エボラ薬と中国特許強制実施権

, ,
最終更新日: 2019/01/8

1.プロローグ

昨年、西アフリカでエボラ出血熱が猛威を振るい、そこから遠くに位置するアジアもその脅威に巻き込まれました。特に中国は、経済的にアフリカとの繋がりが深く、そこには100万人の中国人が住んでいると言われており、また、中国南部の広州には多くのアフリカ貿易商人が出入りしていることから、万一の場合には、アジアでは真っ先に被害が及ぶ地域であったに違いありません。上海に住んでいる私は、当時、それなりの覚悟を迫られる心理状況でした。そして、特効薬があれば、生き残りの為に、どんなことがあっても、手に入れたい!

そういった時期に日本の富山化学(富士フィルム・グループ)の開発したインフルエンザ薬の「アビガン」がエボラにも効くとの報道があり、欧州・アフリカで臨床試験がされ、今年になって、一部患者で効果が確認されつつあるとの報道が続きました。 他方で、中国では、4-5年前に中国の軍事医学科学院が見出したとされる抗エボラ・ウイルス薬JK-05について、四環医薬が技術移転を受け、同様に臨床試験の開始を予定しているとの発表がありました。その後、日本の「アビガン」と中国の「JK-05」が実は同一化学成分である可能性があり、もしそうであれば、当該成分に関して、日本の富山化学が中国で特許を有していることから、四環医薬はその特許権を侵害することになるとの報道がされました。

このような特許侵害の可能性についての報道が出た時、上海に住む一人の人間として、生命の危機に曝されるかも知れないというのに、なぜ、このようなレベルの違う話が出てくるのか、当時は、少し戸惑いました。幸い、2014年末に西アフリカのエボラ終息宣言が出され、その後、状況が安定化の方向に向かっている今、特許侵害問題を検討の上、今後の方向性について提言してみたいと思います。

2. 特許権の侵害問題

2-1) 日本での考え方:

特許権でカバーされている医薬品について、特許権者の同意を得ずに製造すれば、それは、特許侵害となります。然しながら、そのような製造が、当該特許医薬品を製造販売する為に厚労省の承認を取得する目的で開発行為の一環としてなされた場合には、原則、侵害行為には該当しないとされています。従って、開発行為の一環として臨床試験で投与される治験薬を製造する為に、第三者の特許でカバーされている医薬品(化合物)を合成・製造したとしても、それは侵害に該当しません。臨床試験が終わり、実際に当局から製造・販売承認を取得後、製造・販売を開始した時に始めて、具体的な特許権の侵害が発生します。

尚、このような考え方は、判例を積み重ねて米国で先ず法制度の整備がされましたが、それを受けて、日本でも同様の最高裁の判決がなされたことを踏まえての考え方です。

2-2) 中国での考え方:

中国では、米国同様、明確に法律に規定されています。特許法(第69条)に、特許権の効力が及ばない範囲に関する規定があり、そこには、特許権者の同意を得ずになした実施行為であったとしても、特許の侵害には当たらないとされる行為が列挙されています。その(5)に、臨床試験の実施行為についての関連条項が盛り込まれています。即ち,

「行政当局(cFDA)への承認申請の為に必要なデータを提出する目的で、特許医薬品–を製造、使用、輸入する行為、——–は、特許権の侵害行為とは見做されない。」

とされています(§69-(5))。従って、中国企業が、中国の行政当局(cFDA)から製造承認を取得する為の開発行為の一環として、エボラ薬を製造することは、上記の免責の範囲に入るので、たとえ、そのエボラ薬が日本企業の有する中国の特許権でカバーされていたとしても、特許権の侵害にはなりません。然しながら、中国企業がエボラ薬の開発に必要な範囲の量を超えて、将来の上市の準備として、在庫を積み上げる為にエボラ薬を製造した場合には、上記の免責の範囲を超えると考えられます。

3.特許権についての強制実施権の制度

中国企業がエボラ薬の事業化をすすめれば特許の侵害が不可避となる事態を迎えると考える場合には、富山化学に対して特許のライセンス許諾を求めることになると思われます。その際、富山化学がライセンスを許諾するか否かは、同社の経営判断の問題ですが、その際、下記の強制実施権の制度を念頭に入れておく必要があります。最悪、法律上、どのようになりうるかのボトム・ラインを押さえておく必要があるからです。

