川本バイオビジネス弁理士事務所
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最新情報

新薬IND申請の迅速承認(30日)制度が正式に始動・中国薬事制度改革

中国で、特定の条件を満たす新薬の治験許可(IND)申請について、申請後30日内に審査・承認を完了するとの新たな制度が正式に始まりました。 この制度は、新薬の迅速な市場導入を目指すもので、中国の創薬力を更に高めることに繋がると見られています。これに先立ち、2025年1月~7月の間、上海・北京で30日以内の承認制度(https://www.kawamotobbp.jp/articles/2500)が試行的に実施されていました。この試行期間中の運用経験を踏まえて、薬事当局(NMPA)は正式に通知を発し、当該制度を全国的に本格導入されることになりました。 1. 新制度導入の背景 1-1. 新薬に関する行政による制度改革 中国は、長らくジェネリック医薬品大国として知られていました。しかし、2015年以降、政府は医薬品産業の構造を大きく変えるための政策転換を断行。その目的は、ジェネリック薬の品質を国際 [続きを読む]

中国バイオ医薬品産業セミナー 11月5日開催

中国バイオ医薬品産業の「今」と「未来」を知り、医薬品開発・事業化を加速させる戦略 現在、欧米の多国籍企業は、中国企業との連携を驚くべきスピードで加速させています。なぜ、彼らは、今、「中国」に注目するのでしょうか? <参照:https://www.kawamotobbp.jp/articles/2634> 日本の製薬協加盟企業が約70社である一方、中国には研究組織を持つ製薬企業が数千社あると言われています。この膨大な数に、中国企業との連携を検討する際、どこから手をつけてよいか戸惑う方も多いのではないでしょうか。中には能力に乏しい企業も少なくありませんが、日本企業数をはるかに上回る、提携に値する有力な企業が中国には確実に存在します。 中国の現状の「光と影」を「生の声」でリアルに伝えます。中国の現状の正しく理解し、信頼できるパートナーを見極めるための視点を得ることで、新たなビジネスチャンスを掴む [続きを読む]

2025年:中国バイオ・新薬産業が潮目を変えた年

1. 中国の「自動車輸出(製品の輸出)」と「新薬ライセンス・アウト(技術の輸出)」 1-1)自動車輸出(製品の輸出) 中国からの自動車輸出台数は、過去9年間で大幅に増加しました 。2021年が「潮目」を変える年となり、前年度から輸出台数が倍増し、その後も毎年50%の比率で増加しています 。そして、昨年2024年には、ついに日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となりました 。 この躍進の背景には、2010年代の政府による電気自動車開発推進政策と、2020年代に入ってからの電池やモーターの技術的突破があるとされています 。 主要な輸出先はメキシコ、アラブ首長国連邦(UAE)、ロシア、ベルギー、英国—–カザフスタンなど、日本人には馴染みの少ない国々も含まれます 。筆者は上海での生活が長いため、この1〜2年で都市部において外車から国産車への切り替えが急速に進んでいるのを肌で感 [続きを読む]

AIが拓く創薬の新時代:中国バイオ・医薬品イノベーションの再構築

中国バイオ・医薬品イノベーションの再構築 人工知能(Artificial Intelligence)は、かつてない力であらゆる産業に浸透し、再構築を進めている。人類の健康に関わるバイオ・医薬品分野も例外ではなく、AIが駆動する深い変革の真只中にある。 急成長する医療AI市場 世界的に見ても、医療AI市場は急成長を続けている。Grand View Researchのデータによれば、2024年の医療AI市場規模は約192億米ドルに達し、約38.5%の年間平均成長率(CAGR)で拡大を続け、2030年には数千億ドル規模に達すると予測されている。この潮流の核心的な推進力の一つは、創薬プロセスの加速、研究開発効率の向上、失敗リスクの低減においてAIが示す巨大な潜在能力である。 中国におけるAI創薬の台頭 中国に焦点を当てると、AI創薬分野のスタートは相対的に遅れたものの、「膨大な人口データ」という優 [続きを読む]

中国の医薬品製造の最強省はどこだ

最近、トランプが医薬品(ジェネリック等を含む)輸入の中国への過度な依存を問題視している。彼は、国内製造に回帰すべきだと主張しています。一説には、ペニシリン系の抗生物質であるアモキシシリンの原料の80%を中国が抑えているといった報道も見られます。それでは、「中国での実態」は一体どのようなものなのでしょうか? 中国では1990年代以後、医薬製造の地図が大きく変わりました。3~40年前までは、 「ハルビン医薬」(現HAPHARM GROUP)が代表する黒竜江省、「石薬(CSPC)」が代表する河北省、「斉魯製薬(QILU PHARMACEUTICA)」が代表する山東省、「白雲山製薬」が代表する広東省、「上海医薬」が代表する上海市が他省を引き離していました。しかし、今、トップを引っ張っているのは江蘇省です。 最近、発表された統計年鑑2024から、2023年の医薬品製造企業(売上高4億円以上 [続きを読む]

