2025年:中国バイオ・新薬産業が潮目を変えた年
1. 中国の「自動車輸出(製品の輸出)」と「新薬ライセンス・アウト(技術の輸出)」 1-1)自動車輸出(製品の輸出) 中国からの自動車輸出台数は、過去9年間で大幅に増加しました 。2021年が「潮目」を変える年となり、前年度から輸出台数が倍増し、その後も毎年50%の比率で増加しています 。そして、昨年2024年には、ついに日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となりました 。 この躍進の背景には、2010年代の政府による電気自動車開発推進政策と、2020年代に入ってからの電池やモーターの技術的突破があるとされています 。 主要な輸出先はメキシコ、アラブ首長国連邦(UAE)、ロシア、ベルギー、英国—–カザフスタンなど、日本人には馴染みの少ない国々も含まれます 。筆者は上海での生活が長いため、この1〜2年で都市部において外車から国産車への切り替えが急速に進んでいるのを肌で感じています 。 1-2)新薬のライセンス・アウト(技術の輸出)と中国バイオ・新薬産業の変貌 「自動車輸出」の潮目が2021年だったとすれば、その4年後の今年2025年は、将来的に「新薬のライセンス・アウト」の潮目が変化した年と捉えられるかもしれません 。 中国政府が製薬産業の方向をジェネリックの製造・販売から新薬の研究開発主導へと転換させる政策を打ち出したのは2015年です 。この年に「44号」という政策文書が発表され、製薬産業をイノベーション主導型に変えるために、人材・インフラ・投資・知財・薬事制度などの環境を整備する構想が掲げられました 。 それから10年が経過した今年、中国企業が創出した新薬のライセンス・アウトが活況を呈しました 。過去1年間(2024年10月〜2025年8月)の、中国企業が海外企業にライセンス・アウトした実績は以下の通りです 。 <中国企業の海外への主要ライセンス・アウト/2024.10~2025.8> 海外企業 (ライセンス取得) 中国企業 (新薬創出) 対象プロジェクト 契約地域等 経済条件 契約日 Sanofi Arrowhead’s Visima RNAi (CV) 中国・台湾の権利 Upfront $130M Milestone $265M 2025 8/25 GSK Hengrui PDE3/4阻害剤等複数 Upfront $500M Milestone $12B 7/25 AstraZeneca CSPC Pre-clinical Upfront […]