そこで、この強制実施権制度ですが、特許を含む知的財産権に関する国際条約である、パリ条約及び TRIPS 協定に基づいて、日本を含め加盟国の各国とも該当する制度を整えています。即ち、ある特定の状況が発生し、必要な条件が満たされる場合には、特許権者の同意を得ずに、政府が自己の判断で第三者に特許の実施権(ライセンス)を付与することが出来る制度です。この制度の下では、政府が強制的に第三者に実施権を付与することが出来ることから、「強制実施権」の制度と呼ばれています。

3-1)日本の「強制実施権」制度:

ある特許権についてビジネス化を希望する企業がその特許権を有する者にライセンス許諾を申し入れ、協議したけれども、不調に終わってしまったとしましょう。ここで、第三者にライセンスを許諾するか否かは特許権者の権限ですので、協議が不調になれば、原則、それで終わりということになります。然しながら、上記の条約上の要請もあり、日本でも、制度上、ある限られた場合にのみ、政府が介入して強制実施権が付与されうる枠組みが用意されています(未だ、発動はされていません)。

① 特許権者の不実施(特許法§83 条):

特許権者が特許成立から 3 年以内(出願から 4 年以内)に日本で特許を十分に実施しない場合。例えば、エボラ薬について、日本で厚労省から販売承認が得られていることを前提に、特許が成立しているにも関わらず、その後、3 年内に、特許権者が日本で製造・販売を開始しないような場合には、第三者が請求すれば、制度上、発動される可能性があります。

② 公共の利益の為(特許法§93 条):

公共の利益を優先する必要性がある場合。例えば、エボラが日本で流行し、日本社会が脅威に曝されているような状況であるにも拘らず、特許権者が十分な量のエボラ薬を製造し、日本社会に対して供給できないような場合に、上記と同様に、日本で日本特許権に対して強制実施権が発動される可能性があります。

③ 利用関係にある発明の実施(特許法§92 条):

二つの利用関係にある特許が異なる企業によって所有されており、一方の実施が他方の特許(日本特許)の侵害になってしまうような場合に、その実施を日本で実現させる必要性がある場合。例えば、A 社が、エボラ薬の化合物について日本で物質特許を有していたとしましょう。然しながら、製造コストが高く、医薬品として販売することができないような背景があると仮定し、その後、第三者がそのエボラ薬の革新的が製造方法を発明し、その製法発明について日本特許を取得の上、廉価で供給できるようになったような場合です。そのような場合、第三者がエボラ薬を製造しようとした場合、物質特許の侵害になりますので、製造はできない。他方、物質特許権者(A 社)は、商品化を実現する為にそのような画期的な製造方法を実施しようとしても、当該第三者の有する特許権の侵害になるので、実現できない。そのような事態を打開する為に、両者間で、協議不調の場合に、政府が強制的に実施を許諾し、製品の製造・供給を可能とする制度です。

3-2)中国の「強制実施権」制度:

中国でも上記の日本と同様の趣旨の制度が整備されています。これらの制度は、前述の通り、知的財産に関する国際条約の下で、制度の整備が許容されているという背景があります。中国国内では、未だ、強制実施権が発動されたケースはないようですが、それが将来、万一あるとすれば、医薬品分野、特に感染症治療薬は、その一つの候補になりうるであろうと考えられています。制度の概観を見た上で、エボラ薬について、どのように処理されることになるのか考えてみたいと思います。

① 不実施の場合(中国特許法§48-1):

中国で富山化学の特許が成立しているが、その成立後 3 年以内に十分な実施をしていないような場合に、中国企業が富山化学に対しライセンス許諾の申し入れをしたにも拘らず、協議が不調となってしまったような場合、中国特許庁に必要な書類を整えて申請すれば、制度上、当局は、強制実施権の許諾の判断をすることになりえます。ところが、エボラ薬を中国で販売する為には、中国国内で臨床試験を実施して、cFDA の承認を取得する必要があるので、そのような承認の取得に時間が掛かるような場合、特許成立後、3 年以内に製造・販売を開始することは不可能ですので、そのような場合には、3 年以内にそれがされていなかったとしても、直ぐに強制実施権の許諾をするという判断にはなりえないと考えられます。然しながら、エボラ薬を中国社会が必要としているような状況にあるにも拘らず、中国で cFDA の承認を取るために、それに向けた必要な臨床試験等の開発行為を始めていないような場合に、中国企業が中国特許庁に強制実施権の許諾を求めた場合、議論の俎上には、乗りうる状況になると思われます。

② 緊急・非常事態、公共の利益の場合(§49):

次に、「緊急・非常事態」の場合、又は「公共の利益」を目的として、強制実施権が付与される制度設計がされています。先ず、「緊急・非常事態」の典型例として、中国で 2003 年に SARS が流行し危機に陥った時の例が挙げられます(もっとも、当時、このことを理由として、特許薬に強制実施権が与えられたというわけではありません)。本件で言えば、例えば、将来、中国でエボラが大流行し、緊急事態を迎えた状況下、エボラに対し有効な他の薬剤がなく、富山化学のエボラ薬を投与すれば、エボラの流行を抑えることが出来るような場合には、中国政府の担当部門が中国特許庁に申請することにより、富山化学の特許権に対し、強制実施権の付与の可否が検討されうる状況になると考えられます。然しながら、現在のところ(2015 年 3 月)、WHO からエボラの終息宣言がなされた後、特に、状況が悪化しているといったようなこともなく、また、薬剤の有効性について、明確な実証が未だ得られていない状況では、「緊急・非常事態」の要件を満しているとは言えないと考えられます。従って、現状では、強制実施権の付与は難しい状況だと思われます。

次に、「公共の利益」ですが、エネルギーの効率的生産・利用、環境汚染の処理等に関する技術に特許が成立しているような場合に、強制実施権が付与される枠組みですが、それ以外にも、流行病の予防・治療に関する技術は対象の範疇に入ってくるとされています。これも、現状では、薬剤の有効性について明確な実証が得られていない状況では、発動は難しいように思われます。

③ 利用関係の場合(§51):

エボラ薬の製造販売を希望する中国企業がそのエボラ薬に関する何らかの発明について、中国で特許権を有しており、当該発明の価値が経済的な意味で、顕著・重大な技術的な効果を有するような場合に、利用関係の強制実施権が発動されえます。即ち、当該中国企業が富山化学の特許権がカバーするエボラ薬の製造・販売を希望し、該社に対しライセンスの協議を申し入れたにも拘らず、それが不調に終わってしまったような場合、中国特許庁への申請によって、強制実施権の付与の可否が当局にて検討されることになりえます。経済的に顕著な重大な進歩があるような発明とは、例えば、前記の日本での例で説明したように、富山のエボラ薬の製造が非常にコスト高であって、中国国内で広く薬剤を投与することが難しいような状況にあると仮定して、中国企業が画期的な製造方法を見出し、廉価で広く一般に供給できるようになるといった場合であって、中国企業が当該製法特許について中国で特許を取得しているにも拘らず、富山化学との協議が不調に終わり、当該特許権を実施できないような場合には、強制実施権の発動の可能性が検討されうる状況になります。製造方法に限らず、中国企業が、エボラ薬の製剤技術又はその用途の面で突出した技術革新をなし、且つ、特許を取得したような場合にも適用されえます。万一、法律上の要件を満たしているとして、富山化学の特許権に対して、中国企業に強制実施権が付与された場合には、富山化学は、中国企業のそのような突出した技術を利用することを希望する場合、中国企業からその製法等に関する特許権についてクロス・ライセンスを受けることができる仕組みになっています。

④ 特許医薬品の海外への輸出の為の製造ライセンス(§50):

中国特許法の下では、知的財産の国際条約 TRIPS 協定の 2003 年理事会決議(2007 年 TRIP 協定の修正議定書)に基づく、特許医薬品の海外への輸出の為の製造についての強制実施権の制度が整備されています。尚、日本は、この修正議定書を批准していないので、日本での認識は薄いので、注意が必要です。

この TRIPS 協定の制度の下では、医薬品の製造能力のある国が、製造能力のない国での流行病治療の為に、治療薬を製造し、当該国に輸出することが出来る強制実施権を付与することが可能となっています。中国は、上記の修正議定書を批准し、特許法の 2008 年改正時、かかる強制実施権に関する規定を盛り込んでいます。即ち、

「公共の健康維持の為に、中国で特許が付与されている医薬品について、中国特許庁は、当該特許薬を中国で製造し、TRIPS 協定の規定に従って、特定国に輸出する為の強制実施権を付与することが出来る」

とされています(中国特許法§50)。

TRIPS 協定上は、諸々の条件を満たすことを前提にして、同協定の加盟国の中国が、同協定の他の加盟国への輸出が可能であると、されています。然しながら、この制度を利用して、特許医薬品の輸入が必要な国は、TRIPS協定に参加出来ていないような開発途上国、最貧国であることから、中国では、人道的な見地から、同協定の趣旨に鑑み、輸出先は、TRIPS 協定に未加盟の国も含まれうる、との議論もされています。

そのような考え方に従うならば、更には、TRIPS 協定上その他の問題が発生しないのであれば、中国政府の監督の下、中国企業がエボラ薬を製造し、アフリカの国々(TRIPS 協定の未加盟国)に輸出する為に、富山化学の有する中国の特許権について、TRIPS 協定上の要求される様々な条件を付けた上で、中国企業に強制実施権を付与することが可能となりえます。また、富山化学がアフリカの対象となる国々においてエボラ薬の特許権を有しているような場合には、そのような国に中国で製造したエボラ薬を輸入して、当該国で使用することは、当該国の特許侵害となりえます。然しながら、上記の中国での「緊急・非常事態」の強制実施権に対応する当該国での同様の制度の下で、当該国のエボラ薬の特許に対して強制実施権が付与されれば、そのような問題も回避されうることになります。このように輸出国側(中国)と輸入国側(例えば、アフリカの国)の両方の特許権に対して、強制実施権の付与が可能となるシステム設計になっています。但し、ここでも、上記②で述べたのと同様の理由で、現時点(2015 年 3 月)では、強制実施権の発動し難い情勢と考えられます。

⑤ 独占禁止法上、問題となる行為(§48-2):

日中の視点・知財 No.10 で説明したように、特許権の権利行使が独占禁止法違反と認定された場合、請求人の申請に基づいて、中国特許庁は、当該特許権について強制実施権を付与することが出来るとされています(中国特許法§48(2))。この独占禁止法違反となりうる特許権の権利行使の一類型として、「ライセンス拒絶」が挙げられます。さて、中国企業が富山化学の特許権の侵害を回避する為に、富山化学に対しライセンス許諾の申し込みをしたにも拘らず、それが受け入れられず、ライセンスが成立しなかった場合、外形上、特許権者による「ライセンス拒絶」と見られ得るので、ここで、少し、押さえておく必要があります。

過去の日中の視点・知財で採りあげた通り、中国では、独禁法/知的財産のガイドラインが現在、起草(工商総局:2014 年 2 月に第五版が公表)中ですが、その第 17 条に「ライセンス拒絶」に関する独禁法上の基本的な考え方が述べられています。特許権者がライセンス拒絶することは、それに条件を付けずに、且つ第三者との関係で差別的でないような場合には、原則として、独禁法上、違反行為として認定されることはないとしています。然しながら、市場で支配的な地位にある特許権者が、非独占的に数社にライセンスをしておきながら、それを差別的に、ある特定の企業にのみライセンスを許諾しないような場合等については、問題となりうる行為であると位置づけしています。 尚、ここでは、特許権者の有する技術が業界の技術スタンダードに関するような技術であり、当該業界で少なからずの企業が事業を推進する際に関わりがある技術であることが前提となっています。

今回の中国のエボラ薬の場合は、対象となる特許権は、ある特定の医薬品をカバーする特許権であって、それに対して中国のある一社の企業がライセンスの申し出をする場合を想定しており、たとえ、両者間でライセンスが成立しなかったとしても、それは、上記で述べた、原則論の範疇に入る行為であって、問題となりうる「ライセンス拒絶」には該当しないと考えられます。

⑥ 強制実施権とロイヤルティー支払い義務(§57):

強制実施権制度の下で、万一、ライセンスが中国企業に付与されたような場合、当該企業は、特許権者に合理的なロイヤルティーを支払う必要があります(特許法§57)。このロイヤルティーの額は、両者が協議によって決めるのが原則ですが、合意に至らなかった場合には、中国特許庁が裁定した額とされています(同条上)。

