川本バイオビジネス弁理士事務所
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ライフサイエンス技術の ビジネス化
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最新情報

中国における創薬技術の曙

2010年以来の中国の医薬品産業の急成長は海亀族と呼ばれる人材の活躍によるところが大きい。この成長は1970年代以降の日本の状況に似ており、それまでの輸入医薬品の販売から自社製品の研究開発に舵を切って大きく収益力を上げた。しかし、比較してみると中国のさらなる成長の可能性が見えてくる。 [続きを読む]

中国の早期上市承認プロセス5つを比較(利用度・短縮効果・実際の審査期間)

中国では2015年から始まった薬事制度改革の下、審査承認を早める枠組みが整備され、現在では5つの早期上市承認プロセスが運用されています。①優先審査制度、②条件付き承認制度、③革新治療薬プロセス」④「特別承認制度」⑤「海外データ直接申請制度」 [続きを読む]

【百済神州】上海科創板へ上場

中国の癌ベンチャーの雄百济神州(Beigene)は、6月末に上海の科創板の上場申請の実質審査をパスしました。 Beigeneは2010年に創業し、その後2016年にNASDAQ、2018年に香港で上場を果たしています。上海で上場すれば3つの取引所で上場を果たした最初の医薬品企業となります。米国、香港ではその上場時の株価に比較して、現在上げ幅はそれぞれ1392%、100%となっており、株価総額は米国で3兆6千憶円、香港で1兆5千億円です。今回屋上屋を重ねて上海へ。貪欲です。 [続きを読む]

6月に施行された特許延長制度、施行されなかったいくつかの細則

6月1日から改正特許法が施行されました。中国の医薬品業界に大きな影響を与える二つの制度が盛り込まれています。「特許期間の延長」、および「パテントリンケージ」です。今回は特許期間の延長について解説します。また、特許法実施細則の施行延期についても解説します。 [続きを読む]

新薬特許の無効【中国のパテントリンケージ制度②】

中国ではパテントリンケージ制度の導入にあたって、ジェネリック企業に対してアメを与えています。新薬の特許が満了する前に、当該新薬特許は無効であると主張してジェネリック薬の上市の承認を求める申請(ジェネリック申請)を行い、実際に「ジェネリック申請段階の特許侵害審理」で特許無効の主張が認められ、かつNMPAでの審査でジェネリック申請が認められて「最初」の上市の許可が付与された場合、当該「最初」のジェネリック薬に対して、1年間の独占販売権が与えられます。したがって、この1年の独占期間中は新薬と最初に承認されたジェネリック薬の二剤のみしか市場に出ないことになり、最初のジェネリック薬に営業上大きなメリットをもたらします。 [続きを読む]

中国企業の平均年収と医薬品業界の位置づけ / 将来の日本人の職場になり得るか?

中国の国家統計局から2020年の業界別の全国平均賃金が発表されました(5月19日)。賃金に何が含まれているか、さらには物価も違いますので、日本のそれと金額を単純に比較するのは難しいと思います。また、中国の方々の収入は上と下の格差が非常に大きいので、そもそも平均値の代表性については日本ほど高くはないのかもしれません。例えば、「上海・北京・深圳」の給料と「瀋陽・武漢・ウルムチ」の給料の間には大きな地域差があります。ただし、中国国内の業界、職位別でその差がどうなっているかの理解の一助にはなると思い紹介します。 [続きを読む]

「双通道」と医療保険(医薬品の保険適用の促進)

前回の記事の通り、PD-1等の高価な新薬を含む抗癌剤に対して保険適用がされるようになりました。しかしながら、2018年-2019年に医療保険リストに収載(保険収載)された新薬等が実際に病院で処方されている比率は25%に留まっているという現状があります。保険収載されても処方されない、なぜそうなるのか複数の理由が挙げられていますが、その一つが薬剤費比率の抑制策です。各病院では、ある新薬を採用し処方を開始する場合、まず、それまで処方されていた薬剤の納入を終了する等の措置がされているのが実態ですので、特に高価な新薬の場合は、新規の採用が非常に難しくなります。当該新薬の病院での処方がなかなか進まず、患者からもクレームが出ていました。 [続きを読む]

ジェネリック医薬品の承認申請の審査中に発生した特許侵害紛争の早期解決システム【中国のパテントリンケージ制度①】

2021年5月18日に、NMPA(審査部門CDE)よりパテントリンケージシステムの肝となる「特許情報プラットフォーム」がネット上に公表され、5月末までを試行期間としました。中国で新薬の開発が終わり、NMPAに承認申請をする際、新薬の開発を行った企業(新薬企業)が当該新薬をカバーする特許(新薬特許)をこの特許情報プラットフォームに入力し、その特許情報が公衆に公開されます。そして、ジェネリック企業は新薬特許の満了日を睨みながらジェネリック薬の開発を進めることになります。しかしながら、ジェネリック企業は新薬特許の満了に先立って、新薬特許は無効であるとか、ジェネリック薬は新薬特許を侵害しないと主張(声明)し、NMPAに対しジェネリック薬を承認申請することが可能です。この声明も同時に特許情報プラットフォームに掲載されます。 [続きを読む]

中国国産のPD-1免疫チェックポイント阻害剤(抗癌剤)と医療保険

今、ホットなPD-1癌免チェックポイント阻害剤(抗癌剤)、中国は自主R&Dによる新薬が、4製品既に承認・上市済です。ポイントになる保険適用ですが、今年(2021)年3月から適用の医療保険リストには、これら4製品の全てが収載されています。従来は、新薬の承認が下りれば、まず病院に納入され、患者は自己負担で使用します。そして実績を作ってから、その数年後にやっと医療保険リストに収載され、保険償還されていました。日本では新薬の承認と薬価収載はセットでされますが、中国では、近年やっと承認後、短期間で新薬に保険が適用される時代が到来しました。これによって、薬価は大幅に引き下げられましたが、新薬の市場は大きく拡大すると言われています。  [続きを読む]

中国企業の新薬ライセンスイン(導入)一覧

今から遡ること50年、1970年代の日本の製薬産業は新薬のR&Dの本格的な勃興期、多くの企業は未だ海外からの導入品が各社の稼ぎ頭だった時代に、各社が自社研究を拡大する為に中央研究所を建設しました。それから30年経過後の21世紀に入っても中国では各社の稼ぎ頭はジェネリック品、それを巨大な工場で生産していました。その頃から新薬研究所の種蒔きが始まり、それから20年経過した今、新薬研究開発に火が着いています。ただし、今の中国は日本の50-40年前とは火の着き方が多少違っています。日本で火の着いたころは、大手の製薬企業が欧米から上市済の新薬をライセンスイン(導入)しながら、並行して自社で自社品のR&Dを実行していくのが主流でした。これに対して中国の今は、世界の潮流が変わり、ベンチャー・キャピタルの投資マネーが駆動となって、小規模の小回りの利くバイオベンチャーが自社の研究所を立ち上げ [続きを読む]