中国の受託研究機関(CRO・CDMO)の発展


最終更新日: 2022/05/19

新薬の研究開発は時間勝負。同じdrug targetについて数十、数百の研究グループが追いかけたとしても、各国の薬事政策の下で世に出てビジネスになるのは最初にゴールを切った数社だけ。そういった中で、2020年は某国が発信と言われるコロナ・ウイルスにより欧米がまず打撃を受け、日本も後追いの形で苦しんでおります。海外(中国から見た)の新薬業界では在宅勤務が主流となっており、どの企業も昨年(2020年)は長期間にわたって新薬研究所の閉鎖も余儀なくされました。しかしながら、グローバルの研究開発競争は停止しませんので、世界各社の研究所は競って、外注、CROに研究の実行を委託という道をひた走りました。

他方、いち早くコロナ問題から脱出した中国は、国内での新薬の研究開発が依然として旺盛に展開されており、中国特色あるエコ・システムを形成しているCROに、継続的に外注が続いています。それに加えて中国のCROは、海外企業・研究所機関からの外注が活況に沸き、2020年はどこも目を見張るような業績を達成しました。

中国のCROは、元々ジェネリック薬の合成・CMC等の受託研究をする機関でした。それが、2000年初頭、药明康德(WuXi)に代表されるような新薬研究の受託CROが勃興しました。それらのCROは、欧米のMNC(多国籍企業)から新薬に関連する非臨床研究(合成、毒性、薬理等)を受託するというビジネス・モデルで、上海を始め各地で旗を上げました。そして、あるCROは特定のMNC向けに代謝研究等を行う専用ビルを建設するなど、グローバル基準に則った試験の実行体制が整えられました。今では、グローバルに見て、中国のCROを抜きにした新薬研究の遂行は語れない時代に入って来ています。このように、中国のCROはMNCに育てられたと言ってもいいと思います。 

潮目が変わってきたのが、10年弱前からです。それまでは、中国の大手CRO(化合物・治験薬等の製造をするCDMOを含む)は欧米を中心とした医薬品企業・研究機関からの受注でした。それが、中国内資の新薬企業からの受注が増えて来て、今では、大手の中で内資からの受注が半数以上というCROも増えてきています。内資の新薬研究の膨張に従って、中国CROが更に発展してきている図式です。

そして、2020年の各社CRO(CDMOを含む)の業績が公表されました。公表されている29社の売上高の総額は、35%の伸びを達成しました。

次の記事ではCRO・CDMO各社を6つのカテゴリーに分け、2020年度の業績、および活用について紹介します。

Author Profile

川本 敬二
弁理士 (川本バイオビジネス弁理士事務所(日本)所長、大邦律師事務所(上海)高級顧問)

藤沢薬品(現アステラス製薬)で知財の権利化・侵害問題処理、国際ビジネス法務分野で25年間(この間、3年の米国駐在)勤務。2005年に独立し、川本バイオビジネス弁理士事務所を開設(東京)。バイオベンチャーの知財政策の立案、ビジネス交渉代理(ビジネススキームの構築、契約条件交渉、契約書等の起案を含む)を主業務。また3社の社外役員として経営にも参画。2012年より、上海大邦律師事務所の高級顧問。現在、日中間のライフサイエンス分野でのビジネスの構築・交渉代理を専門。仕事・生活のベースは中国が主体、日本には年間2-3か月滞在。
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