4.方向性のまとめ:

地球上のどの国も、エボラのみならずインフルエンザ等の致死性の高いとされる感染症の脅威に曝されうることには例外がないと思います。然しながら、その脅威の最前線に曝されている国々の多くは発展途上国であって、医薬品の製造能力はない国が殆どです。中国は、SARS の事件、鳥インフルエンザの予兆等、自身が感染症の脅威の最前線にある一方で、エボラで問題となったアフリカ諸国とも非常に結びつきが強いといった特殊な立場にあります。その中国は、医薬品の製造・品質管理能力は先進諸国に近いレベルまで達しています。従って、感染症からの自国防衛の為に、更には、友好国から援助が求められた場合の対応の為に、必要な医薬品は自国で何時でも製造して準備できる技術的な意味での能力は備えていると言えます。

今回のエボラ薬については、報道によれば、日本の医薬品企業が中国で対応の特許権を有しているとされており、日本企業は営利企業である以上、過去のR&D 費用の回収、更には将来に向けた R&D の継続の為に、エボラ薬の中国ビジネスにおいても、最大限の利益を回収する為のビジネスの枠組みを作っていく必要があります。また、日本列島に住んでいる日本人の立場から言えば、中国大陸がアフリカとの関係で万一、エボラに浸食されたら、その隣国としての日本への波及は必至でありますので、中国との共同戦線を張ることが自国の防衛を図るための先手になるとも言えます。

他方、中国は、今、自国の医薬新産業の R&D 強化を国策にしています。その大前提として、法治による知財立国、その一つの方向性が特許権の強化です。上記の「強制実施権」制度は、中国も加盟している国際条約の下で整備されている制度ですが、それは特許権に風穴を開けることに繋がる、即ち、特許権を弱体化させるといった側面を有しています。中国に於いても、制度は準備されていても、過去、強制実施権が発動されたことはなく、また、実際に、特許の係争が発生したような場合には、日本と同様、先ずは、当事者による協議によって解決を最優先に考えるというスタンスをとっています。その意味からも、この時期に中国の「強制実施権」制度を検討するのは机上の空論に近いといってもいいかもしれません。

このような背景をベースに、一つは、エボラ薬という特殊性に鑑み、国の安全・公衆衛生にも関することであり、従って、国とのかかわりが強いビジネスであることから、中国に於いては、中国企業との連携によりビジネスを進めた方が、日本が見出した医薬品によって中国およびその関連諸国でより広範囲に貢献することが可能になると思わること。二つめは、中国企業と連携する場合の提携・ライセンス等の経済条件等については、上記の強制実施権の枠組みがボトム・ラインとなりえますが、その何れもが、現時点(2015 年 3 月)では、要件を満たしていないと言えることから、そのようなボトム・ラインに縛られない交渉が可能となりえるので、出来るだけ早く真剣な交渉を開始すべきこと。そして最後に、知財立国の先輩国としての日本の考え方を強く主張した上で、特に医薬品の R&D の将来の推進を強く視野に入れて、経済条件を含め、決着すべきと考えます。

尚、上記で挙げた要因以外に、成立した特許の有効性、特許の残存期間、中国企業による先使用権の成立性等、諸々の事項について検討の上、提携交渉がなされる必要があることを付言します。
以上

Author Profile

川本 敬二
弁理士 (川本バイオビジネス弁理士事務所(日本)所長、大邦律師事務所(上海)高級顧問)

藤沢薬品(現アステラス製薬)で知財の権利化・侵害問題処理、国際ビジネス法務分野で25年間(この間、3年の米国駐在)勤務。2005年に独立し、川本バイオビジネス弁理士事務所を開設(東京)。バイオベンチャーの知財政策の立案、ビジネス交渉代理(ビジネススキームの構築、契約条件交渉、契約書等の起案を含む)を主業務。また3社の社外役員として経営にも参画。2012年より、上海大邦律師事務所の高級顧問。現在、日中間のライフサイエンス分野でのビジネスの構築・交渉代理を専門。仕事・生活のベースは中国が主体、日本には年間2-3か月滞在。
0 replies

Leave a Reply

Want to join the discussion?
Feel free to contribute!

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *