非常に重要です。中国企業は、この計画に従って企業運営をしていけば利益に繋がっていくことになりますので、五か年計画は「決して」無視できない存在となっています。

2.14次医薬産業五カ年計画の策定の背景

国内的な背景と、国際的な問題に分けて考えていく必要があります。

国内的には、日本と同様に人口の高齢化の進展、さらに国民の生活レベルの上昇による医薬品への関心がさらに強くなり、特にコロナ下でワクチン・治療薬等の医薬品開発に対する社会の期待が高くなっていることが背景として挙げられます。 

国際的には、新薬のdrug targetも含めた基礎および応用技術の大転換時期にあり、遺伝子・細胞治療、合成生物技術、二重特異性抗体等のバイオ新技術の実用化に向けて技術が成熟してきたこと、さらには情報技術、ビッグデータ、AIとの技術融合により、技術的な飛躍が期待できる時代になってきています。かかる背景下、各国とも医薬品関連産業の戦略的な産業育成を実施しており、競争が激化しているなか中国企業も世界の中でキープレーヤの仲間入りになれるよう、適格な施策を打つ必要があります。

次回の「中国の新薬ビジネスはどこへ向かう?/新五か年計画(下)」では、計画の具体的な内容について説明します。

Author Profile

川本 敬二
弁理士 (川本バイオビジネス弁理士事務所(日本)所長、大邦律師事務所(上海)高級顧問)

藤沢薬品(現アステラス製薬)で知財の権利化・侵害問題処理、国際ビジネス法務分野で25年間(この間、3年の米国駐在)勤務。2005年に独立し、川本バイオビジネス弁理士事務所を開設(東京)。バイオベンチャーの知財政策の立案、ビジネス交渉代理(ビジネススキームの構築、契約条件交渉、契約書等の起案を含む)を主業務。また3社の社外役員として経営にも参画。2012年より、上海大邦律師事務所の高級顧問。現在、日中間のライフサイエンス分野でのビジネスの構築・交渉代理を専門。仕事・生活のベースは中国が主体、日本には年間2-3か月滞在。
0 replies

Leave a Reply

Want to join the discussion?
Feel free to contribute!

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *