12月5日、李克強総理は国務院常務会議を司会、《中華人民共和国特許法改正案(草案)》(中国語:中华人民共和国专利法修正案)を可決し、草案を2018年12月23日〜29日に開催予定の全国人民代表大会常務委員会に提出することを決定しました。
改正案では、知的財産権の侵害に対する罰則強化に焦点を当てています。国際慣行に沿って、故意侵害・模倣に対する賠償・罰金を大幅に増やし、権利侵害のコストを大幅に増加させることで、違法行為の抑止を目指しています。
さらに、権利侵害者が関連する情報を提供する責任を明確にし、ネットワーク サービス プロバイダの共同責任も明確にしています。
また、職務発明に関し、発明者・設計者が職務上創出した発明によって生まれた利益を享受できる報奨体制を奨励し、特許を受ける権利の発明者から所属する企業への承継システムを改善しています。

今回国務院を通過したこの特許法改正案には3つの注目点があります。

  1. 特許侵害に対して懲罰的損害賠償制度を導入した。
  2. 関連資料を侵害者が提供する責任があることを明確にした。
  3. ネットワーク サービス プロバイダの共同責任を明確にした。

特許侵害に対する懲罰的損害賠償制度

懲罰的損害賠償は、知的財産権を故意に侵害した場合、得られた利益を賠償するだけでなく、その上にさらに2倍~3倍の懲罰を加えることにより、故意の侵害をなくすことを目指すのもです。

現行の特許法の損害賠償規定(§65)において、特許権の侵害に対する補償額は以下の優先順位で決定するとしています。

  1. 権利侵害によって被った特許権者の実際の損失に応じて決定されます。そして、特許権者の実際の損失が立証できない場合には、
  2. 侵害者によって得られた利益に応じて決定されます。そして、特許権者の損失、侵害者の利益のどちらも立証が困難である場合は、
  3. その特許の特許ライセンス料を勘案し、その倍数を合理的に決定するとしています。特許権者の損失、侵害者の利益、特許ライセンス料のいずれも決定が困難である場合、
  4. 裁判所は、特許権の種類・侵害の性質・状況に応じて、10,000元から100万元以下で賠償額(法定損害賠償額)を決定することになっています。

実際のケースにおいては、特許権者の製品等の売上の減少は多くの要因の影響を受けるため、権利侵害に絞った売り上げの喪失を計算することは非常に困難です。また、侵害者の利益の計算は、関連する販売数量のデータに依存しますが、その正確なデータを権利者側が立証することは非常に困難です。さらに、権利侵害に関わる特許について、特許権者が第三者にライセンスを提供していな場合には、合理的なライセンス料も論争の的になります。従って、中国における特許訴訟のほとんどは、法定損害賠償の範囲内で決定されています。この結果、特許権者はしばしば、訴訟に勝利しても金銭的には損失となり、受け取った賠償額では弁護士費用を支払うにも不十分というのが現状です。

また特許侵害の損害賠償は、主に損失補填を原則としています。そのため、賠償額は損失の補償または利益を吐き出させることに留まります。しかしこの原則では、結果として、侵害者の多くが利益を上げてしまう事態を招きます。即ち、最悪でも利益を取り上げられるだけですので、競合他社が最新の製品を売り出すと、特許侵害の有無などは考えず、直ちに追随し、訴えられても裁判を長引かせる作戦に出ます。そして特許訴訟が終了する頃には関係する商品はすでに次の代に換わっているのです。タオバオやアマゾンで次々に新しい商品が生み出されていますが、多くの企業はそのようなヒット商品をウォッチしており、すぐに模倣品を投入し、訴えられるまでに少しでも稼ごうとしています。

このような状況を変えるため、改正案では特許侵害に懲罰的損害賠償制度を導入し、侵害者は故意に特許を侵害した場合には、取得した利益を大きく超える賠償を払うことになります。この制度が導入されれば、現在の「窃盗的商法」は致命的な打撃を受けることになります。多くの特許権者が損害賠償の額を少しでも高額にしようとするでしょうから、侵害が故意であったと追求することになるでしょう。特に、特許権者が関連する特許について前もって警告等の注意喚起を促していた場合には、侵害者が通常の2〜3倍の損害賠償責任を負う可能性が高くなります。

侵害者の証拠提出責任

改正案では侵害者が関連する情報を提供する責任があることを明確にしました。現在、侵害者が関連する販売データを提供しようとしない場合、特許侵害による特許権者の補償額、侵害者の利益の額等の立証は非常に難しく、多くの場合に法定損害賠償額で決着しているのが実情です。改正後は侵害者が協力して関連する証拠を提供しなければ、自己にとって不利に働くことになりますので、侵害に対する抑止力となります。

ネットワーク サービス プロバイダの共同責任

現状の関連法規を整理しておきましょう。

《侵権責任法》第三十六条第二項の規定によれば、『ネットワーク利用者がネットワーク サービスを通じて権利侵害行為を行った場合、権利者はネットワーク サービス プロバイダにその旨を通知し、削除・遮断・切断など必要な措置を講じさせる権利を有する。ネットワーク サービス プロバイダが通知を受け取った後に必要な措置を取らなかった場合、損害が拡大した部分において、ネットワーク ユーザーと共同責任を負うものとする。』としています。 

これに対して、著作権侵害の処理の規定は比較的整備されているとも言えます。《情報ネットワーク伝達権保護条例》第十四条および第十五条によれば、『権利者は、何かの作品・パフォーマンス・音声・映像が自分の情報ネットワーク伝達権に関わっているか、削除・改変されたと判断した場合、情報保存領域・検索・リンクサービスのネットワーク サービス プロバイダに書面で通知、情報やリンクの削除を要求することができる。権利者からの通知を受けた後、ネットワーク サービス プロバイダは、著作権を侵害している作品・パフォーマンス・音声・映像情報を即座に削除するか、リンクを削除し、同時に権利者からの通知を送信者に転送しなければならない。送信者の住所が不明などで転送できない場合、それをインターネット上に表示する。』としています。

つまりネットワーク サービス プロバイダは侵害の存在を知った後すぐにリンクを削除することで、免責されることになり、実際には著作権の「抜け穴」となっています。商標権侵害の条項には同じような抜け穴はないものの、タオバオに関する裁判所の判例を見ると状況は基本的に同じです。ネットワーク サービス プロバイダが侵害通報窓口を設置していれば、商標権侵害の通報後すぐにリンクを削除することで、責任を逃れることができます。

通報・確認・削除プロセスには一定の時間がかかります。そして「Pinduoduo」のような共同購入サービスにおいては、短時間で一つの製品を大量に売り切ることができるようになりました。この場合、商標権を侵害している商品へのリンク削除は、すでに意味を持ちません。商標権でこの状況であれば、特許権侵害の処理はさらに複雑であり、共同購入サービス プラットフォームは権利を侵害した違法商品にとって最も良い販売方法となっています。

今回の特許法でも、ネットワーク サービス プロバイダの即時の措置がなければ連帯責任を負うことを明確にしており、措置が遅れることで拡大した部分に対して連帯責任を持たせるとしています 。言い換えれば、特許権者がプロバイダに通報して削除させることが容易にできるようになったと言えます。

2018年5月に非臨床・臨床の試験データの保護制度に関する法案が公表されています(cFDAより)。新薬の開発が終わって販売承認がおりた後、ある一定期間中、当該新薬の開発・承認取得者に対し市場独占の権利を享受させる制度としては、先ず、特許制度が挙げられますが、それ以外にも薬事制度の下でも保護制度が構築されています。先ず、中国に於ける新薬販売の独占期間を担保する制度の全体像を探り、その上で、データ保護制度(案)の内容を検討します。

1.中国の市場独占性と法制度の整備動向

「新薬の研究開発投資の促進」と「ジェネリック薬の適時の市場参入」の両面での政策目的の実現を図りつつ、その両者の利害を調整する為に、中国では、ここ1-2年の間に、「新薬の独占販売期間」の設定に関し、特許法及び薬事法を中心に様々な制度整備が図られています。

1)特許法

(1)「特許侵害の抑止」

先発の新薬をカバーする特許の有効期間中にジェネリック薬が市場参入した場合には、特許侵害問題が発生します。中国では、今、知財保護の強化の観点から、特許侵害行為の発生を抑止する為の諸規定を盛り込んだ特許法の改正(第4次改正)作業が進んでいます。

(2)特許期間の延長

更には、医薬品の特許保護期間(20年)を延長する為の新制度の導入についても具体的な検討がされています。(関連記事

2)薬事法

(1)「再審査期間」

日本の新薬に関する再審査期間に該当するのが、中国では、「監測期間」と呼ばれているものです。先発品としての新薬が承認された後、この期間中は、ジェネリックに対して承認が与えられない制度です。従来から各分類毎に、例えば新薬(新規薬効成分NCE)について5年、その他新製剤・新投与ルートについても夫々の期間が付与されていました。2016年3月に「低分子化合物医薬の分類改正」が行われ、NCE、新製剤・新投与ルート等の類を組み換えた上、夫々の類別に承認日から3〜5年の期間を設定し、その間、ジェネリックの承認が付与されないという制度が敷かれています。

(2)「Patent Linkage」

Patent Linkageの制度導入が検討されています。即ち、① 新薬の販売承認の申請者に当該新薬をカバーする特許情報の提出を求め、cFDAが当該特許情報を公開することを前提に、ジェネリック申請者が、当該特許が無効である等の理由がある場合には、当該事情を説明・表明することにより、特許の有効期間中であってもジェネリック申請が可能となり(「特許チャレンジ薬」の申請)、② 当該説明・声明がなされた場合、特許権者に回覧され、特許権者に対して裁判所に特許侵害訴訟を提起する機会が与えられ、他方、訴訟が提起されない等の場合には、ジェネリックに承認が付与されるとの新制度の導入検討がされています。検討中の案については、2017年5月のcFDAからの通知によって概要が示されています。

(3)「データ保護」

新薬の販売承認の申請者が自分で実施した試験から取得した臨床・非臨床の試験データについては、これを承認申請時に提出した範囲で、当該データの第三者による使用が禁止されるという「データ保護」制度の具体化が検討されています。

新薬の開発者は上記の特許法上及び薬事法上の保護制度を重層的に活用して、より長い市場独占を図ることが必要となってきます。

2.データ保護制度

現行の薬事関連法(「薬品管理実施条例」及び、「薬品登録管理弁法」)には、非臨床・臨床の試験データ保護に関する規定が存在していますが、その具体的な実施に関する細則が制定されていなかったことから、法律上はデータ保護がうたわれているにも拘らず、実際には試験データに対して保護が付与されていませんでした。日本では馴染みのない制度ですが、中国がWTOに加盟するに際して、TRIPS協定を順守する必要があり、その39条3項に、加盟国は新規化合物を含有する医薬品に対して販売承認申請に用いられたデータを保護の為の施策をとる必要があると規定されていることから、中国が、上記の薬事関連法に盛り込んだ経緯があります。

従来、データ保護は、絵に描いた餅の状態だったのですが、昨年(2017年)10月に中国の党中央・国務院が「医薬品・医療機器の承認申請制度の改革の強化及びイノベーションの推進に関する政策」を公表し、その中でデータ保護制度の構築(第18条)が宣言されたことを踏まえ、今年(2018年)5月にcFDAが「薬品試験データ保護の実施弁法(暫定)」(「データ保護弁法(案)」)として草案を公表し、パブリックコメントを求めました。その内容に基づき、近い将来、正式に細則が定められ、実質的に具体的なデータ保護が与えられることになるとされています。未だ、案の段階ですが、次にその概要を見て行きたいと思います。

1)保護の対象となる「医薬品」及び「試験データ」(「データ保護弁法(案)」§3、4)

新薬(NCE)、バイオ新薬、オーファンドラック、小児用薬及び「特許チャレンジ薬」について、自己が実施した試験によって取得した臨床・非臨床の試験データであって、承認申請にあたって申請データとして用いられた有効性等に関する未公開データに対して保護が与えられます。尚、安全性に関するデータについては、保護対象外とされています。

尚、今後、データ保護制度の細則を決めて行く段階で詰めなければならない点としては、
① 医薬品の申請データに関し、日本の情報公開法、米国のFOI法の下で、政府当局による公表の対象外となっているCMCデータの一部を含む商業機密データに対する保護をどの範囲で与えて行くのか。
②「特許チャレンジ薬」については、前記の通り、ジェネリック申請者が、先発品の特許が有効期間中に、当該特許が無効である等の主張(チャレンジ)をして、これが認められて、販売承認が付与されるジェネリック薬ですが、特許無効が最終的に裁判所で認定される必要があるのか否かも含めて、その条件は、Patent Linkage制度に関する細則の制定とセットで処理されることになります。

2)データ保護の保護内容(「データ保護弁法(案)」§8)

データ保護を受けている事業者(先発品の先発企業)の事前の同意を得ずに第三者(ジェネリック・企業を含む)が保護対象となっている試験データを使用して申請した場合、cFDAは当該ジェネリック申請に対して、下記の「保護期間」中は承認を与えない、との趣旨で規定されていることから、その範囲で、試験データに対して保護が与えられることになります。ここでいう試験データに対する保護の意味ですが、比較の意味で、例えば、不正競争防止法の下では、価値ある秘密データに対して保護が与えられますが、具体的には、秘密データの保有者は、第三者に対して、その不正使用があった場合には、裁判所に訴訟を提起することによって、その差止を求め及び損害の賠償を請求できるということです。他方、薬事関連法の下では、保護が与えられた「試験データ」をジェネリック企業が勝手に使用して、「保護期間中」にジェネリック申請をした場合、当該申請は承認されないという意味での保護が与えられます。

3)保護期間(「データ保護弁法(案)」§5)

新規有効成分含有(NCE)の新薬に対しては、当該新薬の試験データに対して、販売承認日から6年間のデータ保護期間が与えらます。これも含め、リスト化すると下記の通りとなります。

類別 保護期間 条文番号
NCE新薬 6年 §5
バイオ新薬 以下の場合を除く 12年 §5
① 中国が参加した国際共同治験の試験データであって、中国での申請が他国より遅れた場合(6年以上遅延の場合、保護は与えられない) 1〜5年
② 中国で実施した臨床試験データを用いず、海外の試験データのみを用いて申請の場合 上記期間の1/4
③ 中国の臨床試験データを補充して申請の場合 上記期間の1/2
オーファンドラッグ 6年 §6
小児薬 6年 §6

尚、「特許チャレンジ薬」については、今回の法案では「保護期間」について明示されておらず、Patent Linkageの制度と並行して、その「保護期間」が検討されていると思われます。

4)データ保護を求める申請手続き(「データ保護弁法(案)」§9,10,11)

データ保護を求める為には、対象の医薬品の承認申請時に、同時に、当該医薬品の試験データについて保護を求める理由及び求める「保護期間」を記載の上、データ保護の申請をする必要があります。CDE(審査機関)は、対象医薬品の承認審査と並行して、データ保護の審査を実施し、承認の付与時に、データ保護についての結果を通知します。「保護期間」等の情報は、公示されます。

5)保護されるデータの公表(「データ保護弁法(案)」§17)

データ保護を認められた者(即ち、新薬等の承認取得者)は、自主的に、保護対象となったデータを公開する必要があるとされています。これは、公表させることによって、公衆の監督監視下に置き、データの捏造等の不正行為を未然に防ぐとともに、試験の重複実施による資源の浪費を回避するのが目的とされています。

6)第三者による「保護データ」の使用(「データ保護弁法(案)」§14、17)

「保護期間」中であっても、ジェネリック企業等の第三者は、自分で試験を実施して、データを取得した場合、又は、「データ保護」を受けている先発の企業から同意を得た場合は、当該データを用いて、承認申請することが出来ます。

第三者から当該申請があった場合には、cFDAは、「データ保護」を受けている先発の企業に通知をして、異議を申し立てる機会を与えます。尚、かかる紛争は、最終的に行政訴訟によって、解決されるとされています。

前記の通り、当局は、今年5月に上記の制度案を公表し、パブリック・コメントを求めました。各団体等から出された意見・コメントを踏まえて、当局が検討中と思われます。本件につき、動きがあり次第、報告の予定です。
以上

4月12日、国務院常務会議において李克強総理は抗がん剤の関税をなくすという発表を行ない、これは中国国民に大きな反響をもたらしました。
この発表の背景にあるものは何でしょうか。

国務院(内閣)常務会議における重要決定項目

2018年4月12日に開かれた国務院常務会議にて、医薬品に関連したいくつかの重要な政策が李克強(首相)により発表されました。
① 5月1日より、抗がん剤の輸入関税をなくす
② 抗がん剤を政府によって調達することにより、中間のコストをなくす
③ 輸入新薬の上市を早めるため、臨床試験開始のためのIND申請制度、および医薬品輸入手続き制度の改正
④ 新薬に最長6年のデータ保護期間、中国と海外で同時上市の新薬について、最長5年の特許保護期間の補充(関連記事はこちら
今回は項目①と②を取り上げます。

5月1日から抗がん剤の関税をゼロに

中国はWTOに加盟した2001年以降、医薬品に対する関税を徐々に低減させてきました。直近でも昨年12月より、抗がん剤の輸入関税を2%まで下げています。
現状2%という低水準の関税ですから、それが0%になったとしても経済上のインパクトはほとんどありません。しかし、「すべての医薬品で関税撤廃」というワードは十分なインパクトがあります。

輸入国産を問わず、消費税が大幅低減

4月12日の国務院常務会議において、関税撤廃と同時に、増値税(消費税に相当)も低減させるとの発言がありました。この時に税率には触れていません。
そして4月27日、財務部は「抗がん剤の増値税政策について(財税(2018) 47号)」という通知を出し、これまで17%だった増値税を3%に減税すると発表しました。こちらは販売価格に影響を与える減税額になっています。しかし、元々輸入抗がん剤は価格が非常に高いため、たとえ20%価格が安くなったとしても中国の庶民にとってはとても買える物ではありません。
そこで続く第三の政策、最も実効性の大きな政策に注目してみましょう。

抗がん剤の一括調達による中間コストの低減

4月の重要決定事項の2番目に挙げましたが、政府は一括調達、保険の適用リストの見直し、各企業との価格交渉、電子商取引の活用によって販売価格を低減させることを発表しました。
この一括調達、保険適用、価格交渉、電子商取引はそれぞれ密接な関係があります。
もし新薬が中国の保険適用になれば、一気に販売量が増えることになります。そこで政府は保険適用をするに際し、各企業と価格交渉をしたり入札を実施することによって、調達価格を圧縮します。2017年の実績で平均50%も値段を下げることができたとのことです。
一括して購入した新薬は、電子商取引によって全国に販売することになります。
2017年の実績では、価格交渉で700億円、保険適用を含めると1000億円以上も患者負担を減らせたとのことですから、この政策は最も効果的です。しかし諸外国にとってはあまり良いニュースではないため、これら3つの政策を一度に発表したようです。

がん患者負担の社会問題

こうした決定の背景にあるのは、医療費に対する国民の不満が高まっているということです。
ここ数年「看病难」(診療を受けたくても受けられない)という言葉が流行しています。病院に行っても人が多く待ち時間が長い、専門の医者がいない、医療費が高い、ベッドが足りないというわけです。このうち医療費の問題は「看病贵」と言われ特に注目されています。
中国では年間429万人が新たにがんが見つかっており、日本の4倍です。しかし、抗がん剤の市場規模は2兆円を超えくらいで、この市場規模は日本の2倍程度でしかありません。多くの国民に抗がん剤は高すぎるのです。その結果、5年生存率は日本の半分しかありません。(癌の種類が異なることも関係していますが。)
今年になってがんにり患した子供を歩道橋から突き落として死なせた父親の事件が中国で話題になりました。また、高齢化社会が日本以上の速度で進み、毎年がんにり患する患者数も年10%で増え続けており、社会問題になっています。

考察

今回中国政府は、諸外国と国内世論の両面に歓迎される、とてもうまい組み合わせの政策を発表しました。
諸外国は中国の関税の不公平感を重く見ていますし、世界最大の市場として市場開放を強く望んでいます。特にトランプによる圧力が高まった4月、関税撤廃の発表は大きなインパクトがありました。アメリカとの正面対立を望んでいないことがわかります。
一方で一党体制とはいえ、安全保障上、国民の世論についても無視することはできません。あまりアメリカに対して弱腰な対応をしたとの印象を自国民に与えるわけにはいかないのです。
そこで今回、国民の「看病难」を解決するという名目のもと、貿易戦争を避ける絶妙な政策を送り出しました。

世界の抗がん剤開発企業にとってこれは千載一遇のチャンスですが、すでに対象になる医薬品のリストが公開されています。このリストの分析は別記事をご確認ください。

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関税が撤廃される抗がん剤一覧(執筆中)
医薬品特許保護期間を上市から5年認める、データ保護期間も延長
新薬に最長12年のデータ保護期間を与える法案が公開

中国、薬の特許期間を延長 5年間、先進国並みに」とのタイトルで「中国が5月から医薬品の特許期間を今の20年から最長25年間に延長し、先進国と足並みをそろえた」との報道がありました。(日本経済新聞、5月15日)

医薬品業界にとりましては、インパクトのあるニュースですので、本件の関連情報も含めて状況を報告いたします。

 

国務院(内閣)常務会議における重要決定項目

2018年4月12日に開かれた国務院常務会議にて、医薬品に関連したいくつかの重要な政策が李克強(首相)により発表されました。
① 5月1日より、抗がん剤の輸入関税をなくす(関連記事はこちら
② 抗がん剤を政府によって調達することにより、中間のコストをなくす(関連記事はこちら
③ 輸入新薬の上市を早めるため、臨床試験開始のためのIND申請制度、および医薬品輸入手続き制度の改正
④ 新薬に最長6年のデータ保護期間、中国と海外で同時上市の新薬について、最長5年の特許保護期間の補充
今回は項目④を取り上げます。

 

新薬に最長6年のデータ保護期間

新薬の販売申請にあたり、申請人は当局に当該新薬について動物試験、CMC、臨床試験などの様々なデータを提出します。このデータの保護期間を最長6年間認めるとしており、この間、cFDAはジェネリック申請に対し、新薬のオリジネーターが提出したデータの引用を認めないというものです。従って当該期間中は、ジェネリック申請に対して承認が与えられないということになります。
この案は昨年5月および10月に出された国務院の意見書に既に示されており、今回はさらに具体化され発表されたものです。しかし施行に当たっては各法律を調整する必要があります。実際、4月25日に国家薬品監督管理局は「薬品試験データ保護に関する実施弁法」の法案を公開し、パブリックコメントを求めています。(関連記事

 

最長5年の特許保護期間の補充

新薬NDA申請、上市を中国の国内外で同時に行なう場合、当該新薬に対して最大5年間の特許保護期間を補充するとしています。
中国は従来、先進国と比較すると医薬品承認審査の時間が比較的長く、開発者にとって経済的損失がありましたが、これを補償するものとなります。
こちらも試行するにあたっては法整備が必要ですが、具体的な動きは確認できておりません。5月から実施されたと日本では報道されましたが、誤報と思われます。前述の4月の発表の冒頭に「5月1日から」とありますが、これは第一項にかかるものであり、他の項目はこの限りではありません。現在、特許法の年内改正に向けて作業が進んでいますが、当該改正法の中で特許期間の補充制度が盛り込まれると見込まれます。

 

考察

データ保護期間の延長も、特許保護期間の延長も、中国政府がジェネリック開発よりも新薬開発を協力に後押しするとの意図の現れです。
しかし、中国の医薬品開発はいまだにジェネリックが多くを占めているという現実があります。このように早いタイミングで知的財産権の保護強化を首相の立場から明言したのにはどのような理由があるのでしょうか。特に特許保護期間の延長はこれまで当局から言及はされていたものの、首相によりいきなりの発表となったのは、それなりの理由があります。

3月1日、トランプ大統領がアルミ輸入制限を発動すると表明して以来、中国とアメリカの間で貿易戦争が始まりそうな状況にありました。しかし中国は輸出に依存した経済であるため、貿易戦争が無用に拡大することは避けたいとの立場です。そこでアメリカをある程度納得させるため、国内事情的にはやや時期尚早な政策を打ち出したのでしょう。
しかしこれだけでは国民の不満が高まることになります。中国医薬品メーカーの開発対象はまだまだジェネリックの割合が高く、ジェネリックの上市時期が遅くなることは医療費の負担として国民にも影響があるからです。そのため、抗がん剤の関税撤廃(関連記事はこちら)や政府調達による薬価低減も同時に打ち出したとみられます。

確かに今回の報道は、各国関係者にサプライズをもって歓迎されました。今後新薬を最初に上市する国として、必ず中国を含めるという流れになっていくはずです。
またデータ保護の推進によって、中国における新薬開発を大きく後押しすることにもなります。この点は関連記事「新薬に最長6-12年のデータ保護期間を与える法案が公開(執筆中)」をご覧ください。

 

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1.始めに

中国の医薬品の承認審査の制度改革に関連して、今、医薬品の監督官庁である国家食品薬品監督管理局(SFDA)によって「医薬品の承認審査(登録)に関する管理弁法」の改正作業が進んでいます。今回の「中国医薬品ビジネス レポートNo.4」では、かかる制度改革に焦点を当てて、解説したいと思います。

2.薬事行政の政府組織の変遷

中国では、過去二十年、医薬品の薬事行政を司る組織は、幾度かの変遷を経て今日に至っています。当初、国家薬品監督管理局(SDA)と呼ばれていましたが、その後、国家食品薬品監督管理局(SFDA)に変わり、次いで、国家食品薬品監督管理総局(CFDA)となりました。現在では、この略称、CFDAで呼ばれています。
このような変遷の中で、中央政府による薬事行政の本格的な幕開けは、1998年3月に国家薬品監督管理局(SDA)が国務院の直轄部門として誕生した時に始まったと言えます。2003年には国家食品薬品監督管理局(SFDA)と改称し、「副部級」(副省庁ランク)の国務院の直轄部門になりました。2008年には衛生部(日本の省)の管轄下に置かれ、「国家局」に格下げとなりました。現在の姿であるCFDAは、2013年の行政組織改革の際に「正部級」(省庁ランク)の国務院の直轄機構に昇格されて出来上がりました。このように、医薬品行政の監督官庁は、汚職等の社会問題にも巻き込まれながら紆余曲折を経て今の姿になっていると言えます。

3.医薬品の承認審査(登録)制度の発展

1)黎明期

医薬品の承認審査(登録)制度の基本となる法規は「医薬品の承認審査(登録)管理弁法」です。その前身である「新薬審査弁法」が制定された1999年当時には、まだ「医薬品の承認審査(登録)」の概念が明確に提唱されておらず、「医薬品審査」という行政用語が一般的に使われていた程度でした。2001年に改正された「医薬品管理法」(日本の薬事法に該当)の公布・施行、及び2002年の「医薬品管理法実施条例」の施行等を背景に、「医薬品の承認審査(「登録」管理弁法(試行)」が誕生しました。ここで初めて「医薬品の承認審査(登録)」という概念が中国で樹立されました。これをもって医薬品の承認審査を統一的に規制する法規が正式に立ち上がったことになります。

2)新薬R&Dの立ち上がり期

初代SFDA局長である鄭篠萸が署名した2005年第17号局令により、「医薬品の承認審査(登録)管理弁法」が正式に公布され、その際、同時にそれまでの「医薬品の承認審査(登録)管理弁法(試行)」が廃止されました。これはSFDAが「行政許可法」に基づき改正した最初の省令でした。2007年7月10日、鄭局長は、約649万人民元の収賄罪及び職務怠慢罪により北京で死刑執行。その当日、新任局長の邵明立が第28号局令を署名、その新令の公布と同時に旧法を廃止しました。正に、「人亡政息 」(人が死に、その政策も廃止される)を目のあたりにすることとなりました。当時のこのような「大火事の後の火の用心」とも言える法改正は、国家による医薬品の監督体制についてのイメージ回復という政治使命の達成を目的としていたとも言えます。

3)イノベーションを視野に

2013年、新設置の国家食品医薬品監督総局(CFDA)の初代局長に張勇が任命されることとなりました。彼には、社会の期待も厚く、特に国務院総理の李克強の願望に応えて、最も厳しい食品・医薬品の安全監督体制を構築しようとしました。CFDA設置後、「医薬品の承認審査(登録)管理弁法」の改正について、2013年と2014年の2回にわたって意見徴収稿(パブリック・コメントを求める草案)を公布したものの、その内容は現行規制の範囲内で改善を追求するといった手法に留まっていました。一方、地方の薬事に関する行政監督体制の改革が遅れ、そして現場の監督執行力も弱いため、薬事行政改革の不徹底に対して、社会から様々な非難が浴びせられました。結局、局長の張勇は1年10か月の短い任期で退任せざるを得ませんでした。当時の改正草案も草案のままで、遂に、正式に公布・施行までには至りませんでした。

4.2015年 / 薬事制度改革の幕開け

2015年に医薬品の監督・管理体制には巨大なうねりが巻き起こりました。承認審査制度に関して、非常に重要な新政策が相次いで発表されました。即ち、国務院が2015年8月18日に発表した「医薬品・医療機器の承認審査制度の改革に関する意見」(国発(2015)44号),及びCFDAが公布した「医薬品の承認申請の滞貨問題を速やかに解決する為の政策意見の徴取についての公告」(2015年第140号通達)、という2つの通達です。
この2つの通達を比較すると、国発44号とCFDA第140号通達が共通する内容は、主として次の通りです。
(i) ジェネリックの品質と先発医薬品の品質との一致性
(ii) 臨床的な価値を有する医薬品を創出する為のイノベーションの奨励、及び臨床的に緊急度の高いイノベーション新薬の承認・審査の期間の短縮化、
(iii) 承認申請における虚偽・不正行為を厳しく取り締まること。

国発44号通達にはなく、CFDA第140号通達にのみ規定された内容については、例えば、先発医薬品とジェネリックの参入時期に関連して、「特許期限満了の6年前にジェネリックの臨床試験申請の受理を開始すること」と規定されています。即ち、第140号第7条には次の通り定められています。

「特許法の保護を受け、カバーする特許の有効期間内の医薬品について、国家食品薬品監督管理総局は当該特許満了6年前よりジェネリックの臨床試験申請の受理を開始し、特許満了2年前から生産申請の受理を開始すること。この条件を満たさない場合、承認申請を受理しないこと。既に受理したものについては、却下の対象となり、企業は改めて申請すること。」

5.中国 / 複雑な法律体系

1)中央政府の法律体系

中国での医薬品を規制する法体系は、法的効力の優越性の順に、法律、行政法規、部門規則、規範性文書の4種類の法律に分類されます。
(i) 法律:医薬品の規制に密接な関係のある法律は「中華人民共和国 医薬品管理法」です。これは、日本の薬事法(医薬品医療機器等法)に該当。
(ii) 行政法規:国務院が制定・公布した医薬品を規制する行政法規は「医薬品の管理法実施条例」等10本あります。日本の薬事法施行令に該当。
(iii) 部門規則:医薬品の規制に関し、現在有効な主要規則は20本余りあり、「医薬品の承認審査に関する管理弁法」、「薬物の非臨床研究の品質管理に関する規範」等が挙げられます。日本の薬事法施行規則に該当。」
(iv) 規範性文書。日本での通知等(局長、課長)に該当。

例えば、医薬品の承認に関し、現在の制度である、製造工場を有する企業に対して医薬品の承認を与える製造承認制度から、今後は、製造工場の所有を要件としない医薬品上市許可保有者制度(所謂、販売承認制度)の導入を図るとしています。従来、関連の法規定が存在しなかった為、まず国務院の弁公庁(内閣官房に該当)が「医薬品の上市許可保有者制度(販売承認制度)試行法案の公表に関する通知」を発表し、次いでCFDAが国務院の当該通知に基づいて「医薬品の上市許可保有者制度(販売承認)試行関係業務の円滑実施に関する通知」を発表しました。このようにして、上部機関による法規制の改正の方向性に関する通知等の公表に基づいて、下部機関が具体的な規制内容を公表するといった手法により行政の執行目的を達成していると言えます。
特に注意が必要なことは、法的効力の優越性の順番でいうと、国務院が制定する「通知」(通達)は行政法規でありますが、CFDAの「医薬品承認管理弁法」は部門規則です。法体系の中で、法的効力の優越性において、行政法規>部門規則>業務文書という順番になります。中国には特有の各種通達がありますが、それが、国務院が発したものであるのか、CFDAによるものなのかによって、夫々、法的効力が違うことに留意する必要があります。

2)中央政府と地方政府

また、中国では、中央に対する地方という意味で、各省及び北京・上海等の直轄地にはいわゆる「地方性法規」と「地方政府規則」という条例が制定されています。例えば、江蘇省が制定し、江蘇省内の企業等に適用される「江蘇省/医薬品監督条例」は地方性法規であり、これは、法律である「医薬品管理法」及び行政法規である「医薬品管理法実施条例」に基づき、江蘇省の地方政府が自ら制定したものです。この様な条例の下に制定されるのが地方政府規則であり、例えば、「浙江省医療機構医薬品・医療器械使用監督管理弁法」等が挙げられます。

3)「意見徴収稿」(パブリック・コメント)

そのほか、様々な「意見徴収稿」(パブリック・コメントを求める草案)が政府によって公表されています。例えば、最近では、CFDAが公布した「医薬品承認申請の滞貨問題を速めて解決する為の政策意見徴収公告」が挙げられます。この公告は、国務院の部門規則の制定手続きに関して定めている「立法法」及び「規則制定手続条例」の定めに従って、公表されています。即ち、意見徴収(パブリックコメントを求める)とは、この「立法法」及び「規則制定手続条例」に定められえいる法律・規則等の制定手続きの1つと言えます。「意見徴収」は政府が企業との間で意思疎通を図るといった目的で公表されるものですが、意見徴収稿によって業界内で習慣的に実務上行われているやり方を立法化するという趣旨で条文化するケースもあります。但し、意見徴収は、あくまでも改正草案ですから、執行できるという意味での法的効力を有していません。

6.2016年「医薬品の承認審査(登録)に関する管理弁法(修正案)」

2016年は、医薬品の承認審査(登録)に関する制度改革の重要な年であると言えます。「化学医薬品の承認分類についての改革業務に関する法案」の正式公布、「化学医薬品の新承認分類の下での申告資料の要求(試行)稿」及び「上市許可人の制度」の公表に続き、国務院による「医薬品・医療機器の承認審査制度改革に関する意見」(国発(2015)44号)等で示された改正の方向性を具現化するために9年間の長きにわたり改正されていなかった「医薬品承認審査(登録)管理弁法」がいよいよ改正の最終段階に入っています。そのような流れの中で、7月25日に「医薬品の承認審査(登録)管理弁法(改正案)」(以下は改正案と略す)が公表されました。
今回の改正案は現行法である2007年「医薬品の承認審査(登録)管理弁法」と比較すると、イノベーション薬に関連して大きな変革方針が明示されており、その主要なポイントは下記の通りです。

1)特許問題

現行の「医薬品の承認審査管理弁法」には、「第三者(先発品)がすでに中国において特許権を取得している医薬品の場合、申請人(ジェネリック)が承認申請を行うことができる期間は、当該医薬品の特許期間満了前 2 年以内とする」旨の規定があります。改正案では、その時間的な制限を撤廃しています。即ち、「第三者(先発品)が既に中国において特許権を取得している医薬品の場合であっても、申請人(ジェネリック)が承認申請を行うことができる。食品薬品監督管理総局(CFDA)は本弁法に照らして審査を行い、要件を満たすものについては、医薬品の承認証を交付する」という内容に修正するとしています。特許問題については、特許法の下での解決に委ね、CFDAの審査の対象から外すということを意味しています。

2)上市許可人制度(販売承認制度)

医薬品の承認制度は、従来の製造工場を主体とした制度から、医薬品の上市許可保有者制度(販売承認制度)に移行します。この上市許可人制度(販売承認制度)は、上市(販売)承認と製造許可を分離して管理する制度設計となっています。この制度の下では、上市(販売)承認と製造許可とはそれぞれ独立して存在し、上市(販売)承認の保有者は、自ら製造することも出来るし、又、他の製造者に委託して製造することもできます。医薬品産業を単純な製造業として捉える従来の考え方から日米欧の考え方に一歩近づき、医薬品の研究開発によるイノベーションを奨励する意味合いが強いとされています。そして、製薬企業の生産設備の低レベルでの重複を抑制することが出来と考えられており、中国の医薬品産業の高レベルでの発展を更に促すことになると期待されています。

3)新薬イノベーション

監測期間(販売独占期間)が付与される新薬について、再定義することにより「臨床的な価値を有する医薬品の創生・イノベーションを奨励する」との法目的を明確にしました。
その新薬を二つの種類に分類して、第70条に「「イノベーション医薬品」は、明確な臨床的な価値を有しているものをいう。「改良型新薬」は、従来の医薬品より明らかに臨床上優れた点を有している物をいう」と規定しています。このようにして、不必要な偽のイノベーションを避けることを目指し、また承認申請の審査滞貨の原因となっている簡易な改良剤や酸・塩基の変更などの薬剤に対する申請を減らすことに繋がるとされています。今回の改正では、臨床的に価値があるか否か及び優れているか否かを基準にして、イノベーション精神溢れる研究開発の意欲を引き出すことに腐心していることが窺えます。

4)ジェネリック薬の基準

ジェネリック薬及びバイオシミラーの審査基準を「先発薬の品質及び治療効果と一致又は類似すること」と明確化しました。中国はジェネリック薬の大国で、歴史的な経緯もあり、従来、参照用製剤の選択について厳格な規定がなかったため、上市されている一部のジェネリック薬の品質・治療効果には多くの問題があるとされていました。今回の新基準により高品質のジェネリック薬が市場に提供されることになると期待されています。

5)優先審査制度

改正案は、臨床上の必要性及び医薬品の特徴に応じて優先審査制度を設置する旨、言及しています。この制度の直接的な意味は、優先審資の対象となる医薬品の創生を奨励すると同時に、そのような医薬品の上市までの期間を短縮し、研究開発コストの回収を加速させることです。中国では、この制度の実施によって、上述の要件を満たす医薬品を早期に上市し、より多くの患者を救い、または患者の生活の質を高めることに繋がると期待されています。

6)臨床試験実施の柔軟性

臨床試験の実施に関して、第30条に規定されていますが、これは、新しい意味合いがあります。臨床試験をⅠ、Ⅱ、Ⅲ期の順に実施することも、また、一部同時並行して実施することが出来るとされ、得られた臨床試験データーに基づいて、より柔軟に臨床試験を展開することも可能となります。

かかる方向性をもって、「医薬品の承認審査(登録)に関する管理弁法」の改正作業が進められており、遠からず、改正案の最終化がされるものと期待されています。

以上

1. 改正の方向性とその準備状況:

1-1) 改正の方向性 / 特許権の強化

昨年 2015 年 4 月に中国特許庁より公表され、パブリックコメントを募った改正法案に基づき、その改正の方向性について、中国特許法の第四次改正案(前半)にて説明致しました。近年、中国の政府及び国内企業が研究開発の投資を積極化していることを受けて、中国国内の研究機関に於いて、自主技術、自主知財の蓄積が大幅に進んでいます。更には、中国経済が「新常態」に入り、従来の労働・資源集約型の重厚長大産業を中心とした産業構造からの脱却、その為のイノベーションの推進政策に力点が移されています。そのような中国の経済環境の大きな変革の下、特許法の改正準備作業が進んでいると言えます。

