中国医薬 ― 日中医薬品ビジネスの架け橋 Produced by 川本バイオビジネス・パートナーズ株式会社
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中国の新薬ビジネスはどこへ向かう?/新五か年計画(下)

政策行政
最終更新日: 2022/03/17

中国の新薬ビジネスはどこへ向かう?/新五か年計画(上)の続きです。

3.「14次医薬産業五カ年計画」の特徴・内容 / 「13次計画」からの変化

1)政府組織

冒頭で政府主導による経済戦略立案、その運営について述べましたが、その意味で、政府のどの部門が計画立案に参画したのかもポイントになってきます。社会における医薬品産業の重要性が増したことから、14次計画の策定に関わった政府(国務院)の部署が広範となりました。
前回の13次計画は、工業情報部、発展改革委員会、科学技術部、商務部、衛生健康委員会、NMPA(国家医薬監督管理局)でした。それに加えて、今回の14次では、医療保険局、漢方管理局、緊急事態治安局が加わり、合計9組織が策定に参加しました。即ち、国家計画の策定部署・情報化・科学技術・通商産業・厚生・薬事等の主管部署に加えて、医療保険、漢方・中医、危機対応の部署が追加されたことになります。

2)品質からイノベーションへ

前回の13次では、その時代の中国の業界状況を反映して、「ジェネリック等の品質」及び「イノベーションを駆動」させるという表現で重点項目を挙げていました。今回の14次では、製品の品質はある一定の水準に達したことから、「イノベーション」の牽引によって業界の発展を進めるとしています。それを前提に「最先端のイノベーション」を行うと。Me-better的な創薬からfirst in class的な創薬への脱皮が意図されています。

3)数値目標

医薬品企業の事業収入、利益をそれぞれ年率10%、8%増とする。これは他の業界数値目標を超えた数字です。
またR&D費用は、年率10%増としています。

4)国際化

医薬品事業の国際化が強調されています。新薬についてはイノベーション推進による国際化、原薬については海外投資・M&Aによる国際化の推進が挙げられています。また、中国漢方ブランドの国際化も謳われています。

5)医薬品等の重点発展の方向性

前回の13次は計画が対象とする製品・技術分類として「バイオ医薬、化合物医薬、漢方、医療機器」の順で挙げられていました。今回の14次では、分類は同様ですが、トップに「化合物医薬」が挙げられているのが変化です。そしてそれぞれの分類別に重点発展の方向性が示されています。

(1) 化合物医薬

  1. 新しいdrug target及び新規メカニズムを有する薬剤であって「癌・自己免疫疾患・神経変性疾患・心血管・糖尿病・肝炎・呼吸器系疾患・薬剤耐性菌感染症・希少疾患」を対象とする。
  2. 「アンチセンス核酸医薬、siRNA(RNA干渉), PROTAC」等の新プラットフォーム技術を用いた医薬品
  3. 疾病進展と癌ゲノム医療に基づく「Precision medicine」
  4. 「臨床的価値が明白」な改良型医薬(製剤変更、適応拡大等)

(2) バイオ医薬

  1. 抗体領域
    癌・免疫・ウイルス感染・高脂血等の疾病に対する新規抗体、新世代の免疫チェックポイント阻害薬、二重特異性抗体(Bi-specific)、GPCR抗体、ADC、抗体と他の医薬品との併用治療法
  2. ワクチン領域
    コロナウイルス・ワクチン、ヘルペスワクチン、HPV、多価ワクチン
  3. 組み換えタンパク領域
    新規drug targetの新薬、効果の持続・既存薬の投与ルート変更等の改良型新薬
  4. その他領域
    新規drug target、新適応症のCAR-T、CAR-NK等の細胞治療、幹細胞治療、遺伝子治療、特異性免疫グロブリン

(漢方、医療機器は省略)

4.まとめ

中国の医薬品業界は、近年始まった集中購買による薬価ダウンと競争激化、さらには米中協議によるジェネリック薬に対する各種市場参入制限等によって、企業利益が大幅な圧縮傾向にあります。株式市場においては、トップの恒瑞医薬でさえも株価下落に見舞われています。現在数千社ある医薬品企業ですが、将来的には上位企業に集約されていくとされています。ただ、「14次計画」で述べられていますが、売上・利益共に高水準の成長がうたわれているように、長期的な視点に立てば明るい業界であることには変わりはないと言えます。 

日本企業が中国企業との連携を図るにあたっては、中国企業側はこの「14次計画」の傘の中にあることを理解しておく必要があります。特に、上記の「重点発展の方向性」はポイントになってくると思います。

以上

投稿者プロフィール

川本 敬二
弁理士 (川本バイオビジネス弁理士事務所(日本)所長、大邦律師事務所(上海)高級顧問)

藤沢薬品(現アステラス製薬)で知財の権利化・侵害問題処理、国際ビジネス法務分野で25年間(この間、3年の米国駐在)勤務。2005年に独立し、川本バイオビジネス弁理士事務所を開設(東京)。バイオベンチャーの知財政策の立案、ビジネス交渉代理(ビジネススキームの構築、契約条件交渉、契約書等の起案を含む)を主業務。また3社の社外役員として経営にも参画。2012年より、上海大邦律師事務所の高級顧問。現在、日中間のライフサイエンス分野でのビジネスの構築・交渉代理を専門。仕事・生活のベースは中国が主体、日本には年間2-3か月滞在。
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2022年3月15日/川本 敬二/政策行政
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