12月5日、李克強総理は国務院常務会議を司会、《中華人民共和国特許法改正案(草案)》(中国語:中华人民共和国专利法修正案)を可決し、草案を2018年12月23日〜29日に開催予定の全国人民代表大会常務委員会に提出することを決定しました。
改正案では、知的財産権の侵害に対する罰則強化に焦点を当てています。国際慣行に沿って、故意侵害・模倣に対する賠償・罰金を大幅に増やし、権利侵害のコストを大幅に増加させることで、違法行為の抑止を目指しています。
さらに、権利侵害者が関連する情報を提供する責任を明確にし、ネットワーク サービス プロバイダの共同責任も明確にしています。
また、職務発明に関し、発明者・設計者が職務上創出した発明によって生まれた利益を享受できる報奨体制を奨励し、特許を受ける権利の発明者から所属する企業への承継システムを改善しています。

今回国務院を通過したこの特許法改正案には3つの注目点があります。

  1. 特許侵害に対して懲罰的損害賠償制度を導入した。
  2. 関連資料を侵害者が提供する責任があることを明確にした。
  3. ネットワーク サービス プロバイダの共同責任を明確にした。

特許侵害に対する懲罰的損害賠償制度

懲罰的損害賠償は、知的財産権を故意に侵害した場合、得られた利益を賠償するだけでなく、その上にさらに2倍~3倍の懲罰を加えることにより、故意の侵害をなくすことを目指すのもです。

現行の特許法の損害賠償規定(§65)において、特許権の侵害に対する補償額は以下の優先順位で決定するとしています。

  1. 権利侵害によって被った特許権者の実際の損失に応じて決定されます。そして、特許権者の実際の損失が立証できない場合には、
  2. 侵害者によって得られた利益に応じて決定されます。そして、特許権者の損失、侵害者の利益のどちらも立証が困難である場合は、
  3. その特許の特許ライセンス料を勘案し、その倍数を合理的に決定するとしています。特許権者の損失、侵害者の利益、特許ライセンス料のいずれも決定が困難である場合、
  4. 裁判所は、特許権の種類・侵害の性質・状況に応じて、10,000元から100万元以下で賠償額(法定損害賠償額)を決定することになっています。

実際のケースにおいては、特許権者の製品等の売上の減少は多くの要因の影響を受けるため、権利侵害に絞った売り上げの喪失を計算することは非常に困難です。また、侵害者の利益の計算は、関連する販売数量のデータに依存しますが、その正確なデータを権利者側が立証することは非常に困難です。さらに、権利侵害に関わる特許について、特許権者が第三者にライセンスを提供していな場合には、合理的なライセンス料も論争の的になります。従って、中国における特許訴訟のほとんどは、法定損害賠償の範囲内で決定されています。この結果、特許権者はしばしば、訴訟に勝利しても金銭的には損失となり、受け取った賠償額では弁護士費用を支払うにも不十分というのが現状です。

また特許侵害の損害賠償は、主に損失補填を原則としています。そのため、賠償額は損失の補償または利益を吐き出させることに留まります。しかしこの原則では、結果として、侵害者の多くが利益を上げてしまう事態を招きます。即ち、最悪でも利益を取り上げられるだけですので、競合他社が最新の製品を売り出すと、特許侵害の有無などは考えず、直ちに追随し、訴えられても裁判を長引かせる作戦に出ます。そして特許訴訟が終了する頃には関係する商品はすでに次の代に換わっているのです。タオバオやアマゾンで次々に新しい商品が生み出されていますが、多くの企業はそのようなヒット商品をウォッチしており、すぐに模倣品を投入し、訴えられるまでに少しでも稼ごうとしています。

このような状況を変えるため、改正案では特許侵害に懲罰的損害賠償制度を導入し、侵害者は故意に特許を侵害した場合には、取得した利益を大きく超える賠償を払うことになります。この制度が導入されれば、現在の「窃盗的商法」は致命的な打撃を受けることになります。多くの特許権者が損害賠償の額を少しでも高額にしようとするでしょうから、侵害が故意であったと追求することになるでしょう。特に、特許権者が関連する特許について前もって警告等の注意喚起を促していた場合には、侵害者が通常の2〜3倍の損害賠償責任を負う可能性が高くなります。

侵害者の証拠提出責任

改正案では侵害者が関連する情報を提供する責任があることを明確にしました。現在、侵害者が関連する販売データを提供しようとしない場合、特許侵害による特許権者の補償額、侵害者の利益の額等の立証は非常に難しく、多くの場合に法定損害賠償額で決着しているのが実情です。改正後は侵害者が協力して関連する証拠を提供しなければ、自己にとって不利に働くことになりますので、侵害に対する抑止力となります。

ネットワーク サービス プロバイダの共同責任

現状の関連法規を整理しておきましょう。

《侵権責任法》第三十六条第二項の規定によれば、『ネットワーク利用者がネットワーク サービスを通じて権利侵害行為を行った場合、権利者はネットワーク サービス プロバイダにその旨を通知し、削除・遮断・切断など必要な措置を講じさせる権利を有する。ネットワーク サービス プロバイダが通知を受け取った後に必要な措置を取らなかった場合、損害が拡大した部分において、ネットワーク ユーザーと共同責任を負うものとする。』としています。 

これに対して、著作権侵害の処理の規定は比較的整備されているとも言えます。《情報ネットワーク伝達権保護条例》第十四条および第十五条によれば、『権利者は、何かの作品・パフォーマンス・音声・映像が自分の情報ネットワーク伝達権に関わっているか、削除・改変されたと判断した場合、情報保存領域・検索・リンクサービスのネットワーク サービス プロバイダに書面で通知、情報やリンクの削除を要求することができる。権利者からの通知を受けた後、ネットワーク サービス プロバイダは、著作権を侵害している作品・パフォーマンス・音声・映像情報を即座に削除するか、リンクを削除し、同時に権利者からの通知を送信者に転送しなければならない。送信者の住所が不明などで転送できない場合、それをインターネット上に表示する。』としています。

つまりネットワーク サービス プロバイダは侵害の存在を知った後すぐにリンクを削除することで、免責されることになり、実際には著作権の「抜け穴」となっています。商標権侵害の条項には同じような抜け穴はないものの、タオバオに関する裁判所の判例を見ると状況は基本的に同じです。ネットワーク サービス プロバイダが侵害通報窓口を設置していれば、商標権侵害の通報後すぐにリンクを削除することで、責任を逃れることができます。

通報・確認・削除プロセスには一定の時間がかかります。そして「Pinduoduo」のような共同購入サービスにおいては、短時間で一つの製品を大量に売り切ることができるようになりました。この場合、商標権を侵害している商品へのリンク削除は、すでに意味を持ちません。商標権でこの状況であれば、特許権侵害の処理はさらに複雑であり、共同購入サービス プラットフォームは権利を侵害した違法商品にとって最も良い販売方法となっています。

今回の特許法でも、ネットワーク サービス プロバイダの即時の措置がなければ連帯責任を負うことを明確にしており、措置が遅れることで拡大した部分に対して連帯責任を持たせるとしています 。言い換えれば、特許権者がプロバイダに通報して削除させることが容易にできるようになったと言えます。

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