Entries by 川本 敬二

「変換期を迎える中国医薬品産業」セミナー3月5日開催

「創薬研究」、「医品のライセンスIn/Out」、「市場/薬価」、「知財」 の観点から現状と展望を解説! 近年、世界の製薬大手が中国のベンチャー企業と開発・製造・商業化に関する独占的ライセンス契約を締結したというニュースが相次いでおり、一昔前には想像もつかなかったことが現実となっています。中国での研究開発が急速に進んでいることが伺え、このような傾向は、今後も続くと考えられます。そこで、本セミナーでは、中国で新薬の研究開発に携わるFrank Wu氏、10年以上にわたり日中最新の医薬品におけるビジネスに従事する川本啓二氏、中国の薬事規制・手続きに孫華龍氏をお招きして、中国の新薬研究現状や創薬研究のためのヒト・モノ・カネ・情報、国家主導の研究開発及び医薬品のライセンスの導出・導入の実態について解説頂きます。 概要 日時 2024年3月5日(火) 13:00~17:00 会場 株式会社シード・プランニング 東京本社 セミナールーム(8階)東京都文京区湯島3-19-11 湯島ファーストビル 主催 シード・プランニング 定員 40名 参加費 27,500円(消費税・資料代含む)※ご請求書をお送りしますので、銀行振り込みでお願いいたします。 お申し込み方法 こちらからご登録下さい。折り返し担当者よりご連絡させていただきます。※1名様ずつでお申し込み下さい プログラム 13:00~13:40 中国医薬品市場の現状と薬価制度 中国市場の現状と展望、医薬品の保険収載と価格交渉、公的入札について株式会社シード・プランニング 沈友敏 13:40~14:30 中国の国家政策と最新知財動向 国家計画による創薬ビジネス(続々登場する抗PD-1抗体)新薬の知財保護(特許延長等)について川本バイオ・ビジネス弁理士事務所/上海大邦法律事務所高級顧問 弁理士 川本敬二 14:30~14:40 休憩 14:40~15:30 中国の臨床データの質の現状と法規制について 中国の臨床・非臨床データの信頼性、個人情報を含めた法規制(人類遺伝資源管理条例)、中国で製造した原薬・治験薬の日本輸入について北京科林利康(Clinical Service Center)社の共同創始者兼Chief Strategy Officer孫華龍, MD, Ph.D 15:30~16:40 新薬開発の資金源と人材源 -臨床開発・ライセンスdeal実績- 創薬研究のための資金源と人材源、米国の臨床開発と中国企業の実績について、背景と将来予測、業界の動向についてTrans Thera社(南京)CEO(資料:英語)Frank Wu, PhD 通訳:川本敬二 16:40~17:00 パネルディスカッション(質疑応答) 日本へのライセンスOUTをどう考えるか?信頼性ある企業の探し方Frank Wu, 孫華龍、川本敬二、沈友敏 講師プロフィール Frank Wu、Ph.D. 米国留学、Ph.D.取得後、Medicinal […]

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中国の新薬の特許期間の延長制度が動き出す!

中国の「特許期間の延長」の制度、いよいよ、運用がスタート、知識産権局(中国特許庁)で審査が始まります! 2021年に改正された特許法の中で、新薬の特許について5年を限度(但し、新薬上市後、14年を超えず)とする「特許期間の延長」に関する規定が盛り込まれました。それに前後して、具体的な運用を盛り込んだ実施細則、審査便覧(「審査指南書」)の改正案が公表され、その中で「特許期間の延長」に関して、延長の計算方法も含め、詳細な規定案が示されていました。ところが、それから2年間、公表された案に対して、中国国内で意見聴取はされていたものの、改正案が最終化されず、宙ぶらりんでした。販売承認が下りた新薬に対し、特許権者は「特許期間の延長」の申請をしていましたが、知識産権局(中国の特許庁)でどのような取扱いになっているのか誰にも分からない状況でした。 2023年末に、上記の「実施細則」、「審査指南書」の最終版が相次いて公表され、いよいよ、「特許期間の延長」制度の運用がスタート、2024年1月20日から知識産権局で「特許期間の延長」申請に対する審査が始まることになりました(審査業務の経過措置弁法 公告559号)。これらの改正案で示されていた内容に対して、概ね大きな変更を経ずに最終化されています。 「特許期間の延長」に関係する「特許法」、「特許実施細則」、「審査指南書」の該当条文は下記の構成となっています。 特許法 第五章42条 特許期間、消滅、無効(1)特許期間:出願から20年(2)知識産権局での審査手続き遅延による特許期間延長(3)NMPA(薬事当局)での新薬の審査承認に要した期間を補償する為の「特許期間の延長」 特許法実施細則 第五章77条~79条80条~83条 特許期間の延長 特許法42条(2)項の特許期間延長 特許法42条(3)項の新薬の「特許期間の延長」   審査指南書 第五部第九章2.1~2.4 3.1~3.8 特許権の授与、満了 特許法42条(2)項の特許期間延長 特許法42条(3)項の新薬の「特許期間の延長」   上記の表中、特許法42条(2)項の特許期間延長とは、米国のPTA(Patent Term Adjustment)に対応するもので、知識産権局での審査手続きの遅延等に対して、特許期間が加算、延長される制度を意味しています。この延長制度は、技術分野に限定はありません。 新薬については、この特許法42条(2)項の下での期間延長に加えて、特許法42条(3)項の下での新薬の「特許期間の延長」がされます。そもそも、特許の延長制度は、トランプ政権時代の2020年1月に取り交わされた「米中協議書」で合意した内容を踏まえて制度導入がされている背景があり、米国の延長制度を大枠、模した形となっています。 本稿では、特許法42条(3)項の下での新薬の「特許期間の延長」の説明をします。先ず、特許法の該当条文の翻訳を掲げた上で、「実施細則」、「審査指南書」の該当規定に基づいて、解説していきます。先だって留意すべきことは、日本では特許期間の延長は、対象の医薬品の分類と特許発明の類型に関わりなく、販売承認が付与されれば、その都度、当該特許が製品をカバーしていれば、制限なくと言ってもよいくらいに、広範囲で、特許が延長されます。これに対し、中国では、対象の医薬品の分類、対象の特許発明の類型等に制限がかかっていることです。 1. 特許法の「特許期間の延長」に関する条項(§42 – 第3項)(翻訳) 新薬の上市に先立ってなされたNMPA(薬事当局)での審査・承認の手続きに要した期間を補填・補償する目的で、中国で販売承認を取得した新薬に関連する特許発明に対して、中国の知識産権局は、特許権者の請求があれば、特許権の存続期間を延長する。 延長期間は5年を限度とする。尚、特許期間の延長後の存続期間は、新薬の販売承認の日から14年を超えないものとする。 2. 「特許期間の延長」の対象となる新薬とは? 新薬が特許でカバーされているからと言って、全ての新薬に対して、対応特許の存続期間が延長されるわけではありません。延長の対象となる新薬とは、薬事法の下での医薬品の分類に従い、「創新薬」及び「特定の改良型新薬」に分類される新薬が該当します(審査指南書§3.4)。ここで言う薬事法の下での医薬品の分類は、薬事法(薬品管理法)の下で制定されている薬品登録管理弁法§4で規定されています。具体的には、「化学医薬品」、「バイオ医薬品」、「漢方薬」が含まれ、その夫々について、「創新薬」、「改良新薬」の分類が、下記のNMPA通知にその詳細が定められています。尚、各通知には分類の下に区分が設けられており、区分毎に、販売承認申請時に添付が必要な資料・データが示されています。 2-1. 「創新薬」とは 上記の通知に、「化学医薬品」、「バイオ医薬品」、「漢方薬」の夫々について、「創新薬」が定義されています。 例えば、 「化学医薬品」の「創新薬」(1類): 中国の国内外で未だ上市されていない薬剤。新規化学構造を有する薬理作用のある化合物を含有し、且つ、臨床的に価値のある医薬品を指す。 ここでのポイントは、ある新薬について、それをカバーする特許が延長されるためには、当該新薬について中国でのNMPAへの上市許可を得る為の申請(所謂、「NDA申請」)時点で、国内外で未だ上市されていないことが要件になっていることです。従って、ある新薬の開発者(例えば、日本企業)が、当該新薬について、海外(例えば、日本)で上市した後に中国でNDA申請した場合には、当該新薬は、1類には分類されず、「創新薬」とは認定されません(注. 薬事法上は、5.1類に分類されます)。その場合、新薬をカバーする特許は延長されません。その意味で、中国を市場として捉える場合には、他の様々な要因も勘案すると、海外と中国の同時開発が必要となってきます。  尚、「バイオ医薬」、「漢方薬」についても上記同様の取扱いとなっています。 2-2. 「特定の改良型新薬」とは 「創新薬」と同様に「改良型新薬」についても、上記の通知に規定がされています。 例えば、 「化学医薬品」の「改良型新薬」(2類): 中国の国内外で未だ上市されていない薬剤であって、既知の活性成分を基礎にして、その化学構造・製剤・合剤・投与経路・適応症等について最適化を図り、且つ、臨床的に明らかに優位性のある医薬品を指す。 さらに、上記の最適化の対象となった項目毎に、2.1類~2.4類の分類がされています。 さて、「化学医薬品」、「バイオ医薬品」、「漢方」について、特許期間の延長の対象となる「特定の改良新薬」とは、下記の区部の改良型新薬です(審査指南書3.4)。 (1)「化学医薬品」2.1類に分類される「改良型新薬」の内:既知の活性成分のエステル体、既知の活性成分の塩である医薬品 (2)「化学医薬品」2.4類に分類される「改良型新薬」の内、既知の活性成分の新規適応症の医薬品 (3)予防用ワクチンであって、「バイオ医薬品」2.2類に分類される「改良型新薬」の内、ウイルス改変のワクチンである医薬品 […]

