Entries by 村田正弘

体重減少が非臨床で確認されている開発品 ~肥満症治療薬「ウゴービ®」日本で発売~

GLP-1受容体作動薬が先行 社会的に高い関心が寄せられているノボノルディスクファーマの肥満症治療薬「ウゴービ®」が、2024年2月22日国内で発売されました。「ウゴービ®」は、セマグルチドを有効成分とするGLP-1受容体作動薬です。また、2023年11月8日には米イーライリリーの2型糖尿病治療薬「マンジャロ®」が肥満治療薬としてFDAにより承認されています。こちらもGLP-1受容体作動薬で商品名は「ゼップバウンド®」です。 肥満症治療薬は、上記2社のほかにも多くの製薬企業や創薬ベンチャーが開発を手掛けており、市場規模は今後10年で1000億ドル(約15兆円)に達するとの見方があります。 後を追うNLRP3阻害剤 一方、自然免疫に関わるパターン認識受容体であるNLRP3は、情報伝達因子ASCやプロテアーゼCaspase-1と共にNLRP3インフラマソームを形成し、炎症性サイトカインIL-1βの産生を介して炎症を惹起します。NLRP3インフラマソームは病原体、組織ダメージシグナルに反応することから、炎症性疾患に広くかかわることが考えられています。 NLRP3阻害剤*を開発する英国NodThera社は、食事誘発肥満(DIO)モデルで肥満を改善し、セマグルチドまたはカロリー制限による体重減少と一致する一方、NLRP3阻害は、急性期反応、心血管炎症、および脂質代謝の疾患関連バイオマーカーの改善を論文で報告しています(J Pharmacol Exp Ther:388, 813-826(2024))。 TransThera社は、低分子医薬品開発に強みを持つベンチャー企業で、癌、免疫・炎症領域で複数の臨床開発パイプラインを持っています。TransThera社も、上述したNLRP3インフラマソームをターゲットにした阻害剤を開発中でIND enabling試験を実施中です。詳細は、下記サイトにアクセスしてご確認願います。https://transtherabio.jp/science4.html Olatec Therapeutics社もNLRP3阻害剤のパイプラインを持ち、変形性膝関節症、心不全、痛風、黒色腫、糖尿病、パーキンソン病を対象として臨床研究を進めています。 *:nucleotide-binding domain, leucine-rich-containing family, pyrin domain-containing-3