中国の新薬「データ保護」規則(案)の公表

長らく新薬業界とジェネリック業界の利害調整に手間取っていた新薬データ保護制度(https://www.kawamotobbp.jp/articles/2560)ですが、今回、中国政府は新薬「データ保護」規則(案)(药品试验数据保护实施办法(征求意见稿):https://www.nmpa.gov.cn/xxgk/zhqyj/zhqyjyp/20250319181537196.html)を公表しました。新薬について、 のデータ保護を付与し、その間、原則、ジェネリック薬は承認しない、としました。 但し、新薬に関する特許期間の延長制度(https://www.kawamotobbp.jp/articles/2375)と同様に、新薬のデータ保護を受ける為には、中国での早期開発等の条件が付いています。 まだ、(案)の段階ですが、かなり煮詰まって来ており、今後、最終化の上、年内には施行予定とされています [続きを読む]

医薬品開発におけるAIの活用 〜DeepSeekから見た新たなAIイノベーションへの活用〜

医薬品開発でのAI活用が進んでいる中でDeepSeek社が発表した新たな生成AI開発技術、オープンソース化が与える創薬領域、特に「基礎研究・ターゲット選定」でのインパクトを検証する。 DeepSeekのインパクトはOpen AI並みの性能を持った生成AIがオープン化したことでカスタマイズが可能となることである。また、DeepSeek社がオープン化した事により今後出てくる生成AIも同様な取り組みをすると予想される。下記に記載したように「基礎研究・ターゲットバリデーション」では臨床データ、オミックスデータ、遺伝子情報等の臨床ビッグデータを活用した新しい創薬ターゲット選の取り組みが進んでいる。これらの取り組み推進にはアルゴリズムの作成、AIプラットフォームの構築が必要で、オープン化された生成AIの活用は朗報であると言える。 医薬品開発の現状とAI活用の現状 医薬品開発におけるAI(人工知能)技術 [続きを読む]

今度こそ、動き出す「データ保護」

トランプ政権(第二次)の胎動による政策転換が世界、日本の政治経済にどのような影響を与えるのか喧しい。更には、米中の経済摩擦の動向が日本に与える影響が気になるところである。さて、そのような情勢下、我々の眼中にあるのは、中国の新薬の知財保護がどのような影響を受けるかである。 1.トランプ政権(第一次)時代の米中の経済・貿易協議と「データ保護」: 第一次トランプ政権(2017年~2021年)時代の米中摩擦を振り返ってみよう。米中間の貿易不均衡(米国の対中貿易赤字)に不満を募らせたトランプが2018年に、中国産の鉄鋼に関税をかけると発言、これに端を発して、他分野の製品に対して米中が相互に関税をかける事態に発展した。その後、貿易不均衡に留まらず、中国政府が企業に産業補助金を支給していることによる中国企業の急成長、米国の知的財産の盗用による中国企業の先端技術獲得、中国のハイテク産業の育成政策「中国製造 [続きを読む]

中国における「医療腐敗」取締りの現状

2024年3月12日、中国の整形外科の権威である積水潭医院(北京)の元院長である田偉氏が当局に拘束されたことは、医療業界に大きなインパクトを与えました。自宅から多額の現金が見つかり、国内外に複数の別荘を所有していました。これまで、中国工程院の院士レベルの医師が汚職により逮捕されたことはありませんでした。これとは別に、雲南省の第一人民医院の元院長の王天朝氏も100軒を超えるマンションを受け取ったとされました。このように、2023年から始まった医療腐敗・汚職の取締りによって、おびただしい数の公立病院の院長、管理者、医師が逮捕されました。さらに、製薬会社や医療機器メーカー、医薬代理商・卸なども相次いで調査をうけました。これらには国内の多くの大手企業が含まれています。 以上の事例は、中央政府の腐敗防止機関である「中央規律検査委員会」が主導する一連の取締りであり、複数の医療機関・関係者が摘発されまし [続きを読む]

香港IPO、2024上半期のまとめと今後の見通し

2024上半期のIPO件数(全産業セクター)は世界で551件(前年同期比-12%)、資金調達額の合計は522億米ドル(同-16%)でした。リージョンごとの内訳をみると特にアジア・太平洋のシェアが昨年に引き続き下がっています。しかし後述しますがその中でも香港市場は比較的に堅調でした。 ヘルスケアセクターのIPO概況 世界のヘルスケアのIPO件数は58件(同-6%)とほぼ前年と同じでしたが、資金調達額は89億米ドル(同+69%)と大幅に増加しました。これをみると、バイオテクノロジー部門は引き続き技術の進歩を続けており投資対象として注目されていることがわかります。特に抗がん剤や肥満治療薬といった新しい分野で投資が増えています。 例:ArriVent BioPharma IPO市場:NASDAQ 調達金額:1 億 7,500 万米ドル 中国やその他の国で有望なシードを見つけ、米国市場に持ち込むのが [続きを読む]