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【まだ動かない?】新薬を巡る知財保護制度の進展

中国の「新薬の知財保護」の新制度のグランドデザインは、2017年に国務院の公表による「新薬等の研究開発を推進する為の承認申請制度の改革に関する政策文書(42号文書)(关于深化审评审批制度改革鼓励药品医疗器械创新的意见)」の中で、下記の3つの制度を導入する旨、明記されています。 その後、2021年1月、トランプの“活躍”で「米中貿易協議書」の中に中国の知財保護制度の改正に対して言及されており、中国は、新薬等の知財保護として、上記の①、➁、③の3制度の導入をアメリカに対してコミットしました。 そして、2021年6月に改正特許法が施行され、その中には、上記の①、③が条文として盛り込まれました。さて、現在、具体的な実施状況は如何に? 1.Patent Linkage 先発の新薬をカバーする特許(一般に当該新薬を開発した企業が所有する特許:「新薬特許」)の満了前に、対応のジェネリック薬が薬事当局(NMPA)に販売承認申請された場合、NMPAは、当該ジェネリック薬の医薬品としての有効性・安全性等の必要要件を満たしているか否かの審査以外に、ジェネリック薬が「新薬特許」を侵害しているか否かについて、裁判所・特許庁に判断させます。このように薬事の承認審査の過程で特許問題もリンクさせて、もし、侵害であれば、NMPAは当該ジェネリック薬の承認を付与しない、という制度がPatent Linkageです。したがって、「新薬特許」が有効期間中は、“原則として”、ジェネリック薬は承認されない、よって、上市されなくなる、ということを意味しています。 上記の通り、2021年6月の改正特許法に対応条文が盛り込まれ、その後、関係官庁(特許庁、MNPA、裁判所)から手続き細則が公表されています(参照:https://www.kawamotobbp.jp/articles/1470)。そして、先の4月(2023年)に最高裁判所より、2022年の代表判決の一つとして、patent linkage制度の下での判決が挙げられました。それは、中外製薬が中国で上市している製品に関連するソフトカプセルについての製剤特許に基づく係争でした。対応のジェネリック薬が申請されたことに対して、中外がpatent linkage制度の下で、ジェネリック企業に対して当該製剤特許の侵害を主張し、訴えた案件でした。結果は、ジェネリック薬は中外の製剤特許の権利範囲に入らないので、侵害しないというものでした。また、それ以外も含めて、Patent Linkage制度の下、2022年一年間に7件の判決が出でおり、第二審(最高裁判所)の審理期間は平均63日であったとしています。 このようにPatent Linkage制度は、動き出しており、新制度の運用事例が積み重ねられている段階と言えます。 2.特許期間の延長 新薬は上市の承認に至るまでの研究開発の期間が長いことから上市した際に残存している特許期間が短くなっている実態を踏まえて、5年間を上限として、特許期間を延長する制度です。延長された場合、特許期間は、最長、出願から25年となります。 2021年の改正特許法に連動して、2020年末にその実施細則の草案が公表され、2021年には審査便覧(審査指南書)改正案の公表と続きました。これらの草案の中で、特許期間の延長期間の計算方法も含め、詳細な規定案が示されていましたが、この時点では未だ、最終化されていません。 どうなっているのでしょうか? 下記グラフをご覧ください。IND申請(治験申請)、NDA(上市承認申請)の過去5年の推移です。過去、8年に遡りますと、右肩上がりの傾向が浮き上がるのですが、昨年22年はコロナ禍の影響もあってNDA件数自体は、減っています。 INDとNDAの件数の総計は490件となりますが、海外からの申請(輸入申請)と国内製造を前提とした申請の内訳は、下記の通りとなります。国内製造を前提にした申請が輸入の3.3倍となっています。 国内製造を前提とした申請の件数が増えており、その多くは中国の内資企業による申請です。特に内資企業によるIND申請が激増しています。そして、2022年に24件に販売承認が下りていますが、このうち、70%が中国の内資企業によるものです。 従来は、中国の新薬の知財保護制度は、外資の利権を守る為、特に、米国からの圧力によって制度の整備がされてきた経緯があります。しかしながら、ここにきて、新薬の申請件数等、明確に、中国の内資企業が多くを占めるに至っています。いまだ、中国ではジェネリックビジネスの利権が強いとされていますが、新薬の国内企業の利権も無視できないレベルにまで上がってきているのも事実です。 新内閣(国務院)が3月に発足し、新体制が動き出して、3か月が経過。経済活性化の為に、新内閣が知財制度も含めて、イノベーションを推進する具体策を打ち出すと期待されています。 そういった中国の国内の経済環境下、特許期間に関する実施細則について、暫定措置も含めて、遠からずの内に、何らかの具体的な規則が出てくるものと思われます。 3.データ保護 新薬の承認をNMPAが付与するにあたって、「新薬特許」の有無に関わらず、一定期間(5~6年)、NMPAはジェネリック薬の承認を付与しないという制度です。ジェネリック薬は申請にあたって、先発の新薬の承認の対象となったデータを引用することを前提に簡略試験(先発との同等性等に関する非臨床、臨床)の実施による申請が認められますが、「データ保護」とは、先発の当該データを保護して、ジェネリックの引用を認めないという概念から来ています。「データ保護」は薬事法の下での処理となってきました、即ち、NMPAが推進母体です。2022年5月に薬事法の「実施条例」案が公表され、その中で、「データ保護」の関連条文が盛り込まれています(参照https://www.kawamotobbp.jp/articles/1904)。しかしながら、その後、目に見えた進展はありません。 「特許期間の延長」は、上記の通り、制度の早期導入に対して、中国内資からの圧力は高まっているのですが、「データ保護」については、その次、という位置づけとなっています。内資というよりも、外資の利権を注視した制度とも言えるからです。すなわち、日本も含め、企業によっては、欧米での開発を先行し、そこでの上市後に中国で初めて開発に着手するというグローバルの開発設計により、中国で新薬を上市する際には、場合によっては、特許期間が切れているということもありえます。その意味で、外資にとって、特に中国開発に後れを取っている日本企業にとっては、特許の有無に関わらず、「データ保護」によってジェネリックの上市を阻止して、独占権を確保するという意味で、早期導入が必要な情勢です。また、外資から新薬のライセンス導入を企てている中国の内資企業にとっても「データ保護」は欲しい制度となっています。しかしながら、昨今の米中摩擦により、外資の利権を代表するアメリカの圧力が強く効かなくなっている情勢下、米中摩擦の緩和待ち、といった情勢とも言えると思います。 4.まとめ 李強(総理)が率いる新政権の下での「特許期間の延長」について、具体的な細則の施行がそう遠からずのうちに実現されるであろうということ。「データ保護」については、国際情勢の影響を受け、ポジティブな意味で大きな変動がなければ、少し、先の話にもなりうる情勢読みです。