このように中国の国内に於ける、自主イノベーション創出の能力が一定水準に達しつつあることから、前回の論説では、中国の国内で生まれたイノベーション・発明の保護を強化する必要性があるとして、主として、知財保護の強化策の具体的な改正の内容について説明致しました。従来、特に、特許の侵害訴訟の局面で、原告の特許権者にとっては、訴訟に時間とコストがかかり、また、侵害・損害の立証に多大なる重荷が背負わされているにも拘らず、裁判所で認定される損害賠償額が低いこと等の問題点がありました。そのような問題点があることから、特許の侵害行為が絶えないといった社会を形成してしまったとも言えることから、これらを改善し、特許の保護レベルを引き上げることにより特許権者の権益を守ることが大きな改正のポイントであるとされています。

1-2) 改正の準備状況

その後、前記のパブリックコメントを求めた法案に基づく議論を踏まえ、更に、修正が加えられ法案が 2015 年 12 年 2 日、再度、バプリックコメントにかけられ、改正法案成立の為の最終プロセスに入っています。尚、昨年末に公表された法案では、前回説明した法律改正の方向性については、大きな変更点はありません。

1-3) 改正の方向性 / 権利の濫用

さて、特許法の改正により特許権の強化が図られれば、イノベーションを促進する効果が期待されますが、他方、特許権の強化による負の効果として、特許権者による特許権の濫用行為が出現することにも備えていく必要があります。日本での事例ですが、筆者は、医薬品の先端技術について、米国企業が日本で有する特許権に基づき、日本企業に対し、特許権の濫用ともいえるライセンス・ビジネス行為が行ったことから、その対応に苦慮し、非常に苦い思いをした経験があります。これは、ある特定の技術分野に関し、日米間に技術格差が存在しており、その格差の実態に直面したことを意味するわけですが、中国と日米欧の間には、それを遥かに超えたレベルで広い範囲において格差が存在しており、特に、知的財産の蓄積の程度については、大きな隔たりがあるとも言えます。中国では、先端技術分野に於いて、多国籍企業がその圧倒的な優位性を生かして、特許権の濫用とも言える行為が過去から数多くあったとされています。それへの対応として、特許のすり抜け行為、重複する侵害行為がなされてきたという面も否定できないようにも思われます。また、前述の通り、中国の国内企業等のイノベーション力がある一定レベルに達し、知財保護強化が必要な社会情勢になっているという背景がある一方で、中国の国内企業同士による特許侵害の訴訟合戦も多発するようになりました。このことは、社会コストの浪費につながります。このような背景の下で、改正法案では、特許権者が特許権の濫用に該当する行為をなすことを禁止する規定が追加されました。

知財強化を図ると同時に、その負の側面としての特許権者による特許権の濫用に該当する行為を、特許法上、明確に禁止することにより、両者のバランスを図ろうとしていると言えると思います。

2. 特許権の濫用とは:

特許権の濫用とは、特許制度の趣旨、即ち、科学技術・イノベーションの推進という制度の趣旨を逸脱して、特許権に基づいて、特許権者が不公正な権利行使をすることです。一般論として言えば、例えば、本来は無効であるような特許権に基づいて特許権の権利行使をすること、パテントトロール(特許侵害訴訟を提起すると脅して、許諾料・ロイヤルティーを漁る行為)、自己は実施しないにも拘らず、第三者がライセンスの許諾を求めてきた時にこれを拒絶する行為、更には、ライセンス契約において、特許権者が優越的な地位をむさぼって、ライセンシーに不公正な契約条件を押し付けること(グラントバック、最低ロイヤルティー支払い義務等)、特許独占(基本特許をベースに広範な特許網を取得・買い漁る)行為等が挙げられます。

では、具体的にどのような要件を満たせば、特許権の濫用に該当して、その場合、どのような法的な効果をもたらすのかについて、先ず、日本の制度と比較しながら現行の中国の法律(特許法の改正前)の全体構成を見ていきたいと思います。

3. 特許権の濫用に関する中国の現行の法的枠組み:

特許権の濫用を規制している法律としては、契約法、独禁法、特許法がありますが、夫々、どの様な観点から規制しているのかを見ていきたいと思います。

3-1) 契約法

「不法に技術を独占し、技術の進歩を阻害- – – – – する技術契約は無効」(契約法§329)としており、具体的に、どのような契約条項が「不法に技術を独占し、技術の進歩を阻害する」に該当するのかは、「技術契約の紛争の審理に関する司法解釈」§10 に、六類型が挙げられており、グラントバック、競合技術の採用制限、不合理な生産量・価格等の制限、原料購入義務、不争義務等が含まれます。

特許権者がその優越的な地位を乱用して、特許ライセンス契約に前記のような不公正な条項を盛り込み、ライセンシーにその履行を求めることは、特許権の濫用の一形態として捉えられますが、そのような契約は無効であり、特許権者は当該ライセンス契約で取得したロイヤルティーの返還義務を負い、また、過失ある場合には、損害賠償の責めを負います(契約法§58)。

3-2) 独禁法

「知的財産権を濫用して、競争を排除・制限する行為には、独禁法が適用される」(独禁法§55)として、特許権の濫用については、濫用行為の内、競争を排除・制限に至る行為についてのみが、独禁法の適用対象に入ってくるとしています。具体的には、「独禁法ガイドライン」に、上記で説明した契約法の下で無効とされている契約条項、行為の類型以外に、ライセンス拒絶、抱き合わせ、競争を排除するパテントプール・技術標準等について、ある一定の要件を満たした場合には、該当行為にあたるとして、当局による、停止命令、罰金刑の処罰の対象になるとしています。(詳しくは、日中の視点 / 知的財産権法 No.10 参照)尚、日本でも独禁法のガイドラインの下で、これに相当する考え方が示されています。

3-3) 特許法
① 独占行為と強制実施権

独禁法の下で、特許権の濫用であって、独占行為の対象と認定された特許権については、中国の特許庁は、特許法の規定に従って、第三者の請求に基づいて、強制実施権を設定することが出来るとされています(中国特許法§49)。従って、上記の独禁法の項で述べたように、特許権を濫用し、そのことによって競争を排除・制限する行為の基礎となった特許権については、第三者は、特許庁に申し立てることにより、特許権者の意向に拘らず、合理的なロイヤルティーを支払う等を条件としてライセンスが許諾されることを求めることが出来ます。中国では、この規定に基づいて、強制実施権が特許庁によって発動された事例はないとされますが、特許権者による特許権の濫用行為に対する法的制裁措置が準備されていると言えます。尚、日本の特許法上には、このような規定はありません。

② 特許権の効力が及ばない範囲

中国特許法§69 には、特許権の効力が及ばない範囲が示されています。
例えば、特許権者が中国国外で販売した製品が中国国内に入って来た場合、当該製品(並行輸入品)に対しては、中国特許権の効力は及ばないと規定されています(中国特許法§69-1)。更には、試験研究行為、ジェネリック品の医薬品としての許認可を取得する為に開発行為に対しても同様に特許権の効力が及ばないとされています。概念的には、このような特許権の効力が及ばないとされる範囲に入っているにも拘らず、特許権者がそれに対して特許権を行使したような場合には、特許権の濫用行為に該当することになるとも言えます。尚、日本の特許法においても、特許権の効力が及ばない範囲についての規定があり、更には、最高裁の判例に基づいて、中国特許法に列挙される該当行為については、特許権の効力が及ばないとされています。

③ 無効の特許権に基づく権利行使

日本では、無効であることが明らかな特許権に基づいて、特許権者が第三者に対し特許侵害訴訟を提起するような場合、被告側の当該第三者は、裁判所で特許が無効である旨の抗弁を主張することが出来ます(日本特許法§104の三)。権利の濫用は許さないという考え方が基本にあります。一方、中国では、裁判所でそのような主張をすることは許されず、被告は特許庁に対して、特許の無効審判を申し立てする必要があります。そのような場合、裁判所では、特許庁での無効審判の結果が出るまで、裁判官の裁量で審理の中止の決定が可能です。尚、被告側は、特許権の無効を主張(例えば、当該特許の出願時に特許発明は既に公知であったとして特許の無効を主張)できない代わりに、自己の実施している技術が当該特許の出願時に既に公知であった技術であることを証明することによって、侵害の成立を免れることは可能です(中国特許法§62)。

また、ある特許権に基づいて、侵害訴訟を提起する等の権利行使がされ、その後、特許庁(最終的には裁判所)によって当該特許の無効が確定したような場合、特許権者に悪意がある場合には、特許権者は損害賠償義務を負わねばならないとされています(中国特許法§47)。

4. 特許権の濫用に関する特許法改正後の法的な枠組み

上記で述べた通り、特許権の濫用については、既に、契約法及び独占禁止の下で、要件は異なるものの、夫々、該当契約は無効であること及び濫用行為の停止命令等の対象になるとされています。他方、特許法には、特許権者が特許権の濫用に該当する行為をしたような場合には、特許庁が強制実施権を設定できる等の措置を講じることが出来ますが、直接的にこれを禁止する原則的な規定はありませんでした。

今回、特許法の改正法案の§14 には新設規定として、下記が盛り込まれています。

「特許の申請、特許権の権利行使は、信義誠実の原則に基づかねばならない。特許権を濫用し、公共の利益を損なうこと、または、不合理に競争を排除・制限してはならない。」

独占権としての特許権に基づいて特許権者が権利行使する場合には、たとえ、それが特許権の権利範囲に入っていたとしても、どの様な場合にも権利行使が出来るというわけではありません。自ずと、制限がかかります。改正法では、特許権の権利行使は、信義誠実の原則に基づかなければならない、そして、特許権を濫用することによって、公共の利益を損なう行為、更には、特許権を濫用することによって不合理に競争を排除・制限することは禁止すると、その大原則が規定されています。

法改正後は、例えば、特許侵害訴訟の場面に於いても、被告側は、侵害の成立を免れるために、§14 に基づく抗弁を主張することが可能となります。ここで、特許権の濫用であって、§14 の要件を満たす特許権者の行為とは、具体的にはどのような行為をさすのかが問題となります。少なくとも、上記3で説明した行為が含まれることになると思いますが、更にどの範囲まで拡張されうるのか、現時点では定かではありません。但し、ここで注意が必要なことは、この抗弁が成立する為には、「特許権の濫用」だけでは要件を満たさず、条文にある通り、「公共の利益を損なう」こと、または、「不合理に競争を排除・制限する」ことの要件を満たす必要があります。その意味では、被告が§14 に基づく抗弁が認められるためのハードルは低くはないとも言えます。

尚、昨年末、国務院は、「知的財産権の濫用に関する独禁法ガイドライン」(案)を公表して、パブリックコメントを求める手続きに入っています。このガイドライン(案)では、独禁法の観点で、知的財産権の濫用(特許権の濫用を含む)について、特に、競合関係にある企業間に於ける共同研究の実施・パテントプール、技術標準、及び競合関係にない企業間でのライセンス契約に含まれる不当な契約条件等(グラントバック、不争義務等)に関連しこのように、特許法の改正により、特許権の強化を図る為の政策が推進されている一方で、それに並行して、特許権の権利行使に対して、社会公共の利益を確保し、また、市場での各技術間の競争が損なわれないよう、特許権の濫用を防止する為の施策も打ち出されてきており、制度面で権利強化との間で両者間のバランスを図ろうとしていると言えます。

以上

1.実施行為(特許侵害)と研究開発行為

特許権者は特許発明を「実施」する権利を占有する、という日本特許法の規定(§68)、これをどう理解するのか、僕の特許の売り買いの仕事の中では、一番重要な事です。ここで、「実施」とは、ですが、特許発明が新規の医薬品であれば、その新規特許医薬品を製造、「使用」、販売、輸出・輸入—-することを指します(§2③)。この実施行為の一つに挙げられている「使用」とは、広い概念であって、新規特許医薬品を使用すること、即ち、新規医薬品を用いて研究すること、開発することが含まれています。一方で、特にアカデミア・サイドの研究を企業の特許の権利行使から保護する為に、特許法は、特許権の効力の及ばない範囲の規定の中に、特許権は試験研究の実施には及ばない、と盛り込んでいます(§69①)。即ち、原則、所謂、研究による「使用」は、非侵害行為とされます。

2.医薬品の臨床開発行為と特許侵害

次に、開発(臨床開発を含む)による「使用」ですが、例えば、ジェネリック企業が第三者の有する特許でカバーされる新規特許医薬品をその有効期間中に開発(実施)することは、特許権者の特許発明を「実施」する権利を侵害することになるのか? これについては、米国では、特許法271(e)(Bokar条項)により、非侵害行為、日本では、特許法に明文の規定はないものの最高裁の判例により非侵害行為と考えられています。 そして、この非侵害のコンセプトは、特許権者には一方的に不利に働くので、新医薬品の特許期間の延長(20年を25年間に延長)規定とセットで制度に導入された経緯があります。さて、中国では。

中国では、特許発明の「実施」行為の範囲については、専利法§11に規定されており、日本のそれと同じと考えて問題ないです。そして、日本と条文番号が全く同じなのですが、専利法§69に、特許権の効力が及ばない範囲の規定があり、非侵害行為が列挙されており、その(5)に、Bolar条項が盛り込まれています。即ち

「行政当局への承認申請の為に必要なデータを提出する目的で、特許医薬品–を製造、使用、輸入する行為、及び専ら、その為に特許医薬品–を製造し、輸入する行為は、特許権の侵害行為とはみなされない。」

後段の所で、特許医薬品の治験薬等の製造行為自体が非侵害行為であると明記していますので、製造受託企業(CMO)は、申請目的である限り、ジェネリック企業からの製造受託を請け負っても侵害問題は発生しないことになります。
前記の通り、米日では、このボーラー条項は特許期間の延長とセットで制度に組み込まれましたが、中国では、前者だけの導入であり、片手落ちの状況です。現時点では、新規医薬品の特許権者は殆どが外資ですが、今、中国の内資による特許出願が急速に膨張していますので、特許期間の延長制度がいつかは議論の俎上に挙がってきてもいいよう思います。ただ、日米と違って、ジェネリックがこれだけ市場を押さえている現状はそう早くは変わらないでしょうから、中国国内の両グループのせめぎ合い、日米とはまったく違った視点からの解決にならざるを得ないように思います。

1.始めに

中国の2015年は、「医薬品審査承認制度」の「改革元年」として位置づけられると思います。今年、下記のリストに示された重要な政府通知が発せられました。今回の中国医薬品ビジネス・レポートNo.2では、前回に引き続いて、「改革の方向性」、「承認申請の滞貨問題」及び「国際共同治験のガイドライン」に関するポイントを採り上げます。

公布日
組織名
文署名 主要な内容
2015.08.18
国務院
医薬品・医療機器の審査承認制度の改革方針
(国発国发〔2015〕44 号)
・新薬の定義の変更
・NCE 新薬の審査承認のスピード化
・販売承認制度への移行
・海外未承認薬について、中国国内での臨床試験の実施に関する承認システム
2015.07.31
CFDA
承認申請の滞貨問題の解決の為の政策意見
(140 号通知)
・ジェネリック薬の水準向上
・IND(臨床試験申請)の審査承認の最適化(届出制)
・臨床上、必要性が高い医薬品の承認
2015.01.30
CFDA
国際共同治験ガイドライン(試行)の通知
(2015 年第 2 号)
・国際共同治験について、総合的な実施要件
・規範性・科学性面での要件、登録申請の要件、プロトコール等の変更等に関する手続・管理面での要件

本論文では、2015 年に国務院及び CFDA が公布した重要な通達等の全体を俯瞰して、下記のようなテーマにて、将来の新しい審査承認制度の方向性を分析し、我々業界人のビジネスにどのような影響を与えることになるのかについて検討していきたいと思います。

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1.始めに

CFDA(中国の国家食品薬品監督管理総局)は、2015 年の年頭に、今年を医薬品審査承認制度の改革元年にするとして、業界内に風雲急を告げる年が始まりました。その後、ご承知の通り、次々と関連する文書・通知が発せられましたが、その重要なものは下記の通りです。

公布日
組織名
文署名 主要な内容
2015.08.18
国務院
医薬品・医療機器の審査承認制度の改革方針
(国発国发〔2015〕44 号)
・新薬の定義の変更
・NCE 新薬の審査承認のスピード化
・販売承認制度への移行
・海外未承認薬について、中国国内での臨床試験の実施に関する承認システム
2015.07.31
CFDA
承認申請の滞貨問題の解決の為の政策意見
(140 号通知)
・ジェネリック薬の水準向上
・IND(臨床試験申請)の審査承認の最適化(届出制)
・臨床上、必要性が高い医薬品の承認
2015.01.30
CFDA
国際共同治験ガイドライン(試行)の通知
(2015 年第 2 号)
・国際共同治験について、総合的な実施要件
・規範性・科学性面での要件、登録申請の要件、プロトコール等の変更等に関する手続・管理面での要件

本論文では、2015 年に国務院及び CFDA が公布した重要な通達等の全体を俯瞰して、下記のようなテーマにて、将来の新しい審査承認制度の方向性を分析し、我々業界人のビジネスにどのような影響を与えることになるのかについて検討していきたいと思います。

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日本ではこの7月に特許法の改正が公布されました。
会社の研究所等でその研究者によってなされた発明(職務発明)の権利帰属について、従来は「発明者である研究者に帰属する」としていたのを、改正法の下では、原則、直接「会社に帰属させる」ことになりました。目的は、イノベーションを推進する為とされています。
会社人にとりましては、当たり前の結果になったとも言えますが(私は会社時代が長かったので、強い遺伝子の刻印があります)、他方、新発明の創出にあたって、強烈な個による牽引が求められるような場合には、組織が個に大きく覆いかぶさる結果となる今回の改正は、様々な組織形態からなる日本全体のイノベーションの創出にどのような影響を与えるのか、我々が選択した方向性ですが、疑問を持たれる方もいらっしゃるかも知れません。

さて、一方中国ですが、今、第4次の特許法の改正に向けて議論が盛んです。

1. 特許法の改正:

前回の第3次の改正は、2009年になされました。その改正では、中国の特許の質、ひいては、発明の質を高めるべく、特許付与の為の要件のバーを引き上げました(新規性の要件を国際レベルにまで引き上げる)。加えて、中国の特殊性を主張するような改正、例えば、中国国内の遺伝資源を使った発明について中国の利権を主張する為の条項も盛り込まれました。
それから6年が経過し、この間、特許の出願数では世界一に躍り出たように、中国の企業・研究機関の発明の創出に向けた投資熱が高まりましたが、他方、新たに生まれた発明について、それを事業化にまで持って行く為には、更に、強力な後押しが必要な情勢です。既に中国で武器となる特許権を有し、中国国内で積極投資の上、事業活動をしている外資系の企業は、権利者として、特許権でカバーされた製品の市場での独占権を確実にするために、特許権を更に強化し、その適正な保護がなされること主張しています。
特許侵害訴訟の局面では、中国の内資同志の係争も増えておりますが、制度上の不備も指摘されています。中国で自主イノベーションの能力がある一定の水準に達しつつある今、イノベーションを軸に経済構造の展開を図らなければならない中国にとって、イノベーションを更に推進する為に特許制度の見直しが必須の情勢であるという社会的な背景があります。

2. 日本企業から見た中国特許法改正(オープン・イノベーションに関連する範囲で)

日本企業が中国企業とライセンス契約及び共同研究契約等に基づく提携関係に入る際には、日本側から様々な懸念点が挙げられます。
ライセンス形態による提携の場合、日本企業が中国で有する特許権がその商品の中国市場に於ける独占権を確保するに際して、侵害者に対し、どれだけ抑止力を有しているのか。これは、中国では知財の保護が十分でないといった印象が本質にあります。
共同研究による連携の場合でも、そもそも中国の企業の研究開発力は連携するにたるレベルにあるのか。そして、共同研究から生まれてくる発明の保護が日米欧では問題ないとしても、中国においてキッチリと権利化されるのか、権利化されたとして、前者の問題点同様、特許権の保護は十分に保障されるのか。そういった懸念点が挙げられています。

中国では、低コストでの製造からイノベーションを駆動とする経済構造への転換の必要性と同時に叫ばれているのが、人治から「法治社会」への転換です。特に、現政権がスタートしてから事あるごとに法治社会の構築の必要性が強調されています。
一度締結した契約を、中国企業が日本企業同様に、キッチリと履行するのであろうか?
万一、履行されない場合には、適正な解決を図れる仕組みが存在するのか?
更には、中国で付与された特許権は、適正な範囲で保護される(侵害者に対し、抑止力として働く)のか、即ち、特許侵害が発生した場合、特許侵害者を排除できる仕組みが適正に働くのであろうか?
そういった日本企業が抱く懸念点の払拭を目指すことにも繋がるのが、この「法治社会」への転換です。

上記の様な懸念点に関連して、今回の特許法の改正は、中国の研究開発レベルを上げること、特許権の質の向上、特許の保護レベルを上げること等について、制度改善が試みられています。

2-1) 特許の保護レベルの引き上げ

中国の特許侵害訴訟の局面において、特許権者にとっては、訴訟に時間とコストがかかるだけでなく、侵害・損害の立証に多大なる重荷が背負わされているにも拘らず、認定される賠償額が低いこと等、問題点が指摘されてきました。その結果として、特許の侵害行為が絶えないといった社会を形成してきたとも言えます。
今回の改正では、下記の制度を取ることにより、特許の保護レベルの引き上げを図るとしています。

① 損害額の立証の負担軽減:

特許権者が侵害者による侵害品の販売等の特許侵害の行為によって被った損害については、裁判で損害賠償を請求することになりますが、侵害品の販売高等の数字の立証が困難なために、損害額の認定が低く抑えられてしまう傾向にあります。そこで、特許侵害訴訟に於ける被告である侵害者に対し、裁判所がその帳簿・関連資料の提出を求めることが出来るようにするとしています。

② 懲罰的な賠償金額の認定:

モグラたたきという表現で説明されますが、例えば、一旦、終息したかに見えた侵害行為が、関連会社によって再開される等、繰り返し侵害行為が再開されるケースがあります。
そのような場合、故意侵害として、裁判で損害額として認定された額の2〜3倍の額を懲罰的な意味で、裁判所は侵害者に支払い命令することが出来るとしています。

③ 行政機関による救済システムの強化:

特許侵害の救済システムとして、日本では、裁判所に侵害行為の差止と損害賠償の請求をすることができますが、中国では、そのような裁判所への訴えに加えて、中国特有の制度として、行政機関に対し、同様の申し出をすることが出来ます。
行政機関は、企業等の事業に関する許認可権を含め、企業に対して日本の行政に比べ絶大な権力を握っていますが、特許権者がその行政機関に対し、第三者の特許侵害の際に救済を求めることが出来る制度です。今回の改正では、その行政機関に対し、更に強力な権限を与えるとしています。
行政機関が審理の上、特許侵害行為の差止(中止)の決定をした場合、従来、侵害者は一旦侵害行為を停止した場合であっても、ほとぼりがさめると侵害行為を再開するといったこともありました。それを封じるために、差止の決定に際して行政機関に対し、侵害品の製造の設備、原材料・工具等を没収する、更には罰金の支払い等の行政処罰を課す権限を与えるとしています。
従来、行政機関に対して特許権者が損害賠償の請求をする場合、行政機関は裁判所のように判決によって損害賠償の支払いを命令する権限はなく、特許権者と侵害者の間で損害賠償の支払いの話し合いの調停をする権限しか与えられていませんでした。従って、侵害者が調停で合意した損害額を支払わないような場合、特許権者は再度裁判所に訴えることが必要となっていました。このように調停の内容の拘束力が弱いといった問題点がありました。今回更にそれを改善すべく、損害賠償額についての行政の調停による決定について、裁判所で確認し、強制執行を可能とすることとしています。

④ インターネット販売業者の侵害責任の明確化:

中国では、日本の楽天等のようなインターネットによる販売システムが急速に広がっており、大都市では日本よりも普及度が高くなりつつあります。侵害品がインターネット販売のチャンネルで流通した場合、従来は、「侵害責任法」の下で救済が図られていましたが、侵害品の排除が十分ではないとされていました。特許法の改正により、そのようなインターネットの販売業者に対し、侵害品の製造業者と同様に侵害者として明確な責任を負わせることとしています。

<中国特許法の第四次改正(後半)-特許権の強化 vs 特許権の濫用>に続く