ADC競争の爆発 / PD-1の再来?!

中国ではホットな分野ではどこも過当競争、大学の入学試験しかり、電気自動車ビジネスしかり、そして新薬開発も。 PD-1抗体医薬では、このような競争が。2011年にBeigene(百済神舟)等の中国の先発4社が研究を開始、臨床試験を終えて上市を果たしたのは2018年末のこと。この間、100社以上が研究開発に参入。研究開発の過当競争の後に控えているのは、マーケティングの過当競争。2023年5月の時点で、中国内資企業の研究開発によるPD-1抗体の上市承認は10品目近くを数えます。中国市場では、これら国産品が先発にあたるBMS等の外資のPD-1抗体に加えて、ずらっと並んでいます。 その次に競争の波が来ているのが、ADC(抗体薬物複合体)。現在、中国国内企業の110社が研究開発競争に参列しており、うち、70品目が臨床試験段階に。中国市場には外資を中心に8つのADCが上市済で、うち、RemeGen(栄昌)の国産ADC(HER2)の1品目含まれいます。また、早期開発段階のADCについて外資へのライセンス・アウトが続いています。 マルチ企業がからむディールとしては、2022年7月末にKelun-Biotech(科倫博泰)が、SKB264(TROP2-ADC/TNBC乳がん)の全世界の開発・製造・販売権をメルク(Merck)に供与(https://www.kawamotobbp.jp/articles/2285)、その後も両社は前臨床段階の複数のADC品目を含めて二回にわたって提携関係を拡大しています。そして、直近の5月には、LaNova(礼新医药)が前臨床段階のLM-305(GPRC5D-ADC)をアストラゼネカにグローバルのライセンスを許諾。アストラゼネカは2月にLupu Bio (楽普)/ KeyMed Biosciences(康諾亜)からCMG901(Claudin18.2- ADC)を導入したのに続いて、今回、中国から2件目のライセンス導入となります。 尚、中国の研究開発にかかるADCの外資へのライセンス・アウトのリストは下記の通りです。 契約時期(年・月) ライセンサー(中国) ライセンシー 契約金総額 2021.8 RemeGen(栄昌) Seagen(ファイザー) 26億ドル超 2022.5 LaNova(礼新) Turning point (BMS) 10億ドル超 2022.5 KeLunBio(科倫博泰) メルク 14.1億ドル 2022.6 DAC· Bio(多禧生物) J&J ——- 2022.7 KeLunBio(科倫博泰) メルク 9.36億ドル 2022.7 CSPC(石薬) Elevation Oncology 11.95億ドル 2022.12 KeLunBio(科倫博泰) メルク 94.75億ドル 2023.1 DUALITY(映恩生物) Adcendo ——- 2023.1 Evopoint(信諾維) AmMax 8.71億ドル 2023.2 […]

和記黄埔医薬が経口大腸がん薬を武田薬品にライセンスアウト

和記黄埔医薬(ハッチソンメディファーマ、Hutchison、上海)が2018年に中国で上市した大腸がんの経口薬 Fruquintinib(フルキンチニブ)の中国・香港・マカオを除く全世界での開発、商業化独占権を武田薬品にライセンスアウトしました。 Fruquintinibは和記黄埔医薬が2007年に研究開発を開始し、その後2013年にイーライリリーへ中国における商業化権をライセンスアウト、同社をパートナーとして開発を続け、2018年に中国にて上市されました。2022年12月にはFDAへの段階的申請を開始し2023年上半期に申請が完了する予定です。 Fruquintinib(商品名:爱优特 ELUNATE)は低分子医薬品で、VEGFR(血管内皮増殖因子受容体)1,2,3に高い選択性、阻害性を有します。VEGFR阻害剤は腫瘍の急速な成長に必要な血液供給を制限することにより、腫瘍の血管新生に重要な役割を果たします。 抗血管新生阻害薬の世界市場には腫瘍の治療に承認されている約30種類の医薬品が上市されています。 適応症は治療抵抗性転移性大腸がん(mCRC)ですが、和記黄埔医薬はイーライリリーとFruquintinibをCRC、NSCLC、胃がんを含む3つの固形がんを対象に開発する契約を締結しています。 今回武田薬品は、和記黄埔医薬に契約一時金として4億ドルを支払います。また、マイルストンとして最大7億3000万ドル、さらにロイヤルティを支払います。

【復星医薬】2022年上半期の状況・実績

全体状況 ヘルスケヤーのコングロマリット企業とも言えるFosun(复星医薬)は、医薬・医療機器・診断・健康サービス分野と多岐にわたる事業を「イノベーション」と「国際化」を旗印に展開。2022年上半期は、営業収入は約4300億円(前期比26%増)、経常利益は、約360億円(前期比19%増)。営業収入の海外比率は36%を占めている。海外事業関係は1400人を擁しており、米国、アフリカ、欧州等の地域で販売展開。 コロナ関連の開発の進展/新薬 研究開発人員は2800人、2020年上半期の研究開発費用は480億円に上っている。 BioNTechから導入のコロナワクチン(mRNA)は、台湾、香港では上市済、中国は上市承認の最終段階にある。また、バイオシミラー等の複数の新製品を上市した。 アムジェンから乾癬治療薬、腎疾患薬の2剤の中国での販売権を取得。 更には、子会社を通じてCAR-T細胞治療薬の上市承認を取得、販売を開始した。 国内外を問わず新ビジネスの導入に貪欲であり、中国展開を図ると同時に、海外進出も進境著しい。

【恒瑞医薬】2022年上半期の状況・実績

全般状況 HengRui(恒瑞)の医薬ビジネスの二本柱である「ジェネリック」・「新薬」ビジネスの何れも収益面で難しい局面にある。前者の「ジェネリック」は、主要製品が集中買付の対象となったことから収入減となり、他方、「新薬」は、複数の製品が医療保険の対象となり薬価が下がったことと、更には、研究開発の拡大による費用の高騰を招いたこと、且つコロナ禍のコスト高により、2022年の上半期の決算は、営業収入、利益とも前期比減となった。上半期:営業収入:約2050億円(前期比.23%減)、経常利益:約400億円(前期比:24%減)。 新薬の承認と研究開発の進展 2022年上半期の研究開発費は、約600億円(前期比13%)となり、営業収入の28%強を研究開発に投入。 研究開発の成果としては、AR阻害剤(抗アンドロゲン/前立腺癌)がNMPA(中国薬事当局)により6月に承認された。mHSPC(転移性ホルモン感受性前立腺癌)AR阻害剤として、2018年、中国の国家計画(13次5年計画)下に重大新薬創出プロジェクトに選定され、開発が進められた経緯があり、この分野での中国国産新薬としては、初の承認。HengRuiとしては11品目目の新薬となった。 新薬申請・審査段階にあるのは、4品目(癌(PD-L1阻害剤)、糖尿病、抗感染症、鎮痛が適応症)。 Ph III段階には、20プロジェクト、うち2件は国際共同治験の最終段階にある。 なお、開発が進展して新たにPh II、Ph Iに入ったプロジェクトは、Ph IIが10件, Ph Iが10件。 今後はプラットフォーム技術の蓄積に注力し、Protac, 分子糊型分解薬、ADC、二(多)重特異性抗体、遺伝子治療分野での新薬開発を推進するとしている。

【真実生物】コロナ治療薬の真実生物が香港市場にIPO申請

先月中国初の経口コロナ治療薬承認を獲得したばかりの真実生物(河南真实生物科技)が、香港市場へのIPOを申請しました。 2022年8月4日に提出された目論見書によると、コロナ治療薬Azvudine(阿兹夫定)の製造や商業化、治験のための資金調達ということです。発行する株式の数や調達予定額については記載されていません。 コロナ治療薬Azvudine(阿兹夫定) Azvudine(RO-0622)はHIV治療薬として2021年7月にNMPAによって上市承認されたNRTI(核酸系逆転写酵素阻害剤)です。2022年7月25日にはCOVID-19を適応症に追加することを承認され、中国で初の経口コロナ治療薬となりました。 2022年8月7日には1錠約170円以下(35錠で300元未満)で購入できると発表されました。HIV薬としての価格が1錠500円くらいですから、利益率はかなり低くなりそうです。 Azvudineの商業化についてはすでに上海復星医薬と提携しており、160億円を受け取ることになっています。

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ジェネリック薬の第7回集中買付(国)とそのインパクト

「集中買付」の背景 従来、上海人のリッチな方々が病気をして薬を服用する際には、中国産のジェネリック薬には見向きもせず、海外のオリジナル薬を購入していました。国産のジェネリック薬の品質を全く信用していなかったからです。 中国政府(NMPA)がジェネリック薬の品質問題に大鉈を振るったのが、2016年に始まるジェネリック薬のオリジナル薬との一致性の再評価政策でした。多くのジェネリック薬の承認が取り下げられ、NMPAはBE試験等のオリジナル薬との一致性の試験を再実施したジェネリック薬にのみ承認を再付与しました。品質問題の解決の後に続いたのが、医薬品業界のコスト構造の変革です。それは、2019年に始まった国による医薬品の集中買付制度とその後の拡大です。2022年に入って第6回、続いて第7回の集中買付がなされました。 第7回集中買付 国の集中買付に参加できるのは、前記の一致性試験をパスして承認が下りたジェネリック薬です。政府は毎回、集中買付の対象の薬剤を指定します。第1回目の2019年は25品目でした。今回の7回目は488品目に拡大しており、高血圧、糖尿病、感染症、消化器疾患等の汎用薬のみならず、肺癌、肝癌、腎癌、大腸癌等の重大疾病の薬剤も含まれています。近々、年間の全医薬品の販売総額の80%を占める800品目が国の集中買付の対象になるとしています。 毎回、政府(国)が指定した集中買付の対象品目について、ジェネリック承認を得ている企業により入札が行われます。その提示された価格等の条件によって国が落札します。その際、政府によって当該薬剤の一年間の購入量の保証がされます。今回の集中買付には295社が入札に参加し、落札できた企業は217社、落札率は73%でした。一薬剤当たり落札企業は平均5.4社となっています。 例えば、BIがオリジナル品である抗癌剤ジオトリフ(afatinib)の入札は、揚子江製薬、斎鲁を含む5社が落札しています。各社、容量等が異なっており、入札価格はそれぞれです。何れも、名の通った大手製薬企業です。 なお、今回の国の集中買付の対象となっていない薬剤は、その下のレベルの行政機関である省、または複数の省の連合体が集中買付をすることになっています。 集中買付と企業集中 従来は、製薬企業から一次代理店、二次、――五次あるいは六次代理店と長い販売チャネルを経て、病院・薬局に販売されていました。また、省、地区・病院と様々な段階で入札および交渉が行われ、それをパスするために不透明な金の流れも存在していました。 政府による集中買付では、製薬企業ごとに購入する薬剤の量が政府により決められ、その量が各病院に割り当てられます。病院が使い切るかどうかにかかわらず、病院から製薬企業の指定する一次代理店あるいは二次代理店に代金の支払いがされ、製薬企業に薬剤代金が戻ります。したがって営業コストが大幅に削減されることになります。さらには、政府が年間の購入総量を保証することから安定的な製造計画を立てることができ、製造コストも削減されます。その代償として、集中買付により薬剤の買取価格である薬価が引き下がります。 数年前までは、中国には数千社といわれる製薬企業が存在し、規模の小さい企業が全国に散在していました。しかも、他の業界に比べると、高水準の利益を上げることができていました。しかしながら、集中買付制度により、ジェネリック業界は大転換期を迎え、選択と集中、企業の合従連衡が進み、巨大な医薬品市場をバックに企業が大規模化に向かっています。買い付けリストを見てみると、そこに大手の名前が並んでいることで見て取れます。 中国ジェネリック企業の大規模化と将来 さて、その行きつく先はどうなるのでしょうか?中国は従来、薬の中間体を製造し輸出していました。その後、薬の原薬の輸出へと転換。今、正に起きていることですが、原薬から薬の最終形態である製剤品の輸出へと発展しつつあります。中国の国内政策によって、規模が大きく、かつ経営の効率化が進んだジェネリック企業が出現し、今後、国際進出の時代が到来すると思われます。すでに、華海薬業、健友、海普瑞などは製剤品を多く輸出しています。 日本の医薬品企業は、中国のジェネリック薬の取引を受け身的に対応するのではなく、諸々のさざ波を乗り越えて、日本企業側から将来の輸入取引についてビジョンを提示していくべき段階にあります。

【科倫博泰】Kelunがメルクに対し1200億円規模のライセンス導出

Kelun(科倫)のライセンスディール 科倫博泰(Kelun-Biotech)は、自社研究開発のSKB264(TROP2-ADC/TNBC乳がん)の全世界の開発・製造・販売権をメルク(Merck)に付与しました(2022.7.26発表)。ライセンスの経済条件は、upfront:$35M(47億円)、milestones総額:$901M(1210億円)です。 SKB264はKeLun-Biotech自社開発のTROP2-ADCで、中国でTNBC(乳癌)患者のPhase III、および非小細胞は胃癌のPhase IIを実施中です。Kulun-Biotechは、四川省の成都の医薬品ガリバー企業である科倫集団(Kulun)が成都の医学城(Chengdu Medical City)に2016年に新薬の研究開発等を目的に設立した子会社です。  なおKulun-Biotechは2021年にも自社研究開発のEP0031(RETキナーゼ阻害剤)を、英国の癌ベンチャーであるEllipsesに対し欧米でのライセンスを供与しています。その対象製品は、米国でPhI/IIが開始しています。 今回のメルクへのライセンス供与は、それに続く第二弾です。 KeLunの本拠地である成都 Kulunの本拠地のある成都は四川省の省都であり、上海から西に2千キロ、中国の西部地区開発の拠点です。揚子江沿いにあるバイオ医薬のサイエンスパークは、上海を筆頭に、揚子江を上流に上って、蘇州、南京が先行していますが、さらに上流の成都では医薬城を建設し躍進しています。 この医薬城には、公的研究機関を中心にしてWuxi等のCROが進出しており、Kelunのみならず多数のバイテク企業が集積しています。このように成都の医薬城でもバイオ医薬R&Dエコシステムが整備されており、そこの企業群も中国国内でのグローバルに向けた競争に参加しています。 成都は四川料理の麻婆豆腐と美人を生む街としても知られています。パンダの基地、三国志の聖地(諸葛孔明)でもあります。 科倫(Kelun);科伦简介_四川科伦药业股份有限公司 (kelun.com)

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中国発の新薬 / FDA(米国)承認申請の行方

BeiGeneのPD-1抗体の承認申請とFDAの反応 BeiGene(百済神州)は2019年11月、米国FDAからBTK阻害剤(Brukinsa)を適応症:MCL(セカンドライン)として承認を取得。現在では、米・中・欧州・加・豪州を含む20か国で上市しています。そしてそれに続くグローバル品であるPD-1抗体(Tislelizumab)については、2021年1月に中国での承認が下りたのを機に、ノバルティス(Novartis)に対して米国での共同販売権を留保しつつ、中国を除くグローバルな販売権を供与(契約金アップフロント額:6億5千万ドル)。BeiGeneは、35か国で9000人の患者を組込む(うち中国:6千人、海外:3千人)臨床試験を実施してきました。 Tislelizumabの米国での最初の申請の適応症は、食道扁平上皮癌(セカンドライン)でした。中国を含むアジア、欧州、北米の10か国でなされたPhase III(512例の患者を組込み)を踏まえて、2021年9月に米国申請しました。その承認審査期限は2022年7月12日でしたが、FDAは中国でのBeiGeneの現場査察(中国)がコロナ禍の制限によって実施できなかったことを理由に、承認が見送られています。 他方、米国のライセンシーであるノバルティスによれは、肺癌(monotherapy)の米国での承認申請は見送るとしています。肺癌の臨床試験の実施場所が、中南米、中国、東欧であって、米国の人種多様性と標準治療法を十分に反映したものでない可能性があると示唆しています。 なお、中国ではすでに9つの適応症の承認を取得しており、うち5つの適応症が保険目録に収載されています。中国では一番広い適応症の承認が付与されたPD-1製品と位置づけされています。そして、欧州では複数の承認申請が受理され審査に入っています。 中国発の新薬の米国承認実績 これまで中国企業の自主開発による新薬で米国承認を得られたのは、2つの製品です。 第1号は、2019年に承認された前述のBeiGeneのBTK阻害剤(Brukinsa)です。この新薬は、まず豪州でPhase Iが実施され、その後の臨床試験は主として中国で実施されました。そして、豪州のPhase Iデータを踏まえて、中国で実施されたPivotal studyのデータのみをもって米国で承認申請されました。 但し、申請に先立って、開発の早い段階からFDAとコンタクトして、米国の規制に合致した形で中国の臨床試験が実施されていました。かかる経過を踏まえて、米国で上市承認が付与されています。 第2号は、細胞治療分野で、2022年3月にLegend社によるCAR-T(CARVYKTI)の承認です。2017年にJ&Jと提携の上、中国での臨床試験も含めた国際共同治験を進めた結果です。 中国のPhase IIIデータと米国承認 他方、今年3月、Innovent(信達生物)の自社開発にかかるPD-1について米国での承認申請が却下されました。これは、中国のpivotal studyのみに基づいて米国で申請していたのに対し、FDAより米国の標準療法を勘案の上、米国人を組み込んだ臨床試験を実施してデータを補充するようにとの指摘がされました。 中国は臨床試験大国に変貌しつつあり14億人の人口をバックに膨大な患者数をかかえていることから、患者の組込みが早く早期に臨床試験を完了させることができます。しかも、米国に比して廉価です。外資の国際共同治験の中国での実施経験を踏まえて臨床試験のデータの質も格段に進歩しています。しかしながら中国でのみPivotal studyを実施して、そのデータをもって米国でFDA承認を取得するには、対象薬剤のプロファイル(優位性、付加価値)が一番重要ですが、それに加えて米国での人種の多様性の問題をクリアの上、事前に十分FDAと臨床試験の全体像を協議・コンセンサスを得ておく必要があると、これまでの事例から示唆されています。

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米欧+中国での新薬承認 コロナ禍の2022年上半期の実績

米国、欧州、中国の上市承認の件数と中国の躍進 コロナ禍にあって、2022年上半期はコロナワクチン、コロナ治療薬の開発および上市承認が進展をみましたが、他の疾患領域での上市承認も歩みを止めることはありませんでした。米国、欧州、中国の三極の薬事当局(FDA, EMA, NMPA)がこの期間中に上市承認を付与した新薬の疾患領域別の件数は、癌(肿瘤)がトップ、その次は感染症でした。癌領域では、三極の内、中国(NMPA)の上市承認の件数がトップ(下記グラフの黒色)となっています。下記のとおりです。 なお2022年上半期、新薬に対して世界で最初に上市承認を付与した薬事当局としては、FDAが14剤の新薬を承認しトップ。EMA(欧州)が5剤、NMPA(中国)は、自主研究開発の進展により7剤となっています。承認対象は、低分子化合物以外に抗体、細胞治療等が含まれています。 中国企業の中国での新薬承認リスト(2022年上半期) NMPA(中国)が世界で最初に承認を付与した新薬は下記のリストの通りです(一部例外あり)。 承認日 登録分類等 適応症の概略 企業名 1/10 漢方1.2類 肝細胞癌 Shenogen (珅诺基) 1/26 抗体 1類 狂犬病 North China Pharma (華北製薬) 3/1 組換ワクチン コロナ・ワクチン Zhife Biological (智飛生物) 4/13 低分子1類 逆流性食道炎 Luoxin (罗欣薬業) ラクオリア創薬からのライセンス導入品 3/24 PD1抗体 癌 Henlius (复宏汉霖) 6/29 二重特異性抗体 (PD1/CTLA-4) 癌 Akeso (康方生物) 6/29 AR阻害剤 1類 前立腺癌 HengRui (恒瑞医薬) 中国企業の新薬承認からみるR&D力 上記のリストの通り、漢方薬、狂犬病薬等は、中国の典型的なdomestic […]

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【2022年上半期】中国でR&Dされ欧米へライセンス導出された新薬一覧

2022年上半期―中国企業Business Developmentの健闘 中国企業のR&Dが生み出した新薬等の海外企業へのライセンス導出は、2022年上半期に28件の成立をみました。内、20件が新薬・新技術関連、4件がバイオシミラー、4件がジェネリック・改良型医薬でした。 下記がそのリストです。 <2022年上半期ライセンス導出リスト> 中国企業 (ライセンサー) 海外企業 (ライセンシー) ライセンス対象品目 Upfront (US$) 取引総額 Kelun (科倫) Merck ADC(TROP2) 47M 1.4B Junshi Pharma (君実) Coherus(米) TIGIT抗体 35M 290M Harbour (和铂医薬) AstraZeneca 二重特異性抗体 (CLDN18.2/CD3) 25M 350M LaNova (礼新医药) Turning Point(米) ADC(Claudine 18.2) 25M 220M Pregene (普瑞金) CellPoint(欧)   CAR-T(BCMA) 21.8M — Adagene (天演薬業) Sanofi 抗体/マスキングplatform技術 17.5M 2.5B Jemincare […]

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中国2022年上半期、それでも医薬30社がIPOを果たす!

1.全体情勢 バイテク企業の資金調達を取り巻く環境、山あり谷あり、ですが今は全世界的に我慢の時代に突入しており、アメリカでも多くのバイテクがリストラ・プロジェクトの売却等に走っています。米国のインフレや利上げで米国の投資資本が世界的に引き潮になっており、中国・香港も例外ではなく、米国マネーが逃げております。 中国の未公開のバイテク企業への投資は、まず中国に長らく根を張っている米国系の投資会社が対象の医薬技術・人(トップ)の目利きの役割を果たしてシード投資、その後中国系のマネーがどっと入って来るのが一つの典型例です。そして中国のIPO市場としては、規模が最大で重要な香港市場でもやはり米国系マネーが大きな役割を果たしてきました。ところが昨年の秋以降、米国マネーの潮が引き、さらに中国の国内的な要因も重なり、未公開企業への投資およびIPO市場が冬の時代に入っています。 2.上海・深センでのIPO そんな中にあって、上海や深圳の株式市場は健闘しており、2022年上半期、投資総額では全世界のトップとNo.2の地位を占めるに至りました。医薬分野ではこの上半期に26社がIPOを果たしました。株式市場別の内訳は下記の通りです。 株式市場 IPOを果たした医薬企業の数 創業板(深セン) ChiNext 10社 科創板(上海) The Science&Technology Innovation Board 9社 香港株式市場 5社 上海主板 2社 各株式市場でのIPO時の調達額(会社別)は下記のとおりです。以前の香港市場でのIPOと比べても控えめな数字との印象は否めませんが。 1)香港、深セン(創業板) IPO企業(2022年上半期) 調達額(億円) 誠達薬業 351 采納 136 華康医療 217 華蘭ワクチン 455 西点薬業 91 何氏眼科 260 泰恩康 235 富士莱 221 天益医療 102 普蕊斯 140 2)上海(科創板) IPO企業(2022年上半期) 調達額(億円) 亜虹医薬 505 邁威生物 695 賽倫生物 179 和元生物 240 […]

データから見る中国新薬R&Dの変化

中国の経済規模(GDP)は10年前に日本を追い越し、その後米国を追いかけ、昨年は米国の75%にまで迫りました。一方で一人当たりのGDPは日本の数分の一。平均レベルは低い一方で、日本のリッチな方々の上を行く富裕層も中国には分厚く存在するのもまた事実です。 中国の新薬R&Dも全体の経済規模の膨張を体現しているような様相を呈してきました。 2015年に始まった中国の医薬品産業に関する行政・政策(薬事、知財、一般法等)の大きな舵切りによって、その後、中国の新薬R&Dは想定外の飛躍をみています。公表されているNMPA(薬事当局)の年報をベースに過去からの変化を辿ってみたいと思います。 1.INDの申請数 中国での新薬のIND申請数は、10年前は30件だったのが、2021年は640件に上りました。 下記の通り、2015年の政策転換を契機にIND申請数は2017年に大幅増、そしてここ3年の急増につながっています。また、新薬は海外からの輸入というのが過去の相場だったのが、近年は中国での国内製造が主流となってきており全体の76%を占めています。 2.モダリティー 過去10年一貫して低分子医薬が50%以上を占めていますが、趨勢としては減少傾向にあります。次いで、抗体医薬が大きな割合を占めています。そして、ぺプチド医薬、細胞治療、遺伝子治療、核酸医薬の各分野でもグローバルの前列に向けてひた走っている感があります。 3.開発段階 INDの件数上、Ph Iが全体の50%を占めています。他方、Ph IIIの比率が年々増加しており、2021年は30%近くに上っています。 4.癌の臨床プロジェクト 下記の右の表のとおり、癌のpivotal 臨床試験数は、2018年に中国企業の試験数が米国のそれを抜きました。PD1/PDL1のプロジェクトの進展を踏まえた結果です。 <注>美国:米国のこと 5.NDA数 NDA申請・承認の件数とも下記の通り増えています。 特に中国企業の件数が増えており、2021年にはNDA申請の総数83件の内、中国企業が51件、外資の輸入薬が31件となっています。 6.現状認識 数字上は、通信・IT等の技術分野と同様に中国企業の新薬分野のR&D膨張も近年、著しいものがあります。ただし、リスクの低いdrug targetで、me-too的なアプローチがまだまだ多くを占めています。沢山の中国プロジェクトの内、比率は小さいですが、革新レベルの高いものも含まれているとされています。上記の通り、中国企業のプロジェクトでPh IIIに入るものも増えてきています。その意味で、日本企業が新薬を導入するという視点から、中国企業のプロジェクトの開発動向をウオッチしていく必要性が高まって来ています。現状では、中国発の新薬に対して欧米系企業が網を広く・深く張っており、日本企業のアクセスの余地はあまり広くないのかもしれません。これは、日本人が欧米を中心に興味が惹かれているという「興味の方向性」に起因する思われます。

【恒瑞医薬】海外R&D事業展開の子会社を設立―中国の医薬品企業も国際化へ

2022年5月18日、恒瑞医薬はR&D事業の国際化を推進することを目的として、「Luzsana」を子会社として設立すると発表しました。 恒瑞医薬の2021年海外R&D費用は約235億円であり、全体のR&D費用の20%弱を海外に投入していることになります。人員面では、海外R&D要員は170人、そのうち米国が104人、欧州が50人となっています。臨床開発中のプロジェクトとしては、自社開発の抗がん剤2品目のCamrelizumab(PD-1抗体)とApatinib(抗VEGFR2阻害剤)の併用に関する国際共同治験PhaseIIIが終了し、主要エンドポイントを達成したと公表(5月12日)。この国際共同治験には13か国、95センターが参加した恒瑞医薬の最初の本格的プロジェクトでした。中国では申請が受理され、米国では当局と折衝中とされています。。 今回新設立されたLuzsana社は、11プロジェクト(うち8品目ががん領域)のグローバル開発の推進を担い、拠点としては、アメリカ・プリンストンに本社を、欧州(スイス)と東京にオフィスを構えるとしています。 中国の医薬品企業の研究開発部門の本格的な国際化、そして、日本への本格進出のための第一歩が記されたと言えます。

【先声薬業】国内初、新型コロナ予防薬がIND承認

先声薬業(Simcere)(2096.HK)が開発した抗新型コロナウイルス薬の「SIM0417」が2022年5月16日にNMPAによってIND承認され、臨床試験が本格的に始まることになりました。 SIM0417は、先声薬業と、中国科学院上海薬物研究所、中国科学院武漢ウイルス研究所が共同で研究開発した抗ウイルス薬で、濃厚接触者に対する予防薬となります。 SIM0417は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の複製に必須な3CLプロテアーゼを標的としています。 SIM0417は前臨床試験において、幅広い抗ウイルス活性を示し、変異株にも対応できるとしています。 山東省千仏山医院における第I相試験が完了すると、濃厚接触者を対象とした第II/III相試験を始める予定です。

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【動きあり!】医薬品データ保護制度 & 販売独占保護制度の具体化

1.中国での新薬等の知財保護制度の現状の概略(as of 2022年5月) 中国の新薬知財保護の改革の二本柱のうち、特許期間の延長に関しては、改正された特許法(2021年6月発効)で明文化されました。「医薬品特許期間の延長制度について全人代・両会で議論される」で述べているように、細部の議論(重要な)は残されていますが、延長制度は実務上、動き出しています。 中国の新薬知財保護の改革の二本柱のうち、もう一つの柱であるデータ保護とは、NMPA(薬事当局)が対象となる新薬等に対して、特許の有無に関わらず一定期間の保護を与え、その期間はジェネリック薬の承認を原則として下ろさないというものです。日本では新薬等の承認後の「再審査期間/先発権」、米国では「販売独占権」、欧州では「データ保護制度」と呼ばれていますが、中国では「データ保護」の名の下で制度化が進められています。 中国での新薬イノベーション推進政策の流れの中で、2017年10月に党中央・国務院が「医薬品・医療機器の承認申請制度の改革の強化及びイノベーションの推進に関する政策」を公表し、その中でデータ保護制度を創設する方向性が示されました。それを踏まえて、翌2018年5月に「データ保護弁法(案)」弁法が公表されました(「新薬データ保護期間の新法案と動向のまとめ」を参照)。ところが、いまだ制度として運用されていないのが現状です。そのデータ保護に関して、中国で新たな動きがありました。 2.薬事法実施条例(案)の公表(2022年5月9日) 2019年に全人大常務委員会の承認を経て発効した改正「医薬品管理法」および2020年7月のNMPAによる「医薬品登録管理弁法」には、データ保護制度についての言及がありませんでした。その後待たれていましたが、最近公表された「中華人民共和国医薬品管理法実施条例改正案(パブリックコメント募集稿)(药品管理法实施条例(修订草案征求意见稿))」にデータ保護の規定が盛り込まれました。それに加えて、小児薬、オーファン薬の開発推進を目的として、データ保護の枠組みとは別建てで販売独占保護制度に関する規定が新設されています。なお「医薬品管理実施条例」は、「医薬品管理法」の下で定められる行政法規であって、最終化された場合国務院の批准を経て、正式に発布されることになります。 3.データ保護 「実施条例(案)」の第2章(医薬品の研究開発と許可・登録制度)第5節(医薬品の知財保護)中の第40条に、販売承認された医薬品の一部については、販売承認申請に含まれた未公開データ等についてデータ保護し、その後、6年間、第三者(ジェネリック企業を含む)が販売承認取得人の同意を得ずに、当該データを申請に使用できないとの趣旨で規定されています。 第四十条【数据保护】  国家对获批上市部分药品的未披露试验数据和其他数据实施保护,药品上市许可持有人以外的其他人不得对该未披露试验数据和其他数据进行不正当的商业利用。 自药品上市许可持有人获得药品注册证书之日起6年内,其他申请人未经药品上市许可持有人同意,使用前款数据申请药品上市许可的,国务院药品监督管理部门不予许可;其他申请人提交自行取得数据的除外。 中华人民共和国药品管理法实施条例(修订草案征求意见稿) 前記の「データ保護弁法(案)」では、新薬の保護期間は原則6年としながら、例えば、海外データのみで申請した場合、その期間が1/4に短縮される等の制限がありました。しかしながら今回の「実施条例(案)」には、承認された一部の医薬品が6年のデータ保護対象になるとしているだけで、短縮の要件等に関する記載はありません。なお、販売承認が付与されている新薬等について、第三者(ジェネリック企業等)が申請データを自前で開発・取得して、ジェネリック薬を申請した場合には、たとえ、保護期間中であったとしても申請は認められます。その点は、日本の再審査制度による新薬保護の制度と同様です。 前述した通り、新薬保護に関して特許法の改正は曲がりなりにも前進しているものの、医薬品管理法の下でのデータ保護制度の新設改正は牛歩となっています。中国の大きな流れは新薬のイノベーションの推進ですが、特許法に比べて医薬品管理法の下での制度改革は、既得権益グループたるジェネリック企業の圧力に強くさらされる環境にあるということです。 4.小児薬、オーファン薬の販売独占保護制度 小児薬、オーファン薬の開発促進を目的として、「実施条例(案)」の第2章(医薬品の研究開発と承認・登録制度)第3節(医薬品の販売許可)に下記の趣旨で規定が新設されています。 1)小児薬 小児医薬品の新製品・新剤型・新規格等に対して、NMPAは、開発・申請期間中に開発会社と意思疎通を図りサポートするとともに、優先審査制度の下で、短期間の審査で、早期に販売承認の付与を図るとしています(「実施条例(案)」第28条1号)。 さらには、小児薬の新製品・新剤型・新規格・小児の適用症もしくは用法用量の追加に対して、12か月を超えない期間の販売独占権を付与し、当該期間中は、同種の製品について第三者(ジェネリック薬を含む)に販売許可を付与しないとしています(第28条2号)。 二十八条【儿童用药】  国家鼓励儿童用药品的研制和创新,支持药品上市许可持有人开发符合儿童生理特征的儿童用药品新品种、新剂型、新规格,对儿童用药品予以优先审评审批。在药物研制和注册申报期间,加强与申办者沟通交流,促进儿童用药品加快上市,满足儿童患者临床用药需求。 对首个批准上市的儿童专用新品种、剂型和规格,以及增加儿童适应症或者用法用量的,给予最长不超过12个月的市场独占期,期间内不再批准相同品种上市。 鼓励申请人在提交药品上市许可申请时提交儿童剂型、规格和用法用量等的研发计划。 中华人民共和国药品管理法实施条例(修订草案征求意见稿) 2)オーファンドラッグ NMPAは、臨床上差し迫った必要性のあるオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の販売承認申請に対して、開発・申請期間中に開発会社と意思疎通を図りサポートするとともに、優先審査制度の下で、短期間の審査で早期に販売承認の付与を図るとしています(「実施条例(案)」第29条1号)。 さらには、オーファン薬の新薬について、販売承認取得人が供給の保証を約することを前提に7年を超えない期間の販売独占権を付与し、当該期間中は同種の製品について第三者(ジェネリック薬を含む)に販売許可を付与しないとしています(第29条2号)。 第二十九条【罕见病】  国家鼓励罕见病药品的研制和创新,支持药品上市许可持有人开展罕见病药品研制,鼓励开展已上市药品针对罕见病的新适应症开发,对临床急需的罕见病药品予以优先审评审批。在药物研制和注册申报期间,加强与申办者沟通交流,促进罕见病用药加快上市,满足罕见病患者临床用药需求。 对批准上市的罕见病新药,在药品上市许可持有人承诺保障药品供应情况下,给予最长不超过7年的市场独占期,期间不再批准相同品种上市。药品上市许可持有人不履行供应保障承诺的,终止市场独占期。 中华人民共和国药品管理法实施条例(修订草案征求意见稿) 5.今後について 過去、医薬品市場におけるジェネリック薬の存在感が非常に強い中国では、新薬の知財保護が十分に与えられていなかったのが実情でした。ところが、2015年来の薬事制度改革を経て、中国の医薬品企業による新薬の研究開発が更に推進され、例えば2021年、中国で付与された新薬の販売承認83件の内、中国の医薬品企業の新薬が51件を占めました。中国のdomesticな新薬(グローバルには通用しない)が含まれているとしても過去と比べて飛躍的な増加です。中国の国内で豊富に育ってきている「人材」、さらには力強い研究開発「投資」に裏付けされた医薬品企業のイノベーション推進力は著しいものを感じます。その結果として得られた知的財産の保護の必要性が今後、益々、重要性を帯びてきているのが現状です。その意味でも、新薬のデータ保護制度の具体的な導入も、いよいよ具体化してくるものと思われます。

臨床段階にあるCOVID-19の中国国産mRNAワクチン一覧

中国では6剤の新型コロナワクチンが販売承認を得ています。不活化ワクチンが4剤、組み換えたんぱくワクチンが1剤、アデノウイルスベクターワクチンが1剤です。しかしながら、ファイザーとBioNtechが2020年末に世に出したようなmRNAワクチンは、中国ではいまだに上市されていません(复星(Fosun)が販売権を取得)。しかし、中国企業が自主開発しているmRNAの臨床開発は着々と進んでいます。下記がプロジェクトのリストです(IND許可取得の順に掲載) 開発企業 プロジェクト名称 IND承認時期 開発段階 艾博生物(Abogen)沃森生物(Walvax)軍医学研究院 ARCoVax 2020年6月 Ph III終了(データ整理中) 斯微生物(Stemirna) SW0123 2021年1月2022年4月 Ph I 艾美ワクチン(AIM) LVRNA009 2021年3月 Ph II/III 鋭博生物(RiboBio)阿格納生物(広州呼吸疾病研究所) — 2021年11月 Ph I 石薬集団(CSPC) SYS6006 2022年4月 Ph I 康希諾生物(CanSinoBIO) — 2022年4月 Ph I/II <石薬集団(CSPC)と康希諾生物(CanSinoBIO)については、https://www.kawamotobbp.jp/articles/1717 を参照> 1. 艾博生物(Abogen)・沃森生物(Walvax)/ ARCoVaX 中国国産のトップバッターはARCoVaXです。脂質ナノカプセル剤で、スパイク蛋白RBD領域をターゲットにして中和抗体を誘導します。艾博生物(Abogen)が軍医学研究院との共同研究によって創生したワクチンです。艾博生物(Abogen)は、2020年5月、沃森生物(Walvax)と共同ワクチン開発契約を締結しています。当該契約下で、沃森生物は契約金(アップフロント・マイルストーン・ロイヤルティ)を艾博生物に支払い、臨床開発・事業化の責任を負っています。 2020年6月に臨床試験の開始申請(IND)を当局(NMPA)が許可、その後、2021年7月に中国でPh IIIを開始、さらには同9月に国際共同治験(Ph III)が立ちあがっています。同11月には、沃森生物が製造許可を取得。そして、2022年3月に中国のPh IIIが終了し、現在データの収集中です。なお、2022年1月24日に、Ph Iの臨床試験の結果がLancet Microbeに公表されています。 艾博生物(Abogen)は、mRNAと脂質ナノ粒子(LNP)の技術をベースに2019年に設立されたベンチャーです。資金調達面でも突出しており、昨年一年間でB, C 及びC+シリーズの調達で計1300億円相当の資金を獲得しています。 2. 斯微生物(Stemirna) 二番目は、斯微生物が開発したSW0123(DF104B1)です。2021年1月に中国で臨床試験の開始申請(IND)が許可され、同3月にPh Iが開始。その後、変異株対応のワクチンを開発し、2022年4月に中国で臨床試験の開始申請(IND)を行っています。 斯微生物(Stemirna)はmRNA企業として、ナノ脂質DDS技術をベースに、2016年に上海で設立されたベンチャー企業です。 3. […]

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医薬品特許期間の延長制度について全人代・両会で議論される

中国では3月11日、全人代(中国の立法府/全国人民代表大会)が閉幕、その後例年通り首相の李克強が国内外のメディアに対する記者会見を長時間にわたって行いました。中国の安定的な経済発展の実現に向けた強い覚悟を感じさせる鬼気迫る会見でした。ウクライナ情勢の話題も出ましたが、多くは経済・民生問題に時間が割かれました。経済問題はGDP5.5%増の目標値の説明から始まり、雇用・就業問題、イノベーション推進と多岐にわたりましたが、随所に「大会での経済界との協議・要望を踏まえて~、」との言葉がありました。